事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日弁連が死者への名誉毀損「マリーアントワネットがパンが無ければケーキを食べればいいじゃないと言った」

f:id:Nathannate:20220221093019p:plain

日弁連のCM

日弁連CMで「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」

日弁連のCMでマリーアントワネットのセリフとして「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」が。

日弁連のCMはマリーアントワネット=死者への名誉毀損

『マリー・アントワネットが「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない/お菓子を食べればいいじゃない」と言った』というのは事実と異なり、実際にはフランス革命に思想的影響を与えたジャンジャックルソーの著書「告白」上の記述だという見方が支配的になっています。
彼女がそう発言した、と確定できる事実が見当たらない

この本の出版当時のマリー・アントワネットは9歳であり、書籍中の記述に影響を与えることは不可能だったろうということも指摘されています。

で、このCMは少し見方を変えると怖い話でもあります。

フランス革命の美化と弁護士と政治的革新派と保守派の対立点

フランス革命においては王族・貴族に対する嘘も交えた誹謗中傷が横行して、それも相まって残酷な殺害方法が採られました。

エドマンド=バークの「フランス革命の省察」でもその思想的な危うさと手段の残酷さが書かれています。

フランス革命において民衆の扇動を行った主要な層には、弁護士などの「法律実務家」が居ました。「省察」では彼らは裁判官や法学者らに比して下賤な職業であるという扱いの文面で、やや皮肉交じりで誇張して書かれている場面も。

フランス革命の省察 エドマンド・バーク 半澤孝麿訳 みすず書房 54頁

 さて、その議会の非常に大部分(出席者の大多数だと思います)が法律実務屋で構成されていることに気付いたときの私の驚愕ぶりをご想像下さい。それを構成していたのは、自らの国に対してその学問や思慮深さや廉直さの証しを示して来た優れた判事達ではありませんでした。法廷の栄光たる一流の弁護士でもありませんでした。大学の高名な教授達でもありませんでした。遥かに圧倒的大部分は、そうした人々ではなくて、そのような人数であれば当然のことながら、法曹の中でも下級の、無学で職人的な、単に補助的立場の人間共でした。優れた例外もあるにはありましたが、一般的構成から言えば、それは名も知れぬ地方弁護士、地方小司法区の役人、田舎代言人、公証人、田舎町のありとあらゆる訴訟事務取扱い者、村内の諍いを巡る小競合いの扇動者や指揮者等でした。

「その議会」とは、第三身分(中心部分は下級審の判事、弁護士、富裕な商人)で構成された「フランス等族会議」(1788年までは300人で構成、同年に倍化し、後に階層別会議が否定されて合同会議となり国民議会に名称変更された*1)を指します。皮肉交じりの誇張表現というのはそういうこと。

「フランス革命の美化」は中核的な革新派の価値観で保守派との対立点と言って良い。

こうしたことを考えると、日弁連がマリーアントワネットを藁人形にしてるのは、実はかなりグロテスクな現象と言えます。オウム真理教への破防法適用を否定するよう声明を出していた組織というのも納得。

以上:はてなブックマーク・ブログ・note等でご紹介頂けると嬉しいです。

*1:フランス革命の省察 訳注五十四・四 330頁