最重要の指摘をメディアが報じていない。
福島伸亨議員「立法事実論は国民の権利制限の場面の話」
皇位継承施策に関する国会全体会議*1の4月17日議事録が公開されました。
そこにおいて、最重要の指摘が「有志の会」会派の福島伸亨議員から為されたので紹介せざるを得ません。
衆議院議員(福島伸亨) 大体多くの論点、八党会派は一致しております。ただ一つ、党としての立場を示されていないのが、残念ながら、野党第一党の立憲民主党さんだというふうに思っております。立法事実がないとか憲法論とかいろいろおっしゃいますけれども、例えば憲法論でいえば、これ平行線のままだと思うんですね。~中略~その上で、立法事実というのも何度もおっしゃいますけれども、これは一般的に、我々も法律を役人時代作るときに、立法事実って確認するのは、国民の権利を制限したりする場合にその制限をする事実をいうのであって、今回の皇室の制度はそうしたものではないと思っております。ですから、立法事実云々にこだわる前に、まずどうあるべきかということを結論を出して頂いて、建設的な議論をしていただければというふうに思っております。以上です。
立憲民主党から「立法事実論」として、「養子縁組を希望する者は居るのか調査してその意思を確認せよ、そのような者が居なければ立法事実が無い」という主張が為されていたことに対するマジレスです。
このような虚偽の立法事実論、誤った立法事実の理解への危惧については以下等で何度も書いています。
皇位継承国会全体会議で藤田文武「馬淵議員の立法事実の話はおかしい」
さらに、この日は日本維新の会の藤田文武議員からも立憲民主党の「立法事実論」に関して指摘がありました。
衆議院議員(藤田文武) 先ほどの馬淵先生からの立法事実の件は、まだ成立していない法制度の中で仮にという、そういう内閣官房からの御説明に加えて、それを言うなら、その該当の方々に例えばインタビューをして意思を表明してもらい、誰々さんがどういう意思を表明されたと公表するわけですか。そんなことをしたら、もうむちゃくちゃになりますよ。だから、我々は、そういうことをつまびらかにして、そんな情報がネットにあふれ、またこの議論がおかしな方向に進むということを避けるということを静ひつな議論と呼んでいたんじゃないでしょうか。
ですから、それは可能性の中で、ある種の推し量った議論の許容範囲の中でやっていくというのが良識ある議論だと私は思います。そういうその受け皿である制度をしっかりと、先ほど幾つかその手続的な論点もありましたが、そういったものをしっかり詰めて完成度の高いものを仕上げるというのがこの場にいる代表者の皆さん、私たちも含めた代表者の責務だというふうに思います。
3月10日の会議でも自民党の衛藤晟一議員から、「皇族の養子縁組は現行法では禁止されている。そのため、養子制度を作る前に養子による皇籍復帰を望むか?と聞くことは、すなわち、『違法行為をするのかどうか?』を聞くという意味になる。これはおかしいし、少なくとも現在存在しない制度について聞くとしても、これには答えようがない。養子というのは親や当事者らの「自由意思の合致」によって成立するので、制度制定後に考えるべき。」という旨の指摘がありました。
旧皇族の養子制度は皇室典範9条を改正するのか、9条の特例法を定めることとなるのかは不確定ですが、現在ご存命の方だけが対象ではなく、その子孫の方々も対象になることを予定しているため、なおさら「現時点での意向」を把握する意義が無い。
特に、養子というのは法的な区分では「身分行為」と言われるもので、単独行為・契約・合同行為といった関係者の意思だけでは法的効果が生まれないものです。先に養子制度があり、『そこに向けられた』意思の合致が必要になり、法律効果が法定されています。現在はその意思が最初から封じられている状態なのですから、その段階で意向を伺うというのは意味がないし、大変失礼なことであると言わざるを得ません。
メディアが報じない重要な指摘:静謐な議論の妨害者は誰なのか?
本来このような記述をする予定はありませんでした。
が、余りにも一部の政党の議員の会議中の発言が明確に誤った理解に基づいていたり議論の混ぜっ返しを図っている上に、案の定、マスメディアは立憲民主党の唱える「立法事実論」が誤った理解に基づいているという指摘が真正面から為された*2という重要な事実を報じていませんでしたから、それを掣肘する者の功績にはきちんと報いるべきだと思いました。
4月17日の会議では、これまでの議論のまとめに向けられて各議員が踏み込んだ発言をして方向性を明確化していると感じます。
別稿で今後の争点についてまとめていきます。
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*1:天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議
*2:このように明確に指摘されるのは国会議事録等を通じて初めてかもしれない。