事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

熱中症の危険:昔より暑いのに学校にエアコンが設置されない原因は何なのか?

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学校において熱中症による「被害」が後を絶ちません。

エアコンがついてない学校が多いと聞いて、信じられない思いです。

日本の暑さが異常であること、昔よりも暑くなっていることは周知の事実だと思っていましたが、ここで改めて整理したいと思います。

また、学校においてエアコンが設置されないのはなぜかについても整理します。

日本の気温、気候とその変化

現在の日本の気温等と他の地域の気温を比較し、さらに過去の日本の気温がどうだったのかを確認していきます。

日本と東南アジアの気温・湿度

東南アジアインドネシアの気温湿度

https://web.archive.org/web/20180720060533/http://www.tenki.jp/world/4/77/96749.html

東京とインドネシアのジャカルタの最高気温を比べると、東京の方が高いということが分かります。

東南アジアダバオ気温湿度

https://web.archive.org/web/20180720060339/http://www.tenki.jp/world/4/81/98753.html

日本の中では比較的涼しい仙台とフィリピンのダバオの最高気温を比べると、ほぼ同じような値を示していることがわかります。ちなみに湿度を比べるとこの期間は仙台の方が高かったので、WBGT指数は仙台の方が高いことになります。

  • 東京>>東南アジア
  • 仙台=東南アジア

なお、仙台にある私の実家の2階の気温を測ったら37度だったらしいです(笑)

平成30年のご時世の現実はこうであるということです。

しかも、西日本はもっと熱帯です。

近畿地方のアメダス

yahoo天気アプリ提供アメダス

中東の砂漠地帯と同じような気温です。

しかも湿度があるので、日陰に居ても涼しくなく、危険度は高いと言えます。

さらに、コンクリート環境では夜でも気温が下がらないので朝の最低気温が29度なんていうこともあります。

沖縄の天気

「日本で暑い地域」と思われている沖縄の気温はどうでしょうか?

那覇市天気

https://tenki.jp/forecast/10/50/9110/47201/

仙台と良い勝負です。沖縄が避暑地だなんてしりませんでした。

なお、避暑地で有名な長野県軽井沢町と沖縄県那覇市は最高気温がほぼ同じですが、最低気温は軽井沢が19度にまで下がるなど、さすがに夜は過ごしやすいみたいです。

日本は昔よりも暑くなったのか?

日本昔暑くなったヒートアイランド現象気象庁

気象庁ヒートアイランド監視報告2017:https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/h30/chapter1.pdf

気象庁がヒートアイランドについて調査した結果を載せているページでは、100年間の気温の変化を示しています。明らかに最高気温、最低気温、平均気温が上がっていることがわかります。
注意すべきは「15地点」とある表の部分ですが、これは都市化率が比較的低い地域を15地点選んだ平均の値を示しています。つまり、ヒートアイランド現象の影響を受けない地域と言えるのですが、それでも気温は2度弱上がっているということです。

  1. 地球温暖化による気温上昇
  2. +ヒートアイランド現象による気温上昇

日本の都市部の気温上昇は、このような2つの要因が重なっているということです。

都市化が進んでいない地域であっても、純粋な気温上昇があるということです。

ヒートアイランド現象とエアコンは関係があるのか?

魚拓:http://archive.is/gA7WZ

この記事では気象庁にインタビューをしていますが、熱中症になるリスクは昔よりも上がっていること、ヒートアイランドに寄与しているのはエアコンよりも遥かに工場排煙や自動車排気ガスなどの影響が強いと指摘しています。

そもそも、ヒートアイランド現象とは地球温暖化とは切り離された概念であり、「都市が無かったと仮定した場合に観測されるであろう気温に比べ、都市の気温が高い状態」という定義があります。

エアコンがヒートアイランド現象に大幅に寄与するということは無いということです。

さらに、エアコンが地球温暖化と関係があるなどという根拠はまったくありません。

小括:日本は昔よりも暑く、熱帯地域よりも暑い

  1. 東京は東南アジアより暑い
  2. 仙台は東南アジアと同等の暑さ
  3. 沖縄は仙台と同等の暑さ
  4. 地球温暖化により、日本は昔よりも2度弱暑くなっている
  5. 都市化が進んだ地域はさらに1~2度程度暑くなっている

年配の方々の認識と現代に生きる私たちの認識に乖離があるのは当然だと思いました。

ただ、年配の方でも情報取集している方や頻繁にスポーツをしている方は、気温の変化に気付いています。若い者でも、昔の経験則に基づく指導方針を疑うことなく現在も実施している者も居ます。

まずは「日本は暑い」「日本は暑くなっている」という認識をするのが大切です。

なぜ学校で熱中症が発生するのか?

