事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

河野太郎大臣からTwitterブロックされた:公人のブロックが許容されるべき理由

河野太郎大臣からTwitterブロックされた人は数多いのですが、そうした状況を受けて「TwitterなどのSNSで公人がブロックする行為は禁止するべき」という論があります。

今回はそれに対して反論していきたいと思います。

河野太郎氏からTwitterブロックされた

私もつい最近、河野太郎氏@konotarogomameからTwitterでブロックされました。
※KONO Taro @konotaromp という英語アカウントからはブロックされていません。

心当たりがあるとすれば、イージス・アショアの配備撤回に関するものや、5月時点で河野太郎氏が読売の記事をフェイクだと指摘したことについて、「それは言い過ぎでは」という旨の見解を述べたことくらいです。

趣旨としては同じツイートなのだが…

河野大臣のアカウント宛てでなくともブロック 

同じような経験をしている方は数多く、河野大臣のアカウントに対して直接リプライや引用リツイートをしていなくとも、彼に関する否定的な見解をツイートするとブロックされているようです。

その数は数百ではきかないので、おそらく「河野大臣」「河野太郎」で否定的なワードがあれば自動的にブロックする設定なんだと思いますが、もうここまで来ると為政者としての資質を疑わざるを得ません。

竹田恒泰氏も「首相にしてはならない人物」と評するようになりました。

参考:竹田恒泰氏「河野太郎氏は首相にしてはいけない、皇統の原理を破壊する者」

なお、私は愛知県の大村秀章氏(2020年6月現在は愛知県知事)のアカウントに対してたびたび批判的なツイートをしていますが、ブロックはされていません。

河野大臣はTwitterでブロックしてはいけないのか?

さて、「ブロックをすることを人物評価の否定的な考慮要素とすること」と、「政治家・大臣がTwitterでブロックしてはいけないかどうか」、という話は別個です。

私は、河野大臣はTwitterでブロックしてはいけないなどとは決して思いません。

その理由は以下です。

  1. 河野大臣のアカウントは大臣就任前から個人アカウントとして運営、アカウントの運営は私費で行われている
  2. Twitterでしか手に入らない情報が存在しない
  3. ブロックされていようが、それは個人の権利制限ではない、ログアウト状態からでも閲覧可能

公的機関・資源による運用アカウントは原則ブロック禁止

私は、公的機関・資源による運用アカウントは原則ブロック禁止だという立場です。

なぜなら、そのようなアカウントは国民に対して情報を提供する目的でSNSアカウントを作成し、運営も公費を使っているのだから、すべての国民が閲覧できなければ不公平だからです。

たとえば防衛省のアカウントがブロックしていたら、私は非難します。

あまりにも罵詈雑言やフェイクが多いアカウントはブロックされてもやむを得ないとは思いますが、その判定は慎重になされるべきだと思います。

対して、河野太郎氏のアカウントは大臣就任前から運営されている、あくまで私的なアカウントです。とすると、この話はブロックされた相手の権利の話ではなく、ブロックするなと言われる私人の権利制限の話になります。

Twitter・SNSでしか手に入らない情報は無い

河野大臣のTwitterは、政府の情報をツイートしていることがありますが、それは既に政府において公表済みの情報です。「河野太郎氏のツイッターアカウントで発信された内容が、世の中に周知された初めての情報である」という類の情報は、ありません。

ですから、実質的に公的な運営のアカウントである、という認定も不可能です。

「ブロックするな」が法的に求められるとする論者も居るようですが、ブロックはTwitterという無料で利用できる私企業運営のサービスの一機能に過ぎませんから、それは河野太郎氏の自己決定権を侵害する許されない行為だと思います。そして、それは価値判断次元においても不当な要求だと思います。次項以降で述べることと関係します。

ツイートはネット上に存在しており、ログアウト状態でも閲覧可能

あるアカウントがあるアカウントからブロックされようとも、当該アカウントのツイートはインターネット上に存在し続けています。

ですから、ブロックされたアカウント以外のアカウント(サブアカウント)から閲覧は可能ですし、ログアウトすれば閲覧可能です。

大抵はブラウザでログインしているので複数ブラウザを同時に起動させていれば、そこまで困ることはありません。サブアカウントの切り替えが面倒、ということもありません。

そんな程度の話を、わざわざ法的な話にして裁判所のリソースを割くのって、「司法の謙欲性」の観点からもどうなの?と思います。

鍵垢で承認した人にしか情報が見えないようにしてる、という場合であっても、メルマガと何がちがうの?としか思いません。

「大臣や自治体の長は災害情報をツイートしているから~」という論者に対しては、すべて、上記までの指摘で足ります。

公的情報は住民・国民から預かった情報だからブロックしてはいけない?

公的情報の扱い方に対するスタンスとして、熊谷俊人氏のように市民から預かった情報であるから、公平に扱う、という考え方をする首長もいます。

しかし、その熊谷市長ですら、ブロックすることはあり得るとしています。

更には進んで、事実に反するツイートを自身のリプライ欄に紐づけることについて禁止し、ツイートの削除を求めることもしています。

公的アカウントのブロックはおよそ許されない(法的な意味で主張をする人と素朴な価値判断として論ずる人が混在しているが)、というならば、 こういった行為も許されるべきではない、ということになります。

公人のブロックは許されないとする人のほとんどは誹謗中傷や事実誤認のツイートに限ってはブロック可能とする構成のようですが、その場合も何が誹謗中傷で事実誤認なのかの判定が煩瑣です。

憲法上の「表現の自由」を持ち出す前に

憲法上の「表現の自由」などを持ち出すならば、ブロックされたTwitterアカウントに権利主体性が認められるのか、ブロックは公的主体による権利制限と言えるのか、民法90条の公序良俗違反なのかなどといった論点について、相当の論拠を必要とするが、未だにまともに論じている人を見たことがありません。

アメリカのトランプ大統領のTwitterブロックは違憲の裁判例

トランプ氏批判ブロック「違憲」 ツイッター「対話の場」米連邦高裁 - 毎日新聞

高裁は判決で、トランプ氏が「公的な目的」でツイッターを使っていると指摘。その上で、投稿に対するコメント欄はオンライン上の「対話の場」であり、意見の相違を理由に投稿を読んだり意見を寄せたりする機会を国民から奪うことは「差別であり違憲」と判断した。

トランプ大統領がTwitterでブロックした行為は違憲であるとするアメリカの裁判例が出ていますが、連邦最高裁でひっくり返る可能性は残っています。

アメリカの判決文や報道を詳しく呼んだわけではありませんが、ドナルド・トランプ@realDonaldTrumpのアカウントは大統領になる前から利用されてる私的アカウントを祖とするものですが、もしかしたらそのアカウントでのTwitter投稿によって初めて政府としての意思決定が世に出るような運用を一部で行っているため、実質的に「公的な目的」と認定されたのかもしれません

そこは事案の違いがあり得るように思われます。

追記:ただし、アメリカは日本と異なり「抽象的違憲審査制」があるので、「誰かの権利侵害」がなくとも違憲判断が下される制度だという点は注意

まとめ:公人のブロックは原則として許容されるべき

  1. 公人のアカウントでも私人として運営されていれば原則としてブロックを法的に違法とするべきではない
  2. 公的情報・意思決定を世の中に初めて発信するためにTwitterアカウントを使っていれば、私人運営でも実質的に公的な目的での運営と判断され、ブロックが違憲となり得る ※ただし抽象的違憲審査制が無い日本ではほぼあり得ない
  3. 公的機関運営のアカウントは誹謗中傷など違法行為が無い限り、ブロックしてはいけない

私の主張としてはこの通りです。

以上