事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

困難女性、とんでもない上位存在だった…要支援妊婦や自殺未遂者よりも厚い保護?困難女性支援法の問題点2.5:Colabo若草ぱっぷすBOND

マズいですよ…

「適切な支援・必要な支援」を超える「最適な支援」

前回記事で困難女性支援法で支援の対象となる者=いわゆる「困難女性」に対して「最適な支援」を「行うものとする」という記述が如何に異例であるかを示しました。

具体的には「最適な」が使われているのがこの法律しかなく、「最適」「最善」というワードは利益給付の方法には一切使われていませんでした。

で、今回はその調査続報です。

適切な支援」が使われている法令は30件ヒットしました。


代表的な法令を挙げると、「児童福祉法」「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「障害者基本法」「自殺対策基本法」「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律」などがあります。

……

察しの良い方はこの時点で気づいたかもしれませんが、続けます。

要支援児童や特定妊婦、自殺未遂者は「適切な支援」

例えば児童福祉法には「要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るために必要な情報の交換を行うとともに、支援対象児童等に対する支援の内容に関する協議を行うものとする」という記述があります。

「〇〇な支援」を行う「ものとする」という記述の仕方は困難女性支援法と似てます。

要支援児童」とは、「乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く」とあります(6条の三第5項)。

特定妊婦」とは、「出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦」とあります(同条)。

次に、「自殺対策基本法」には以下の条文があります。

(自殺未遂者等の支援)
第二十条 国及び地方公共団体は、自殺未遂者が再び自殺を図ることのないよう、自殺未遂者等への適切な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする

「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律」には以下の条文があります。

第二条 ~柱書省略~

一 自殺対策が生きることの包括的な支援として行われるべきものであることに鑑み、これを必要とする者がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けることができるようになることを目指し、国及び地方公共団体の適切な役割分担及び相互の協力の下、総合的かつ確実に推進されること。

自殺対策が必要な者には「適切な支援」を受けることができるようになることを「目指し」と書いてあります。

被虐待児童や母子&父子家庭の当事者・発達障害者は「必要な支援」

必要な支援」が含まれる法令は104件でした。

代表的なものとして「児童福祉法」「母子及び父子並びに寡婦福祉法」「障害者基本法」「児童虐待の防止等に関する法律」「発達障害者支援法」「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」、などが目に留まりました。

例えば「母子及び父子並びに寡婦福祉法」を見ると、「父(母)子家庭の父(母)及び児童に対し、父(母)子家庭相互の交流の機会を提供することその他の必要な支援を行うこと」などの業務について、都道府県や市町村が「行うことができる」という任意規定になっています。

「ものとする」の義務規定よりも緩やかな要請です。

なお、「最善の支援」という記述のある法令は一切ありませんでした。

要支援妊婦よりも上位存在である【困難女性】には「最適な支援」

令和四年法律第五十二号 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律

(基本理念)
第三条 困難な問題を抱える女性への支援のための施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない
一 女性の抱える問題が多様化するとともに複合化し、そのために複雑化していることを踏まえ、困難な問題を抱える女性が、それぞれの意思が尊重されながら、抱えている問題及びその背景、心身の状況等に応じた最適な支援を受けられるようにすることにより、その福祉が増進されるよう、その発見、相談、心身の健康の回復のための援助、自立して生活するための援助等の多様な支援を包括的に提供する体制を整備すること。

(女性相談支援センター)
第九条 都道府県は、女性相談支援センターを設置しなければならない。

~省略~

4 女性相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、その支援の対象となる者の抱えている問題及びその背景、心身の状況等を適切に把握した上で、その者の意向を踏まえながら、最適な支援を行うものとする

おわかりいただけただろうか…

支援が特に必要な児童や妊婦ですら「適切な支援」、発達障害者等には「必要な支援」の程度だったにもかかわらず、「困難女性」になると途端に「最適な支援」になっているという事実を。

そして、忘れてはならないのは、現在有識者ら(若草・BOND・ぱっぷす・コラボら含む)が厚労省の会議では、「外国人や性自認が女性のトランスジェンダー(=生物学的男性)にも本法の支援を」という議論が為されているということです。

要支援児童や特定妊婦<<<越えられない壁<<<困難女性(自称女の生物学的男性)

こんなような扱いにしろ、と言っているわけです。

ちなみに、これまで紹介してきた法律にも「最も適切な支援」というワードがあるものはありましたが、その文章の動詞部分は「努めなければならない」という努力義務規定だったり、目的・目標・理念的な内容についての規定だったり、といった感じでした。

ものとする」という用語は、これよりも強い要請が働くワードだということは行政関係の法令に馴染んでる方々にとっては常識です。

なぜ、こんな文言になったのでしょうか?

法文上の文言の表現だけで実際の支援の中身が決まるわけでは無いですが、こういう細かい表現のグレードによって、国・都道府県や市町村、関係施設に求められる要求水準が異常に高いものとされ、それが法的に容認される可能性は否定できません。

これはコスト増・予算の激増に繋がる話です。

有識者会議は続きますが、途中で実施されるパブリックコメントは主に下位法令等を対象としており、困難女性支援法そのものはもはや既定路線です。

が、同法の附則には以下の条文があります。

(検討)
第二条 政府は、この法律の公布後三年を目途として、この法律に基づく支援を受ける者の権利を擁護する仕組みの構築及び当該支援の質を公正かつ適切に評価する仕組みの構築について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする
2 政府は、前項に定める事項のほか、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする

法律レベルでの見直しが必要と思われるのですが…

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