事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「政府が米兵犯罪の情報隠蔽!」がデマだった:沖縄県米軍基地関係特別委員会で報告済み

デマでした。

「政府が米兵犯罪の情報隠蔽!」がデマだった

「政府が米兵犯罪の情報隠蔽!」はデマでした。

昨年12月と今年5月の米軍人による性犯罪の事案について、沖縄県が把握できず政府が隠蔽していた!という話がメディアを騒がせていましたが、全くのデタラメだったということです。

実際には「被害者のプライバシーの観点から公表しない事案」について、①政府ではなく県警と県の共有・②報告のタイミング・③起訴前後の情報共有の在り方について、知事側の自分の足元での情報共有の責任の話が政府側に責任転嫁されていたと言えます。

12月の事案は沖縄県議会米軍基地関係特別委員会で報告済み

沖縄米軍の性犯罪隠蔽デマと米軍基地関係特別委員会

米軍基地関係特別委員会記録<第2号>令和6年第1回沖縄県議会(2月定例会)令和6年3月25日(月曜日)

米軍構成員等の刑法犯検挙については県議会の会期で定期的に開催されている米軍基地関係特別委員会で報告が為されているところ、本件で「隠蔽されていた!」と叫ばれている昨年12月の犯行に関する報告は、既に3月の同委員会にて、検挙・検察送致時点での報告が県警より為されていました

5月の事件に関しては定期報告の前だったので知られていなかったということです。

以下ページに後に更新されるでしょう。

令和6年第2回議会(6月定例会)に関する情報(随時更新)|沖縄県公式ホームページ

これは県議会での報告であり、県警から県の執行部・知事室への直接の報告があった、ということではありませんが、この委員会には知事公室長や基地対策課長など県の幹部が多数答弁のために出席しており、この報告を知事に上げていないことの落ち度、そのような報告の体制を欠いていたことは県執行部・知事側にあると言わざるを得ません。

検挙時点での情報共有は県と県警の間で行うもので、政府が県に対して行うものではありません。そんなのおかしいですし、無理です。

報道では「起訴後の政府の情報隠蔽の問題」と時系列の理解を歪ませる記述が多いですが、そこは「県が事件そのものを知らなかった理由」と何ら関係がありません

玉城デニー知事「県警から逮捕時に共有する・政府は最終報告」

7月5日、玉城デニー知事からは、政府からの情報提供の運用方針の改訂として、しかるべき捜査が終了した時点で沖縄防衛局から沖縄県に対して情報共有をすることが決まったと説明されました。

「しかるべき捜査が終了した時点」というのは、一般的には検察による起訴・不起訴の終局処分の段階を指すものと思われます。以下は検察官送致後を念頭にした図です。

法務省:刑事事件フローチャート

今回隠蔽だ!と叫ばれたのは「事件の存在そのもの」についての話が主であり、「起訴したか否かやその後の情報共有の在り方」として切り分けて論じられているものは少ないと言えます。

その仕組みが無かったところで今回新たに仕組み化を政府とともに行った、ということです。

問題は「県警から県への現在進行形の情報共有」の問題で、そこも県警は在日米軍の性犯罪で公表しない事件については那覇地検と相談の上でスピーディーかつタイムリーに検挙或いは送致の時に県警から県に情報共有することとしたいと言っていると説明されています。

この日の玉城知事の会見に政府側や県警側を非難する要素は何一つありません。

NHKによれば、沖縄県と県警の情報共有については「仕組みは前から無かった担当者レベルで共有していたところ、近年は徐々になくなっていった」と報じられていますが、今後は何らかの情報共有可能な状況ができるということでしょう。

米軍関係事件 県警と県の情報共有 数年の間になくなっていた 07月05日 18時21分 NHK

情報共有のあり方について、県警から県に伝える正式な取り決めはなく、NHKが双方の元幹部や現職の幹部に取材したところ、アメリカ軍兵士による重大な事件・事故の発生の情報は少なくとも10年ほど前まで担当者レベルで緊密に共有されていたことがわかりました。

県警の元幹部はNHKの取材に対し「公式なルートはなかったが、アメリカ軍関係の場合は県庁にも行政機関として必要な対応が予想されるので、相互の信頼関係のもと、何かあればすぐに担当者レベルで伝え合っていた」と振り返りました。

一方、県庁の元幹部も「今回のような状態は経験がなく想像もつかない。例えば、被害者が不詳だとか、事件の性質上まだ公表できないとかについて以前は連携を日ごろからとっていたので何かそごが生じたことはない」と証言しています。

