小西ひろゆき議員が国会質疑での言い間違えをツイッター上で揶揄されたことについてユーザーに対して「法的措置を取る」と言っているのがツッコみ所満載でした。
関連
- 対象となったツイート
- 高橋和之を高橋カズヒロと言った国会質疑のソース
- ブロックをわざわざ解除して「先にブロックした発言も違法」
- 訴訟提起ではなく「しかるべき措置」?
- 顧問弁護士の名前も名宛人も無い「通告」
- 「措置を取る」じゃなくて「措置を執る」ですよ
- 訴訟予告は脅迫罪になるのか?
対象となったツイート
小西ひろゆき議員、災害対応が落ち着き次第法的措置を取ることを宣言 - Togetter
小西ひろゆき「安倍総理、高橋カズヒロさんという憲法学者をご存知ですか?」
— 黒瀬 深 (@Shin_kurose) September 19, 2019
安倍総理「存じ上げません」
小西ひろゆき「ええっ!憲法を学ぶ学生なら誰でも知ってますよ!」
実はそんな学者いなくて、恐らく高橋和之さんの間違いという。これ以上恥ずかしい話ってこの世にあるだろうか。国会だぞ。
対象となったのはこのツイートです。
国会議員が国会で憲法学者の名前を間違えたことを揶揄されたら、法的措置を検討??
— 弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) (@kyoshimine) September 20, 2019
ちょっと信じられない……。 https://t.co/0Vsp9a5umR
高橋和之を高橋カズヒロと言った国会質疑のソース
○小西洋之君 内閣総理大臣、安倍総理、今述べられました芦部信喜さんという憲法学者、御存じですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は存じ上げておりません。
○小西洋之君 では、高橋和之さん、あるいは佐藤幸治さんという憲法学者は御存じですか。総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 申し訳ありません、私は余り、憲法学の権威ではございませんので、学生であったこともございませんので、存じ上げておりません。
○小西洋之君 憲法学を勉強もされない方が憲法改正を唱えるというのは私には信じられないことなんですけれども。
議事録では「高橋和之」となっていますが、当時の動画を見れば「タカハシカズヒロ」と言っているのは事実です。
議事録は議院の事務方が草案を作成して発言者らがチェックした上でUPされるので、これで良いと関係者が判断したんでしょう。このこと自体は何ら問題ではありません。
ブロックをわざわざ解除して「先にブロックした発言も違法」
ちなみに小西議員は以前から私をブロックしていたにも関わらず、この件ではわざわざブロックを解除してまで私に絡んでいます。https://t.co/gz9w7aZihV
— 黒瀬 深 (@Shin_kurose) September 20, 2019
「ブロックしていた」と発言したことも違法と言っています。
本日の名誉毀損ツイートへの顧問弁護士の見解。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) September 20, 2019
災害対応が落ち着き次第、法的措置を取ります。
①事実を改変し、質疑の趣旨を貶しめている
②大拡散し被害が大きい
③現下の災害救援に努める国会議員への攻撃として悪質性が高い
④先にブロックした発言も違法
⑤反省・謝罪がなく拡散を煽っている
等 pic.twitter.com/FZ5IOsnHzK
議事録の通りの記載でなければ事実を改変している、などということにはならないので意味不明なツイートです。
訴訟提起ではなく「しかるべき措置」?
私の国会質疑の内容を国民の皆さんにご批判頂くことは当然あることだと思います。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) September 20, 2019
しかし、それが、民法や刑法に反する違法な内容である場合は、断固として法的措置を取ります。
過去に、産経新聞の阿比留氏を民事、刑事で訴え、民事は全面勝利、刑事も犯罪行為認定されています。 https://t.co/kFxAtb95Dc
私のツイートに対するリプも大切な国民の皆さんの言論表現の自由と当然認識しております。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) September 20, 2019
一方で、どうか、そのリプも、場合によっては侮辱行為や名誉毀損に該当し得ることはご承知おき下さい。
民法や刑法に反する違法なリプにも、断固として法的措置を取ります。 https://t.co/m8AiEeONIV
この流れで「訴訟提起ではない」と受け取る人は居ないでしょう。
この件、他に考えられる相手への要求としては「ツイートの削除要求」が有りえますが、小西議員は「災害対応後」と言っているので今行えばいいものを後回しにすることは考えられませんし、弁護士に相談して時点で法的措置を検討しているのですから、その上での「しかるべき措置」は訴訟提起以外に無いでしょう。
顧問弁護士の名前も名宛人も無い「通告」
顧問弁護士より明文で削除要求しておくようアドバイスがありましたので以下、通告します。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) September 20, 2019
9月19日付の当該ツイートの即刻の削除を求めます。
誠意ある対応を求めます。 https://t.co/kFxAtb95Dc
まず顧問弁護士の名前が無い。
何らかの請求の前段階として弁護士の記名入りで要求内容を明示した文書を相手方に送付しておくことが一般的ですが、このツイートは「顧問弁護士」とだけで、この段階で名前が無いのは違和感があります。
そして、最も重要なのが「名宛人に対して向けられていない」ということ。
これは小西議員の単なるツイートなので、相手方の@が書かれておらず、相手がこのツイートを認識するとは限りません。
これでは単なる独り言に過ぎず、通告になりません。
「措置を取る」じゃなくて「措置を執る」ですよ
顧問弁護士からは名誉毀損で法的措置を取るべきとのアドバイスを頂きました。
— 小西ひろゆき (参議院議員) (@konishihiroyuki) September 20, 2019
災害対応後にしかるべき措置を取ります。 https://t.co/MYck4fXG18
「(法的)措置を取る」と書いていますが、「措置を執る」ですね、クイズ王さん。
訴訟予告は脅迫罪になるのか?
告訴の意思表示は脅迫か。大審院大正 3 年 12 月 1 日判決の検討 日下 和人
「真実権利を行使する意思がなく、相手を畏怖させる目的であるときは脅迫に当たる」とする判例として大審院大正3年12月1日刑録20・2303が挙げられますが*1、単に権利行使する意思が無い=訴訟する気が無いというだけで脅迫罪になるかはかなり疑問です。
脅迫罪が成立するのは権利行使意思の欠缺+畏怖目的の場合なのか、この判例では行使意思の欠缺の事実があることがただちに畏怖目的と認定できたケースだったのか(上記論文はその立場)、議論の余地がありそうです。
以上
*1:刑法各論 第六版 西田典之