事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

水間政憲が青山繁晴をパクリ非難:旧皇族の東久邇宮家の男系男子という事実について

f:id:Nathannate:20190428010113j:plain

皇室典範に関する有識者会議 報 告 書

青山繁晴氏が旧皇族(旧皇族の子孫)に男系男子が少なくとも5名いらっしゃるという発言をしたことについて、水間政憲氏が「パクリ」であると指摘しています。

講演会で宮家の名前を言おうとしたことを「商売保守」のように言う人も居ます。

旧皇族に関する各所の発信を整理します。

なお、この問題について情報を整理した先駆者は以下

青山繁晴さんのパクり騒動と「代襲相続人」探しの話 「悠仁親王殿下と同世代に5名の男子がいる」 | 以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGO

DHC虎ノ門ニュース:青山繁晴が「旧皇族に男系男子5名」

この発言をしたのは大手メディアが名前を書かない【DHC虎ノ門ニュース】というネット番組の4月1日月曜日の放送においてです。当該番組はアーカイブが消されているので、それを元に書き起こしをしている所の記述を引用します。

青山繁晴さんのパクり騒動と「代襲相続人」探しの話 「悠仁親王殿下と同世代に5名の男子がいる」 | 以下略ちゃんの逆襲 ツイッターGOGO

特に総理が財政金融委員会や予算委員会で、まるで「女性宮家」を作るかのようなことをおっしゃったという重大事態なので、本当は水面下で何が起きているかという話は、すいませんが独立講演会でないと言えないんで。

あとね、オフレコだけじゃあれなんで、ここでみんなの前ではっきり言っておきますが、皇位継承が不安定だから「女性宮家」うんぬんと言っている人が多いでしょ、政治家の中でもいますよね、従者の中にもいるわけですけど。実際はですね、悠仁親王殿下と同年配の男子の方が廃絶された11宮家の中にいらっしゃいます。これ僕は自分で調べてたんですけど、もう一度、手段は言えませんが、ぜったい間違いのない方法で、調べ尽くしました。そうすると、はっきり何人てわかってますけど、全部は言えないけれど、少なくとも5人以上いらっしゃる。若い、とても若い皇位継承資格を本来お持ちの男子が
ー中略ー

独立講演会では、どの宮家にいらっしゃるか僕の責任で申し上げます

  1. 悠仁親王殿下と同年配の男子の方が旧宮家に少なくとも5名居る
  2. 青山繁晴氏が独自に調査した
  3. 宮家の名前は虎ノ門ニュースでは言えないが、独立講演会では言うつもりである

この発言に対して「パクリ」であり「ビジネス保守」と言ったのが水間政憲氏です。

水間政憲の「青山繁晴パクリ非難」

◎緊急拡散希望《パクりの青山繁晴氏よ虎ノ門ニュースで謝罪訂正せよ》
2019年04月12日 01:22 h ttp://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-3047.html

水間氏によるパクリ非難の初出は上記ですが経緯が分かる記事を以下引用します。
※水間氏のブログでは「(転載フリー:条件全文掲載)」とありますが、必然性の無い箇所の転載は無駄ですし逆に法的リスクがあるため一部引用します。

●超拡散宜しく《青山繁晴参議院議員のパクりは、日本の国益を毀損する海外の「パクり」を増長させることを認識せよ》
2019年04月20日 14:18 h ttp://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-3052.html

◆3月19日、大塚耕平参議院議員
ソ連時代の「北海道占領計画書」を提供するため面談、
そのとき『ひと目でわかる「戦前の昭和天皇と皇室」の真実』に記載した
皇室の家系図、とくに東久邇家の家系図を重点的にブリーフィング

3月20日に大塚耕平参議院議員が財政金融委員会で
「東久邇家に照宮さまの御子様が三代に亘って男子がいる」ことを
問い質したことから、一気に世論が過熱したことは、皆様方もご承知の通りです。

◆3月28日、チャンネル桜“Front Japan 桜”に出演して東久邇家の家系図を詳細に解説。
https://youtu.be/xxDU5XnzzSc?t=3542

