「沖縄の基地負担は米軍専用施設だと約70%であるが、日米共用施設を含めると全基地面積の〇〇%である」
この主張は悪手です。
どう問題なのか説明します。
- 沖縄県の米軍基地面積の割合の計算方法
- 米軍専用施設の沖縄県の基地面積割合
- 日米共用施設も含めた沖縄県の基地面積の割合
- 県面積に占める基地面積の割合
- 小括:日米共用施設を含めた大きさに意味はあるのか?
- 「基地負担軽減」は「米軍基地削減+不利益除去」
- 沖縄は戦略的要衝、基地面積が大きいのは当たり前
- 沖縄県の防衛範囲の広大さ
- 「日米共用施設の基地面積は〇〇%」論は悪手:防衛白書の態度が正当
沖縄県の米軍基地面積の割合の計算方法
「米軍基地の面積」を論じる際には2つの種類の基地があることを認識すべきです。
- 米軍専用施設(米軍が管理して専属的に使用する施設)
- 米軍一時使用施設(自衛隊が管理して一時的に米軍と共用する場合もある施設)
1番の米軍専用施設は、日米地位協定の第2条1-aに規定されているものです。第2条4-aと併せ読むことで、米軍が管理して専属的に使用する施設だということが分かります。
2番は、日米地位協定の第2条4-bに規定されるているものです。「日米共同利用施設」と言われることもあります。
米軍専用施設の沖縄県の基地面積割合
平成29年の沖縄県の資料では70.4%(188,222千平方メートル)
平成30年の防衛省のホームページでは70.28%(184,961千平方メートル)
となっています。
日米共用施設も含めた沖縄県の基地面積の割合
平成29年の沖縄県の資料では日米共用施設が0.3%であり、米軍専用施設を併せて19.2%となっています。
平成30年の防衛省のホームページでは19.1%となっています。
これをもって「実は、負担は大したことがない」と言う者は、県の面積に占める割合を考えているのでしょうか?
県面積に占める基地面積の割合
沖縄県の面積は2,281平方キロメートルです。
※平方メートルで表すと2,281,000千平方メートルになります(1㎢=1000000㎡)
日本国全体の面積は平成29年時点で377,973平方キロメートルです。
よって、日本国全体の沖縄県を除く面積は平成29年時点で375,692平方キロメートルです。
次に、沖縄県のデータをベースにすると日米共用施設も含めた沖縄県の面積に対する基地面積の割合は8.3%です。
沖縄県以外の日本国にある日米共用施設も含めた基地面積は792,799千平方メートルです。
よって、沖縄県以外の日本国の面積に対する基地面積の割合は0.2%です。
沖縄が比較的負担が大きいというのは、日米共用施設を勘案しても変わりません。
小括:日米共用施設を含めた大きさに意味はあるのか?
日米共用施設を持ち出したところで、沖縄県の面積ベースの基地負担が全国と比べて重いということは明らかです。
しかも、「日米共用施設も含めると〇〇%だから~」という主張に対しては、以下のような指摘が為されるのが落ちです。
「そうか。じゃあ日米共用施設も減少させましょう」
日米共用施設論者は、こういう議論の土壌にわざわざ上り込んでいるということが分かるでしょうか?
そもそも「基地負担」と言われているのは、米軍という外国の軍隊が駐留しているからこそ、そのような形容がなされているハズです。自衛隊基地は「負担」ですか?
