7月1日以降、日本が韓国について半導体製造品目3品目の優遇の廃止を決定し、ホワイト国から排除する方針を説明しましたが、その際の日本側の説明に不適切な部分があったという指摘があります。
その問題意識の共有と、さらに懸念している事項について指摘します。
- 日本政府の説明が不適切・問題であるという人たち
- 日本政府の説明
- なぜ安倍・世耕の発言が問題視されているのか?
- そもそもホワイト国指定や手続の簡略化は日本の裁量
- 徴用工訴訟問題での信頼関係の毀損は判断の動機・背景であって国際ルール上の理由ではない
- WTOでの法律論云々は韓国の土俵
- まとめ
日本政府の説明が不適切・問題であるという人たち
複数の識者が日本政府側(安倍・菅・世耕ら)の説明が不適切であるという認識です。
神戸大大学院国際協力研究科教授木村幹
読売新聞は「日本政府は基本的に輸出を許可しない方針で、事実上の禁輸措置となる」と報じ、全く異なる見解を示している。だとすれば今回の措置は、経産省による公式の説明である、包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え以上の内容を有することになる。
この場合、日本政府が中国などの他国とは異なる何らかの基準を、韓国のみに適用していることになる。そうなれば個々の企業への影響は長期化し、より大きくなることは明らかだが、自由貿易の原則を掲げる以上、日本政府は事態を説明する国際政治上の責任を新たに負うことになる。
そしてそれを万一、徴用工問題における日韓関係の悪化に求めるなら、それは日本政府が自ら、この措置が政治的報復であり、経産省が掲げる安全保障上の理由は「単なる建前」にすぎないと示したことになる。日本側がどのような論理を積み上げても、その論理に内実がなく、国際社会に信じられなければ、国際社会で敗北することになるのは、日本政府がこれまで福島沖水産物や捕鯨を巡る国際紛争で経験したことであり、事態は全く異なる展開を見せることになる。
きちんと読めていればわかるけど、今日のiRonna とNewsweek の双方のコラムは、共に日韓両国政府の意図をブラックボックスにして分析している。iRonnaは、その中で政策の目的合理性を、Newsweek は日本の制裁言説の背景を論じています。専門家の人はすぐわかりますよね。
— Kan Kimura (@kankimura) July 8, 2019
Newsweekの方は割愛するが、いずれにしても、木村教授の言う「政治的合理性」の一つとして「相手国が譲歩すること」が念頭にあり、その効果が得られるか?という問題意識があることが分かります。
日本の発表を第三者が見た場合にどう見えるのか?ということから立論しています。
上智大学教授川瀬剛志
日本政府は韓国の輸出規制を再考すべきだ | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 川瀬剛志
本当に韓国のワッセナー違反であるのなら、日本はその旨を明らかにした上で毅然と対応すべきであり、その場合は、自らの不適切対応を棚上げしてWTOに問題を持ち込み、安全保障貿易管理体制との棲み分けを侵した批判は、韓国が受けることになる。しかしそうであれば、世耕弘成経産相が7月2日の記者会見で述べたような、G20までの徴用工問題の未解決がその背後にあることを匂わせるような発言は、今回の対応の目的が安全保障目的以外にあることを疑わせるもので、厳に慎むべきだ。
特に川瀬教授は日本の輸出規制はリスクだとして再考を促しており、失敗であると言っているに等しい。
川瀬教授の視点(問題意識)としては、大量破壊兵器関連物資についての国際的なレジームという要素を捨象して、純粋にWTOで法律判断される場合にはリスクがある、というもの。
理屈としてはWTOで争った場合、韓国⇒日本はGATT1・11条違反であるとの主張、日本⇒GATT21条の例外の主張、という構造の中で、日本に例外事由の主張立証責任があり、21条絶対神話はこれまで安全保障管理のケースが1件も争われてなかったためである、ということから、敗けるリスクが高いからというものです。
実はこの記事には重要なことが書いてあって、「形式的にはWTO違反である輸出管理の安全保障レジームだが、国際社会が空気を読んで違反の主張をどこもしてこなかった」とあります。