◆4月1日、青山繁晴氏が虎ノ門ニュースで、
唐突に「悠仁親王と同世代に5名の男子」の存在を告知し、
詳細は独立講演会(5000円)で明らかにしますと金儲けの宣伝

水間氏が大塚耕平議員に旧皇族の男系男子の存在についてレクチャーをして、それを元に質疑をしていたということですね。

旧皇族である東久邇宮家の男系男子については2017年3月17日に発行された「ひと目でわかる「戦前の昭和天皇と皇室」の真実 水間政憲」において書かれており、5名というのも一致しているというのです。

他のブログ記事や水間氏の動画を合わせ読むと、どうも、この書籍発行前に東久邇宮家に男系男子がいらっしゃることについて詳しく言及した者はいないので初出は自分であり、青山氏はパクった挙句、大塚耕平議員の国会質疑で公知のものとなったハズであるのに、それを自分の講演会で金儲けのために利用している、という非難をしているようです。

※「一気に世論が過熱した」とありますが、少なくともツイッター上で「東久邇 男子」「旧皇族 男系」で検索してもメディアの記事はまったくヒットしませんし、新聞で報じているものを見たことがありません。

大塚耕平参議院議員による国会質疑:東久邇宮家に男子が健在

第198回国会 参議院財政金融委員会第5号平成31年3月20日

○大塚耕平君 宮内庁にお伺いします。成子内親王と東久邇宮盛厚様の系譜に男子が随分いらっしゃるということは、認識として正しいでしょうか。
○政府参考人(野村善史君) 昭和二十二年に皇籍離脱をされた方々の段階については承知をしておりますけれども、その子孫の方々につきましては具体的には承知をしておりません。
○大塚耕平君 それでは、調べて一度回答してください。私の存じ上げている限りでも、内親王と東久邇宮様の系譜にもう三代にわたって男子が今も御健在であると、かなりの人数であるというふうに理解をしております。

ー中略ー

○大塚耕平君 宮内庁に最後にもう一回聞きます。成子内親王と東久邇宮盛厚様が御結婚されて、東久邇宮様は皇籍離脱をされた宮家でありますので、その系統に男性がもしいらっしゃるとすれば、かなり血統的には天皇家に近いという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(野村善史君) 血統的に近いということは、その親等をどのように数えてみるかということによろうかと思いますので、その数え方次第によるというふうに考えます。
○大塚耕平君 終わります。

まず、国会質疑という場であるからといって、議員が質問の前提としている事実が真実であるという担保がなされているわけではありません

宮内庁の政府参考人は「承知をしておりません」と言っているので、この質疑だけでは「東久邇宮家に男系男子が居る」ということが明らかになったとは言えないのです。

単に、大塚議員がそのような認識でいる、ということに留まります。

当たり前ですよね。たとえば週刊誌のデマ記事を元に質疑すれば、それが事実になるなら、とんでもないことになりますからね。 

ですから、大塚議員の国会質疑によって「東久邇宮家に男系男子が居る」ということが広く一般に知れ渡ったと評価するのはできないということになります。

すると、「大塚議員が国会質疑して公になったのに虎ノ門ニュースで宮家の名前を言わずに講演会でだけ言うのは金儲けだ」ということにはならないわけです。たとえ東久邇宮の名前を言うにしてもです。

単なる「事実」には著作権は無い

著作権法(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
ー省略ー
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

事実の伝達に過ぎない雑報や時事の報道は著作権に該当しないという法律があります。

また最判平成13年6月28日 平成11(受)922(江差追分事件)の判決文はこうあります。

最判平成13年6月28日 平成11(受)922

【要旨2】既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。

翻案権侵害についての判例ですが、 「事実や表現それ自体でない部分」は、たとえ既存の著作物に依拠して創作されても、著作権法違反ではないという判断が為されています。

さらに、月刊パテント2013年11月号著作権法の守備範囲:高部眞規子判事の説明では、「歴史上の事実それ自体は著作権の保護対象にはならない=著作物にはならない」ということが第一に説明されています。

ただ、歴史上の事実の記述であっても、記述全体の中でのその事実の位置づけや構成等によっては、そのような記述全体が著作権の保護対象になり得るとしています。

さて、「東久邇宮家に男系男子が居ること」に著作権はあるでしょうか。

無いです。

それは事実であり、表現されたものではないからです。

単なる「事実」について、他人が既に語っていたらその他人の許可を取らなければならない、というのはおかしな話です。そんなことを言ってしまえば、誰も発言できなくなるでしょう。

旧皇族の男系男子を別途取材していた可能性

こう言うと「著作権侵害を問題視しているんじゃなく、先行者に敬意を払わない態度が問題だ」という指摘があると思います。

さて、本当に水間氏は「先行者」なんでしょうか?