さて、学校教育の現場での痛ましい熱中症の「被害」(決して「事故」と言いたくない)が頻発していますが、熱中症と報道されなくとも学校教育の現場では暑さによる体調不良者が続出しています。

その原因の一つとして「教室にエアコンが設置されていない」ことが挙げられます。

学校になぜエアコンが設置されない場所があるのか、その原因を調べてみました。

公立学校エアコン設置状況

公立学校エアコン設置状況

文科省:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386475.htm

公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果という文科省のデータがあります。全ての学校に冷房(以下、エアコンとします)がついていないというのは北海道などもあるのでわかりますが、都道府県ごとに見ていくと必ずしも暑い地域だからエアコンがついているとは限らないようです。

エアコン設置状況

文科省:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386475.htm

2007年当時の観測史上最高気温40.9度で有名な熊谷市を要する埼玉県をもってしても、小中学校のエアコンの設置率は他の地域と比べて高くありません。多治見市を要する岐阜県も他の地域と比べて高いわけではありません。

東京都は普通教室が99.9%という実績があります。他の地域との比較を見ればわかりますが、このような結果となっているのは「財政が潤沢な地域だから」というのは根拠にならないということがわかります。

エアコン設置状況体育館

文科省:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386475.htm

体育館に至っては、東京都ですら10%にも満たない状況です。

西日本豪雨で多くの方が避難所として利用したのは地域の学校の体育館です。

そのため、猛暑に対応するためにエアコン設置が急ピッチで進められたということは記憶に新しいです。

気温上昇の現状を考えれば、もはやエアコン設置は子どもの学びの場としての学習効率という話ではなく、子どもの健康・生存を左右する話であると言えます。ましてや避難所としての機能を有する学校の体育館であればなおさら設置されていないというのは疑問です。 

なぜエアコンが設置されないのか:国の補助金・財務省の緊縮方針

魚拓:http://archive.is/Y95QL

こちらの記事では「義務教育段階の学習環境は公平に保障されるべきであり、それは国の役割である」 「エアコンはもはや贅沢品ではなく必需品である」という趣旨の記述があり、その通りだと思います。

この記事では国による補助金についても触れられており、学校施設環境改善交付金というものが用意されています。

エアコンクーラー補助金

文科省:公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況調査の結果:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386475.htm


交付金は3分の1補助ということですが、確かにこの割合を増やすなどして学校でのエアコン設置を促すべきであるという方向の議論も可能でしょう。

財務省がこの期に及んで増税方針であり、緊縮財政路線であるということが足かせになっているということは間違いありません。その意味で、「エアコンが設置されないのは国が悪い」という指摘はそれほど間違っていないと思います。

ただし、既に図示したように、自治体によって設置割合が異なるのは決して財政問題が主要因ではないということが分かります。

エアコンの設置を決断する者は誰か?というところが重要です。

自治体の長にエアコン設置権限があるのが通常

 

エアコン設置は平等に公立小中に設置されなければならないため、まとまった予算が必要です。そのため、教育員委員会レベルではなく、自治体の長の権限の話になってくるのが通常です。

大阪市の例では、市長の方針によってエアコン導入が進められたということが分かります。つまり、予算がかかろうが市長がエアコン設置の方針を推し進めれば達成できるものであるという事が分かります。

市長の方針でエアコン設置の方針が覆されたというとんでもない例が所沢市です。

所沢市のエアコン設置撤回・拒否・住民投票否決

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埼玉県ではなぜか所沢市だけエアコン設置率が5%と極端に低いのは、所沢市の市長である藤本正人氏が元々エアコン設置の方針だったものを東日本大震災を理由として撤回したからです。

所沢市民は住民投票制度を作ってまで市長の判断を変えさせようとしましたが、住民投票の結果、賛成5万7000人でしたが反対が3万人もいたことから、賛成票が有権者の3分の1を上回らなかったという経緯があります。 

毎日新聞
埼玉県所沢市は14日、全校に空調設備を設置するため「所沢にふさわしいあり方」を探る調査費350万円を2018年度一般会計当初予算案に盛り込んだと発表した。 