今回、韓国が国際社会の空気を読まずに提訴することは、その後万が一日本が負けたとしても、韓国が国際社会から信頼を失うということになるんじゃないでしょうか。
中部大学特任教授細川昌彦
今日の産経新聞「日曜経済講座」に記事が掲載されました。
— 細川昌彦 (@mHosokawa) July 14, 2019
韓国に対する輸出規制についてです。 pic.twitter.com/a9PGfOckvC
産経新聞2019年7月14日
日曜経済講座 中部大特任教授 細川昌彦ところで世耕弘成経済産業相はツイッターで今回の措置の「理由」を3点挙げた。①輸出管理での意見交換に韓国が応じていない②輸出管理に関する不適切な事案が発生している③いわゆる徴用工問題などで信頼関係が損なわれたーの3つだ。
①と②は確かに輸出管理上重大な問題で、適正な輸出管理を行うために今回の措置は当然行うべきだ。しかし③は「背景」だ。国内の対韓強硬論に応えて、韓国にもそうしたメッセージを送りたいのかもしれない。
しかし、その結果、韓国に「政治目的のために措置だ」と批判させてしまい、欧米メディアの一部にはトランプ米大統領の手法と同一視される誤解まで生じている。
国際社会を納得させるためには、正当性の説明は論理的でなければならない。そのためにはあくまで輸出管理の論理①と②で完結すべきだ。米中の身勝手な論理による制裁で国際秩序が揺らいでいるからこそ、日本は国際的に納得する論理だけを示すべきだ。
細川氏もテレビ番組等で幾度となく、政治問題と安全保障問題を絡めているかのように見えることについて、日本政府側の言動を戒めるように話をしていました。世耕大臣のツイートは後に紹介します。
東京大学先端科学技術研究センター助教佐藤信
韓国「156件の不正輸出摘発」で“報復”の風向きは 政治学者「日本が自分勝手に見えてしまう」 | ニコニコニュース
菅官房長官は2日の定例会見で、韓国輸出規制の理由について「友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次いだ」、元徴用工問題をあげて「信頼関係が著しく損なわれた」と発言した。
「この発言の趣旨がよくわからない」といい、「輸出規制措置は元徴用工問題への対抗措置ではないと日本政府は言い張っている。しかし、なぜ今なのかと聞かれると、元徴用工問題などで信頼関係が損なわれたことが原因だと結局説明していて、疑われる結果になっている。韓国側の輸出管理の問題だ、報復措置ではないと国際的に主張するためには、日本はより強い証拠を公開していく方が説得力はある。このままだと日本が自分勝手に動いているように見えてしまうので、うまく立ち回ることが今求められている」
ここでも徴用工問題に触れたことが問題であるという認識です。
この発言は菅官房長官の説明が念頭にあると思われます。
元国連北朝鮮制裁専門家パネル委員の古川勝久
なお、この問題については元国連北朝鮮制裁専門家パネル委員の古川勝久氏もいろんなテレビ番組に登場していますが、彼から日本政府側の発信について咎める指摘は、あまりなされていないように思います。
それは、彼はWTOの紛争処理の上級委員会の委員が2人になり(本来は7人で事案ごとに3人が担当)、後任の就任をアメリカが反対しているために機能不全に陥っている状況を挙げており、もはや提訴は無意味だと考えているからでしょう。
WTOでの法律論の話が無関係となると、日本政府の発言を不適切と評する意味がないということでしょう。
日本政府の説明
日本政府といっても、官庁の説明と政治家の説明には差異があります。
なので、それぞれの発信内容を確認します。
所管官庁である経済産業省の説明
大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて (METI/経済産業省)2019年7月1日
輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。
最初に「信頼関係」 の話があり、その次に輸出管理を巡る不適切事案について触れています。当の経済産業省がこのような立てつけの説明をしているということは念頭に置くべきでしょう。
ただ、「徴用工」には絡めていないのが分かります。
内閣官房の説明
