陰謀渦巻く国連でのNGO活動
- 日弁連が国連女子差別撤廃委に皇室典範の改正要求をしていた?
- 女系継承も認めるよう委員会は日本政府に警告しろ、と要求するNGOが
- 日本政府は適切に反論「委員会が皇室典範を取り上げるのは不適切」
- 天皇・皇族の地位は個人の権利利益などの人権の領域ではなく歴史の連続性に立脚する公的な存在
日弁連が国連女子差別撤廃委に皇室典範の改正要求をしていた?
日弁連が国連女子差別撤廃委員会に対して皇室典範に関して触れる記述のある報告書を提出していました。一部ネットでは「日弁連が要求した」と言われているのですが…
上掲リンクの日本の国旗アイコンにある"Info from Civil Society Organizations (for the session)"⇒"Japan Federation of Bar Associations"⇒2024年6月24日付の"Report of the Japan Federation of Bar Associations Regarding the Ninth Periodic Report by Japanese Government under the Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women"
同様の内容の日本語訳版が日弁連のHPに掲載されています。
女性差別撤廃条約に基づく第9回日本政府報告書に対する日本弁護士連合会の報告書 2024年(令和6年)6月20日日本弁護士連合会
本報告書は、日本政府が2021年9月に作成した国連女性差別撤廃委員会(以下「委員会」という。)に対する政府報告書に関し、当連合会が非政府組織としての立場から、同委員会からの質問事項の項目に沿って、日本の状況を報告し、その評価や新たな提案をするものである。
この文書は、「皇室典範を改正して女性天皇を可能にするために講じようとしている措置は何だ?」という委員会の質問に対応した記述となっています。パラグラフ番号と当該項目の名称が一致しています。
List of issues and questions prior to the submission of the ninth periodic report of Japan
2. Definition of discrimination against women and legislative framework
~~Regarding the Imperial House Act, the provisions of which currently exclude women from succeeding to the royal throne, please provide details on the steps that the State party intends to take to enable female succession to the throne.
女性が皇位を継承することを排除している皇室典範について、女性の皇位継承を可能にするために締約国が講じようとしている措置の詳細を示されたい。
2 立法枠組みにおける差別の定義 ~~
As for the Imperial House Act, it does not allow any female imperial family member to succeed to the Imperial Throne. Further, only female imperial family members must give up their status as an imperial family member upon marriage with someone who is neither the emperor nor an imperial family member.
皇室典範においては、女性皇族が皇位を継承することを認めていない。さらに、女性皇族に限っては、天皇・皇族以外の者と婚姻した場合は、皇族の身分を放棄しなければならない。
日弁連の文書だけを普通に読むと、「立法枠組みにおける差別の定義」の項目で、なぜか皇室典範についての現状が記載されており違和感のある文の流れなのですが、こうなっている理由は質問書の構造に対応した記述となっているからです。
日弁連の当該報告書では、明示的に皇室典範の改正を望むとか、そのような勧告を望むなどとは書かれていません。単に委員会からの質問に対して現状の法体系を回答しただけのように読めます。他の項目では明示的に「こうするべき」といった主張がある部分もありますが、皇室典範に関してはそれがありません。
こちらの動画の36分過ぎから日弁連代表の女性がスピーチしていますが、皇室典範・皇室に関しては何ら発言していません⇒2099th Meeting, 89th Session, Committee on the Elimination of Discrimination against Women (CEDAW) | UN Web TV
(※なお、「女性宮家」については論者によって狙いが異なるため、誤解が生じる余地があります。以下を要参照⇒自民党、内親王女王が婚姻後も皇族の身分保持できる案を議論、「女性宮家」の語は使わず:安定的な皇位継承の確保に関する懇談会 - 事実を整える)
女系継承も認めるよう委員会は日本政府に警告しろ、と要求するNGOが
皇室典範の改正を要求していたNGOとしては"Association in Support of Aiko's Rising Crown Prince"が見つかります。名称からして実に不敬な輩であり、しかも内容は女性天皇を認めるべき、ということに留まらず、女系継承も認めるように日本政府に警告してほしい、などと主張しています。
これとの対立論に位置づけられる主張をするNGOとして「皇統を守る国民連合の会」=People’s Alliance for Protection of Imperial Lineage by Paternal Male Succession to the Imperial Throneが委員会で発言しており、「カトリック教会の法皇やイスラム教の聖職者、チベット仏教のダライ・ラマは専ら男性だが、国際連合はこれを女性差別であるとは言わず、なぜ日本に対してのみ言うのか?世界には様々な民族や信仰があり、それぞれ尊重されるべき、内政干渉はあってはならない」と指摘しています。
日本政府は適切に反論「委員会が皇室典範を取り上げるのは不適切」
女子差別撤廃委の委員からも質問がありましたが、その場で日本政府は適切に反論しており、「委員会が皇室典範を取り上げるのは不適切」と指摘しています。
Systems such as the Imperial House of Japan and the royal families of other
countries have remained in place to this day against the backdrop of each in dividual
nation’s respective history and tradition with the support of their people. The system
of succession to the throne in Japan, which is stipulated in the Imperial House Law,
is a matter related to the foundation of a State. In light of the purport of the
Convention, which aims to eliminate discrimination against women, it is not
appropriate for the Committee to raise this issue in relation to the Imperial House
Law.我が国の皇室制度も諸外国の王室制度も、それぞれの国の歴史や伝統を背景に国民の支持を得て今日に至っているものでございます。皇室典範に定める我が国の皇位継承の在り方は、国家の基本にかかわる事項でございます。女性に対する差別の撤廃を目的とする本条約の趣旨に照らし、委員会が我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない
さらに、皇室典範に関する勧告が最終見解に掲載された後も、政府は委員会に対して抗議をし、削除要請をしています。
天皇・皇族の地位は個人の権利利益などの人権の領域ではなく歴史の連続性に立脚する公的な存在
天皇・皇族の地位は個人の権利利益などの人権の領域ではなく、歴史の連続性に立脚する公的な存在です。そのため、「個人」を単位に思考する憲法の人権規定がそのまま適用されるものではありませんから、平等の話にはなりません。
具体的に言えば、天皇・皇族になれば、世上の人間に認められている行動が事実上大幅に制限された環境に置かれます。何でもできるようになる地位ではないわけです。政治的な権能もありません。個人としての法的権利にも制限が付き、例えば選挙権・被選挙権もありません。この環境を手に入れられないことは「不平等」ですか?
それに、いい大人なんだから考えてみてください。
歴史の先例は皇位継承は男系子孫に限っており、いわゆる「女系継承」を認めていませんが、これは一般人の男性が皇室に入ることができない制度になっています。
これは「男性差別」とは言わないのだろうか?
一般人では男性ではなく女性のみが皇室に入ることができる制度になっていることから、彼らの理屈からは、むしろ既に女性が優遇されている制度である、などとはなぜ言わないのか?(どうせ「一般男性も皇室に入れるようにしろ」、とか言ってくるに決まってるが)
女性天皇が認められないことも、権利利益の侵害や不平等の問題ではないわけです。
で、女性が権威や権力の表舞台に晒されることの問題には無頓着なのはなぜなのか?「女性活躍」と言いながらその実は生物としての女性の権能である妊娠出産子育ての機会を事実上奪う傾向に陥らせたり、その環境を劣悪にするものだという認識が欠けているのは気になります。
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