実は2009年4月15日の関西テレビ「スーパーニュースアンカー」において、青山繁晴氏は以下の説明をしています。

ぼやきくっくり | 「アンカー」皇室のふたつの重大危機 雅子妃ご病気と男系継承

今、皇籍を離れてる、皇族でなくなってしまってる元皇族の方々に、20人以上の、ま、26人という話もありますけど、20人以上の男子の方がいらっしゃって、まだ20代の方もいらっしゃいます

もちろん、今年の4月1日の時点では「悠仁親王殿下と同年代の男子」と言っていることから、情報としては一致しません。ただ、青山氏が水間氏とは無関係に情報収集していたからこそ2009年の時点で上記のような指摘が出来ていると言えるでしょう。

「旧皇族の男子に26方」というのは2005年の11月24日に公表された皇室典範に関する有識者会議 報告書(この報告書の通りの方針が採られているわけではない)に記載されている皇籍離脱当時の男子の数と一致していますが、時の経過のためそれを指して言っているとは思われません。

竹田恒泰・西尾幹二らも東久邇宮家を知っていた可能性

また、2012年12月13日に発行された女系天皇問題と脱原発/西尾幹二/竹田恒泰においては竹田恒泰氏が旧皇族(旧皇族の子孫)に男系男子が居るかどうかという文脈で以下の発言をしています。

女系天皇問題と脱原発 37-38ページ

西尾 少し具体的に伺います。名前まで挙げる必要はないですが。竹田さんがコミットされている方々、あるいはその外縁を含めて、意識と自覚の前に、そういう適格者、つまり資格を持つ人が何人ぐらいいるんですか。そしてその中で、意識と自覚を持っている人が何人ぐらいいますか。

竹田 まず未婚の男子は、私が確認している範囲で九人います。これは成人と未成年者、全部含めた数です。あと結婚したばかりの夫婦が何組もあります。旧皇族を活用する場合に対象となるのは、別に独身者に限りません。

これらの中に東久邇宮家が含まれていたかどうかは不明です。

ただ、年齢も把握しているということは、どの宮家に居るのか?ということも把握していたことを意味します。それを敢えて言わなかっただけでしょう。

書籍で東久邇宮家の名前を明示したのが水間氏が最初だからといって、別個の取材で同じ事実に辿り着いたという場合はパクリではないでしょう。

現段階で、青山氏が水間氏を「パクった」と言えるだけの証拠はあるんでしょうか?

あり得るとすれば「水間氏が青山氏にレクチャーをしていた」ということや、取材を受けた者からの情報でしょうが、どうなんでしょうね?

まとめ:なぜ宮家の名前を言わなかったのか?

西尾幹二氏が「女系天皇問題と脱原発」において竹田氏に「名前は言わなくてもいい」と言ったのは、配慮でしょう。

つまり、現段階で宮家の名前が知れ渡ることになると、マスメディアや週刊誌によるプライバシーの侵害が起こりかねないという懸念があったということは容易に想像できます。

ですから、今まで「どの宮家に男系男子が居るのか?」という事を保守系論壇が黙っていたのは、私は賢明なことだと思います。

しかし、現時点では状況が変わり、「女性宮家」が創設されてしまうか否かの分水嶺に我々日本人は立っています。
(実は方法次第では女性宮家があっても男系継承は保てるが)

そのような中でどの宮家に男系男子が居るのかということを開陳するという判断はあり得ると思います。

ただ、「たとえそうであっても宮家の名称をいちいち言うことは迷惑がかかる」という批判も、同様に一理ある指摘だと思います。

以上