令和元年7月1日(月)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ
記者から徴用工問題の制裁なのか?と言う問いに対して、西村官房副長官は上記経産省の説明通りに説明していました。
それにしても朝日新聞記者からは「韓国側からすれば対抗措置に見えるのですが」という質問があるのは何だかなぁと。
令和元年7月2日(火)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ
翌日の菅官房長官は対韓輸出規制に関する3回目の質問「なぜG20後のタイミングなのか?」という問いに対して、信頼関係が損なわれた背景として朝鮮人戦時労働者問題についての韓国側の対応を挙げていました。
細川氏が指摘している通り、日本メディアが「事実上の禁輸」(読売)、「事実上の制裁」などの表現で報じていることから韓国側に誤解を与えているというのはその通りでしょう。
ただ、ここで注意すべきは、安倍総理や世耕大臣がいわゆる徴用工問題と絡めた発信をする以前から、メディアは徴用工問題に関連したものであるという見方で報じていたということです。
安倍総理の説明
首相、対韓禁輸は「信頼関係上の措置見直した」 : 経済 : 読売新聞オンライン
安倍首相は1日の読売新聞のインタビューで、韓国への半導体材料の輸出管理強化について、「国と国との信頼関係の上に行ってきた措置を見直したということだ」と述べた。韓国との信頼関係が損なわれたことを理由に、管理強化に踏み切ったとの考えを示したものだ。「日本はすべての措置はWTO(世界貿易機関)ルールと整合的でなければならないという考え方だ。自由貿易とは関わりない」とも語り、今回の措置は国際貿易ルールに反しないとの立場を強調した。
こちらでも「信頼関係」に焦点が当たっています。
安倍首相、韓国に「不適切事案」=輸出規制、正当性を主張 (時事通信社)
安倍晋三首相は7日のフジテレビ番組で、日本が韓国向け半導体材料の輸出管理を強化した理由について「(韓国側に)不適切な事案があった」と強調した。ただ、具体的な説明は避け、韓国が輸入品を北朝鮮に横流ししているとの見方に関しても「個別のことについて申し上げるのは差し控える」と述べた。
首相は韓国に厳格な輸出管理を要求。元徴用工問題に触れ、「国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理でも恐らくきちんと守れないと思うのは当然だ」と述べ、日本側の措置の正当性を主張した。
テレビ番組では徴用工問題に触れた上で「信頼関係」についての発言を行っています。
世耕大臣の説明
経緯①
— 世耕弘成 Hiroshige SEKO (@SekoHiroshige) July 3, 2019
従来から韓国側の輸出管理(キャッチオール規制)に不十分な点があり、不適切事案も複数発生していたが、日韓の意見交換を通して韓国が制度の改善に取り組み制度を適切に運用していくとの信頼があったが、近年は日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていた。
経緯②
— 世耕弘成 Hiroshige SEKO (@SekoHiroshige) July 3, 2019
また近時、今回輸出許可を求めることにした製品分野で韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生している。
経緯③
— 世耕弘成 Hiroshige SEKO (@SekoHiroshige) July 3, 2019
さらに今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、関係省庁で相談した結果、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。
①は輸出管理における韓国側との管理体制構築上の問題。
②は半導体製造品目の輸出に関する不適切な事案。
③は日韓間の総合的な協力関係が崩れてきたことであり、特に徴用工問題を例に挙げています。
この③ツイートがテレビ番組において、細川昌彦氏らによって「不必要だった」と評されているところです。短い文面ですし確認が容易なので指摘しやすいのでしょう。
なぜ安倍・世耕の発言が問題視されているのか?