それに、「基地負担」は一般的に面積が多い少ないということ以上の意味合いで使われています。それについて次項で説明します。
「基地負担軽減」は「米軍基地削減+不利益除去」
「基地負担」は面積比を指すだけにはとどまりません。
たとえば沖縄県宜野湾市長だった佐喜眞淳氏の国会質疑では以下のような意味で「基地負担」と言っています。
189 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 7号 平成27年06月17日
○参考人(佐喜眞淳君) ー省略ー
普天間飛行場のKC130の件でございますけれども、私は着実に負担軽減に結び付いているものだと理解をしております。ただ、結び付いているというだけでございますからゼロではない。まだまだ騒音問題、特に夜間飛行の問題とか、あるいは、この地図でお分かりのように、宜野湾市というのは国道三三〇と国道五十八号線、あるいは県道三十四号線と県道八十一号線、それが宜野湾市の移動する大動脈なんですけれども、今人口が増え、那覇は通勤圏になっておりますので、渋滞が常にあるんですね、慢性的な渋滞も起こってくる。いわゆる騒音だけとか危険性だけではなくて、町づくりに対してのやはり負担も我々として感じていると。
ですから、できるだけそのような負担、目に見えない負担というものも含めながら、危険性の除去、基地負担軽減というものを一歩一歩前に進めていただきたいというのが私どもの素直な気持ちでございます。
また、全国知事会においても、騒音被害も含めて実質的な基地負担であり、それを軽減することを政府に求めています。
平成30年防衛白書でも、ヘリコプターの飛行経路の限定・変更による危険性除去を負担軽減と表現しています。
したがって、「基地負担軽減」とは「米軍基地面積の削減+住民の被る一切の不利益を除去すること」を意味します。
「日米共用施設を含めれば〇〇%~」論は、ともすればこのような意味での基地負担を無視した主張に繋がりかねないものです。
沖縄は戦略的要衝、基地面積が大きいのは当たり前
防衛白書では以下のように指摘しています。
沖縄は…戦略的に重要な目標…安全保障上極めて重要な位置にある。こうした地理的特徴を有する沖縄に…米海兵隊をはじめとする米軍が駐留していることは、日米同盟の実効性をより確かなものにし、抑止力を高めるものであり、わが国の安全のみならずアジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している
一方、沖縄県内には…多くの在日米軍施設・区域が所在しており、在日米軍施設・区域(専用施設)のうち…約70.6%が沖縄に集中し、県面積の約8%、沖縄本島の面積の約15%を占めている。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ最大限の努力をする必要がある
沖縄県の土地の面積に対する負担が大きいことは事実です。
ただ、それは【安全保障における戦略的要衝】に位置するからです。
それは『悪いこと』なのでしょうか?
「基地面積を全国で同じようにしなければならない」などという要請はあるのでしょうか?それは正当でしょうか?
「全国の他の自治体と比べて面積が大きいから不公平だ」という議論に乗っかってはならないというのが分かるでしょうか?
そこから逃げて「いや、実は数字上は土地面積の負担が軽いんだ」なんて言ってみたところで、言い訳をして沖縄を軽視していると思われるだけではないでしょうか?
防衛白書は、「沖縄県の負担の軽減については、安全保障上の観点を踏まえつつ最大限の努力をする必要がある」と言っています。つまり、基地の面積が多くても住民が被る不利益をできる限り減らしましょうということです。
このような態度が正当でしょう。
沖縄県の防衛範囲の広大さ
なぜ沖縄県は土地に占める米軍施設の割合が大きいのか?
それは戦略的要衝であること以上に【防衛範囲が非常に広大であること】に起因します。
東西約1000キロ、南北約400キロにもなる、広大な海域を含めた沖縄の面積は、本州、四国、九州を合わせた広さの半分にもなるのです。
沖縄県のWEBサイトにあるように、沖縄の防衛範囲はとてつもなく広いというのが分かります。
しかし、それに対して土地は少ない。
どうしても土地に対する基地の割合が高くなるというのは仕方がないというのが分かるでしょう。
これを米軍専用施設ではなく、「日米共用施設も含めた」基地面積を問題視してしまうとどうなるでしょうか?
安全保障上、危険性を増大させるということがわかるでしょう。
「日米共用施設も含めれば面積は〇〇%だ」論は、このような意味で害悪なのです。
「日米共用施設の基地面積は〇〇%」論は悪手:防衛白書の態度が正当
再掲 防衛白書
一方、沖縄県内には…多くの在日米軍施設・区域が所在しており、在日米軍施設・区域(専用施設)のうち…約70.6%が沖縄に集中し、県面積の約8%、沖縄本島の面積の約15%を占めている。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ最大限の努力をする必要がある
防衛白書は日米共用施設の基地面積を問題視するのではなく、「米軍専用施設」を問題視しています。
考えてみれば当然のことで、日米共用施設は自衛隊施設ですから、「我々日本国の本来の防衛基地」です。これも含めて削減するのは外国勢力の思うつぼでしょう。
米軍という、外国の軍隊が駐留しているという現状は、将来的に解消されるべきであるというのは、各所で一致した見解です。
よって、実は、米軍専用施設の基地面積の割合が高いことを問題視して、それを解消する努力をすることは、日本国が真に独立することに寄与します。
問題視することの裏にある底意が、まったく別のところにある者も居ますが、それはそのような動機が悪いのであって、米軍基地面積を削減し、住民の不利益を除去することは、全国民が一致して取り組むべき課題であるという認識を持つことが重要です。
以上