橋下氏が指摘するように、「調査費」という名目でエアコン設置を仄めかして有権者の支持を得ようとする手法が行われているのかもしれません。

なお、所沢市の市長選はこのままだと来年行われます。 

「昔の人間」による凝り固まった観念

私は仙台出身なので、小中高とエアコン環境がありませんでした。大学は関東でしたが、エアコンがついてる教室とついてない教室が半々でした。当然夏場は暑くて集中できません。 

学習環境の整備という側面からエアコン設置の必要性が述べられることがありましたが、もやは子どもの健康・安全の面からエアコン設置が必要だと思います。

一方、2018年1月の所沢市新春の集いでは、藤本市長から以下のようなコメントがなされています。

私としては、最も暑い夏休み中は子どもも来ない、すなわち使わないのでありますし、7月と9月の土日を除いた20数日間くらい何とでもなる。発育途上の子ども達の健康面から考えても、夏は汗をかくもの。いや、温暖化がひどいというのなら、エアコンをつければさらに温暖化を進めてしまうのだから、大震災を経験した私たちは、アスファルトを土に戻し、緑をふやして、むしろエアコンなどいらない所沢にしていかねばならないのではないか、それが未来の子どもたちに対する責任なのではないか、と思うのです。

エアコンと地球温暖化は無関係ですし、ヒートアイランド現象との関係も極めて薄いということは既に書きました。このような非科学的な認識を前提にしている以上、藤本市長の考え方は明確に間違っていると言わざるを得ません。

それに、昨今の熱中症事案では、「学校の先生」も救急搬送されているという面を考えているのでしょうか?発育途上の子供だったら、なおさら危険であるという認識になるのが通常なのですが、何故か「発育のために苦しい思いをしろ」という価値観のようです。

現場の教員の判断に対して邪魔する管理職や教育委員会が居るということ。

こういった教員に対して、「事件」が起こったときに非難の目が向けられることが無いようにしていきたいですね。

電力が足りないからエアコン設置はダメだという主張に対する反論

現在の原子力発電所を使わないエネルギー政策の悪影響がここにも顕れていると言えます。夏の東京電力管内はピーク時の電力が許容量を超えそうになることがあります。学校でのエアコン設置ないしエアコン使用に制限がかけられているのは、ここにも原因の一端があるような気がします。

物理的な問題でエアコンが設置できない事例

学校の建物の構造がクーラー設置に適さないということが稀にあるようです。

「調査費」名目が問題視されていましたが、調査が必要かどうかの線引きは必要でしょうね。 ただ、基本的には調査不要であるべきというのはその通りだと思います。

エアコン設置していても…

エアコンを設置したとしても、「むやみに使うな」「電力がかかるから使用を控えろ」という運用がされていたら無意味です。このような障害を乗り越えられるように、やはり世の中全体で「エアコン設置&使用」を遠慮するということは辞めるべきだと思います。

現場教師の観察や工夫

魚拓:https://web.archive.org/web/20180717232721/http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018071802000071.html

これまで現場の教師が気を付けるだけではどうしようもない要因について書いてきましたが、それでもやはり最終的に子供の命を預かっているのは現場の教師なわけです。昨今の熱中症事案を見ると、現場の行動としても不適切な例が多く、そこは改善していかなければならないと思います。

この痛ましい事件では、教師が児童の体調不良を認識しながらも、外遊びを強要させ、その後学校に帰ってきても涼しい環境に移動させなかったという信じられない行いがなされていました。

さらに、学校の監視下に無い状況においても、「学校の教員の指示」が危険な状況を生み出している場合があります。

水筒の持ち込みが禁止されているというのはビックリしました。もちろん別の観点からの禁止という面があるのでしょうが、健康・命にかかわることですから、早い時期に通学途中でも水分補給ができるようにしてほしいものです。

まとめ

学校にエアコン設置がされない、熱中症が学校で発生してしまう理由をまとめると

  1. 国の緊縮路線の経済政策が遠因である
  2. 自治体の長がやる気がない(やる気があればできる)ことが本質的な問題
  3. 電力政策によるピーク時電力供給の不足が遠因かもしれない
  4. 管理職教員など高齢者の理解不足
  5. 現場教師の判断、観察力不足

自治体の長の力でどうにかした後は、やはり教育の側で如何に熱中症に対する理解が進むかにかかります。

この記事が現場教員による説得の材料になればと思います。

以上