関税及び貿易に関する一般協定 (GATT)第二部 | 外務省
第十一条 数量制限の一般的廃止
1 締約国は、他の締約国の領域の産品の輸入について、又は他の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出若しくは輸出のための販売について、割当によると、輸入又は輸出の許可によると、その他の措置によるとを問わず、関税その他の課徴金以外のいかなる禁止又は制限も新設し、又は維持してはならない。第二十一条 安全保障のための例外
この協定のいかなる規定も、次のいずれかのことを定めるものと解してはならない。(a)締約国に対し、発表すれば自国の安全保障上の重大な利益に反するとその締約国が認める情報の提供を要求すること。
(b)締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること。
(ⅰ)核分裂性物質又はその生産原料である物質に関する措置
(ⅱ)武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置
(ⅲ)戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置
(c)締約国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基く義務に従う措置を執ることを妨げること。
安全保障レジームによる大量破壊兵器関連物資の輸出については、一般的に許可制になっています。いくつかの企業は審査の結果、輸出が許可されないということになりますから、現状の措置は形式的にはGATT11条の「制限」に文言上は該当していることになります。
しかし、現実には世界中で特定品目が許可制になっています。これは、GATT21条の例外に当たるから、という法的構成で世界中の共通認識がありました。
仮にWTOで純粋に法律論となった場合、GATT21条の「安全保障上の重大な利益の保護の必要」等の事由の主張立証責任は日本側にある、ということになると考えられます(例外規定なので、例外の適用を求める者に立証責任があると考えるのが一般的)。
その際に、WTOの審査において日本側に「政治的な目的」が認定されると安全保障のためではないではないかということになりかねず敗訴の危険があると、識者らは懸念しているということです。
実際、韓国はWTO会合において(未だ正式な審理ではない)1条・11条違反を主張し、日本は例外にあたるという主張をしたようです。
その懸念それ自体は正当でしょう。
では、日本の政権側(安倍・菅・世耕ら)はなぜ徴用工と絡めた信頼関係と言ったのか。これは究極的には安倍・菅・世耕らに直接聞かないと分からない話ですが、主張の仕方からある程度は推測できると思います。
そもそもホワイト国指定や手続の簡略化は日本の裁量
まず、この話は基本的に日韓間の輸出管理体制の話です。
WTOでの法律論を離れると、ホワイト国の指定やリスト規制品(半導体製造品目を含む100以上の品目)の輸出手続の簡略化をどこの国に対してするかということは、日本国の裁量の範囲内です。国際法上の規定があって行っている制度ではありません。
同様の仕組みは他の国でも行っているので国際的な共通理解があります。
ですから、日本政府としては最初からWTOでの法律論は捨象していたと言えます。
このことは所管官庁である経済産業省の発表を見ても分かります。
大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて (METI/経済産業省)2019年7月1日
輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。
WTOでの法律論を念頭に置いていたならば、 「信頼関係」が最初に来ることは無いはずです。「信頼関係破壊」はGATT21条の要件事実ではないからです。
したがって、これは日韓間の関係における日本政府の裁量の範囲の事項について、日本の立場を示したものであり、WTOは関係ありません。
この【日本政府の土俵】があまりにも意識されなさすぎる事こそが大問題と思います。
徴用工訴訟問題での信頼関係の毀損は判断の動機・背景であって国際ルール上の理由ではない