ただ、こうした情報共有は、この数年の間に徐々になくなっていったということです。

玉城知事の会見でも触れられているように、県と政府間の情報共有については当日の官房長官会見でも説明されています。

令和6年7月5日(金)午後 | 官房長官記者会見 | 首相官邸ホームページ

在日米軍による犯罪における国内情報共有体制について

 まず、私(官房長官)から、在日米軍による犯罪における国内情報共有体制について申し上げます。捜査当局においては、従前から対外的な事件広報に当たっては、刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえ、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉・プライバシーへの影響、将来のものも含めた捜査・公判への影響の有無・程度等を判断した上で、公表するか否かや、その程度及び方法を慎重に判断しているものと承知をしております。
 関係機関は、そのような捜査当局における判断も踏まえ、県を含む関係者に対する情報提供の必要性及び相当性を判断しているものと承知しています。このような運用につきましては、米軍関係者が関係する事案に限ったものではなく、一般的な運用であるものと承知をしております。同時に、そのような事案であっても、特に全国の約70パーセントの在日米軍専用施設・区域が集中している沖縄においては、米軍人による犯罪予防の観点から、迅速に対応を検討する必要があることに留意し、関係省庁で連携の上、可能な範囲で、地方自治体に対しての情報伝達を行うことといたします。
 ただし、情報伝達に当たっては、被害者のプライバシー保護に留意し、情報の不適切な取扱いが生じた場合には、再発防止策を検討し、それが十分遵守されない場合には、このような情報伝達を取りやめざるを得ないことにも留意した上で、運用してまいります。私(官房長官)からは以上です。

被害者のプライバシー保護が十分遵守されない場合には情報伝達を取りやめる、ということに触れられているのが意味深ではあります。

朝日新聞等メディア「外務省が沖縄県などに情報共有していなかった問題」

朝日新聞などのメディアは「外務省が沖縄県などに情報共有していなかった問題」として、中には「隠蔽」という単語も用いて各者の論調を紹介していました。

5月にも米兵の性的暴行事件 公表していれば「防げたかも」怒り心頭
平川仁 小野太郎 上地一姫 松山紫乃2024年6月28日 22時25分朝日新聞デジタル

沖縄県内で、5月にも米海兵隊員による性暴力事件が起きていた。3日前に発覚した少女への暴行事件で米空軍兵が起訴されたのは3月27日。県などに情報が伝わっていれば被害を防げたのではないか

また沖縄で少女が 不同意性交罪で米兵起訴、政府から県に連絡なし
小野太郎 田中恭太 関口佳代子 中野浩至 高島曜介 渡辺洋介2024年6月25日 21時05分朝日新聞デジタル

一方、日本の外務省は、被告が起訴された3月27日時点で情報を把握していたが、県は地元民放が6月25日に報じるまで事件に気付かなかった

野党、情報共有遅れを問題視 「隠蔽批判免れぬ」―沖縄米兵事件
時事通信 政治部2024年07月03日07時05分配信

 共産党の小池晃書記局長は会見で「政府ぐるみの隠蔽(いんぺい)と言われても仕方がない」と非難。「もしも(1件目の事件が発生した)去年の段階で県に情報が共有されていれば(2件目の事件の)再発防止対策が取られた可能性がある」と語った。
 国民民主党の玉木雄一郎代表は「事案を(県に)全く伝えないのはいかがなものか。わが国の安全保障にも悪影響を与えかねない」と指摘。社民党の福島瑞穂党首は外務、防衛両省を訪れて政府の対応に抗議し、「女性のプライバシーと名誉を守りながら(情報を)知らせることは可能だ」と力説した。

米兵の性的暴行、相次ぎ明るみに 沖縄県に情報共有されなかった背景
毎日新聞2024/6/28 20:45(最終更新 6/29 00:21

昨年12月と今年5月に相次いで起きた米兵による性的暴行事件では、いずれも米兵検挙などの情報が沖縄県に共有されなかった。昨年12月の事件について県が報道で知ったのは米兵の起訴から約3カ月後の今月25日。

誰が本件を正しく把握し、「捜査終了後の政府と県の情報共有の在り方」或いは「検挙・送致時の県と県警の情報共有の在り方」として適切に論じていたのか?

それをメディアはきちんと切り分けて読者の理解を整理する気があったのか?それともごちゃ混ぜにして政府批判に結び付けようとしていただけなのか?は、検証されるべきと思われます。

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