徴用工訴訟問題の影響も含めた「信頼関係の毀損」は、法律論ではなく、日本国が今回の措置を講ずるに至った動機・背景に過ぎません。
ここで、身近な例で考えると分かりやすいと思うので私ごとですが例を挙げます。
私が自転車に乗っていて車に横から突き飛ばされたことがあります。
運転者のミスです。前方不注意でした。物が壊れ、身体はむちうちにになりました。
この時点で、不法行為の損害賠償請求権が発生しています。
日韓の事例で言えば、不適切事案が発生して安全保障管理上の問題がある状態。
ただ、その場ですぐに謝ってもらい救急車・警察も呼んで連絡先も交換しました。
日韓の事例で言えば、事件の公表・再発防止策の提示・協議がなされることでしょう。
壊れた物の弁償・通院費も支払ってもらいました。
こういう場合、決して訴訟提起して損害賠償請求しようとは思いませんよね。
日韓の事例で言えば、不適切事案が発生したら即・優遇廃止、という事にはならない
赤の他人であっても、人間としての信頼関係があるからです。
しかし、音信不通になったとすれば、信頼関係が崩れるでしょう。
ただ、それでも訴訟提起するか否かは、私次第なわけです。
日韓の事例で言えば、ホワイト国除外等は日本の裁量なわけです。
そこで損害賠償請求をするきっかけとして「信頼関係の崩壊」と言うでしょう。元から加害者が知り合いで、事故対応とは無関係の所から既に信用ならない相手だと思っていたら、信頼関係など無いので、すぐさま訴訟提起したかもしれません。
日韓の事例で言えば、輸出管理の協議要請をしても韓国側が応じない状況が第一に挙げられますが、徴用工問題でも協定上の仲裁委員を選任もしない状況があります。それらの事情の総合で考えるのは輸出管理が国家間の信頼関係に基づく付き合いの中にあるので当たり前でしょう。
不法行為の損害賠償請求の法的主張としての要件事実(故意or過失+不法行為+損害+因果関係)を言うわけがないでしょう。それは最初からあったんだから。
「信頼関係」という当たり前のことが無くなり、状況の改善が見込めないから措置に踏み切ったと説明することの何がおかしいのか?
おかしいと言い出すのは韓国側の理屈であって、それに引きずられてはいけません。
当然、日本政府はWTOにおいては「信頼関係」を主張していません。
韓国側の言っていることは、私の交通事故の例で言えば『損害賠償請求の要件事実に「信頼関係の破壊」は無い!言ってることがおかしい!』と難癖をつけているのと同じです。
訴訟外の話、訴訟に至った経緯の話を、訴訟上の法的主張と混同させているのが韓国の戦略なのです。
WTOでの法律論云々は韓国の土俵
法律論の視点から「日本の発表は混同してるように見えて誤解を招く」と言うのは、韓国の土俵に乗っかったものでしょう。
もちろん、そうさせないように注意しようとするのは大切だということは書きました。
しかし、その前になぜ日本の主張の前提にはそもそも今回の措置は日本の裁量の範囲であるという認識がある、という事を主張しないのか?
なぜ、「誤解をされないように」という受け身なのか?
私は思考の出発点が間違っているのではないかと思います。
「信頼関係」がGATT21条の要件事実ではないということは明らかなので、その文脈での徴用工問題の言及はGATTは無関係と考えるのが本来の筋です。
海外メディアが勘違いをしているのであれば、それは完全に間違っていると言えばいい。メディアはもともと意図的に政治問題化するんですから。
仮に今回、安倍・菅・世耕が徴用工に触れていなくとも、発表のタイミングやこれまでの経緯から、結局は「事実上の報復措置だ」「政治問題によるものだ」などと報じられていたでしょう。
「誤解をされる懸念」というものが見えているのであれば、政府以外も、それを払拭するための説明なり情報発信をするべきではないでしょうか?
現状では識者らの懸念が、メディアによって韓国側にとって都合の良い形で取り上げられていることをどう考えるのでしょうか?
まとめ
- 日本側の発信に不用意な点があったという視点は重要
- それ以上に、ホワイト国除外等は日本の裁量であるという前提を伝える事が重要
1番目を強調するだけでは、既に韓国側の土俵の上で戦っているのと同じです。
現在のメディア等での言論空間は、まさにこのような状況にあると思い、私にはそのことの方が重大な問題ではないかと懸念しています。
以上