夏祭りで町会役員などの有権者にお金やビール券をばら撒く議員は珍しくないが、子どもたちにお金をあげるという例は初めて聞きました…(絶句)。しかも「祭りを盛り上げてくれた対価」ってなんだ。。 / 青森県議、祭りで子どもに千... #NewsPicks https://t.co/5cIN6A823t
— おときた駿(東京都議会議員 /北区選出) (@otokita) July 27, 2018
お金やビール券をばらまく議員が珍しくないなら告発してくださいな。
— 田中慧 (@Tanaka_Kei) July 27, 2018
音喜多駿都議が「夏祭りで町会役員などの有権者にお金やビール券をばら撒く議員は珍しくない」とツイートしていることに驚きました。
「エッ!?見て見ぬ振りしてたの!?」こう思わざるを得ません。
しかも音喜多氏は都議なのですから、告発義務があるのではないか?
この点について情報を整理しました。
発端となった報道:公職選挙法違反の寄付行為
ライブドアニュース:http://archive.is/iTWSN
青森県議会の関良議員が自ら施設長を務める障害者支援施設主催の夏祭りで、参加児童に対して千円札を配ったということです。これは議員本人が自分の選挙区内で寄付をする行為について原則禁じている公職選挙法違反に抵触する疑いが強いとされ、問題視されました。
公職選挙法で寄附についての規定を見てみましょう
(公職の候補者等の寄附の禁止)
第百九十九条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。
ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して饗きよう応接待(通常用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われるもの及び第百九十九条の五第四項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでない。
自身の選挙区内における寄附行為は原則禁止、但書きで例外が認められている、という立てつけになっています。
今回の事例では例外に当たらず、禁止されている寄附行為にあたるだろうということでした。
「有権者にお金やビール券をばら撒く」について
では、音喜多都議がツイートしたような「お金やビール券をばら撒く」は「寄附」にあたるのでしょうか?定義規定を見てみましょう。
(収入、寄附及び支出の定義)
第百七十九条 この法律において「収入」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の収受、その収受の承諾又は約束をいう。
2 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。
「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付」にあたることは間違いないですね。
したがって、音喜多都議は公職選挙法違反の事実を知っていたということになるのでしょうか?このような事実は一般的であり、特定の事象に遭遇しなくとも知識として知っていただけなのでしょうか?
音喜多都議と夏祭り
音喜多くん曰く、
— 足立康史 (@adachiyasushi) July 27, 2018
夏祭りで町会役員などの有権者にお金やビール券をばら撒く議員は珍しくない…
↑
マジか https://t.co/TumNMRQfjW
議員の方でもショックが隠せないようなので、一般的な知識かどうか不明です。田中慧さんも議員秘書さんでしたし。
おときた氏はブログをやっているので、そこで夏祭りについても記述していないかと思い、調べてみたら結構エントリがありました。
これらのブログエントリを見ると、音喜多氏は都議になってからも北区(選挙区内)の夏祭りに度々参加していることがわかります。
したがって、他人から聞いた一般的な知識として寄附行為の事実を把握しているにとどまらず、選挙民に対して「顔を売る」行動の一環としての祭り運営の中で、寄附行為を把握した可能性が高いのではないでしょうか?
刑事訴訟法上の公務員の告発義務
刑事訴訟法には公務員の告発義務が規定されています。
刑事訴訟法239条第2項
第二百三十九条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
2 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
音喜多都議は都議会議員ですから、地方公務員法上の特別職の公務員です。
したがって、刑事訴訟法上の告発義務がある「公吏」に当たります。
ところで、「特別職の公務員に告発義務が課されていると解すべきか」という解釈問題があるようですが、告発義務を認めるべきだというのが通説です。
解釈の仕方がどのようなものか知りませんが、議会や議員には調査権や質問権があり、上級職の指揮命令系統下にあるわけではないので、一般の公務員よりも「告発を求めるのが酷な種々の事情」は存在しないから(期待可能性がある)、という理由づけが可能なように思います。
告発義務の内容
「思料するときは」告発をしなければならないとあることから、単なる訓示規定ではないか、法的義務規定と解しても公務員の裁量に任されているのではないかという議論があります。
実務で参照されることが多い「条解刑事訴訟法」では、「本項は、単なる訓示規定とは解されない」としながらも、「告発を行うべきか否かは、犯罪の重大性、犯罪があると思料することの相当性、今後の行政運営に与える影響等の諸点を総合的かつ慎重に検討して判断されることになり、これらの理由に基づいて告発をしないこととしても、直ちに本項に違反するものではない」としています(参考ページ。農林水産大臣の記者会見参照)
「その職務を行うことにより」にあたるか
※ここは後に追記するかもしれません。
地方議会議員の職務行為って何でしょうか?祭りに参加したり、祭りの準備を行うことが地方議員の「職務を行うこと」になるのでしょうか?
国家賠償法上の「職務を行うについて」は外形標準説が採られており、客観的に職務行為の外形を備えていれば職務行為と判断されます。ただ、法律が違うので同様の判断を行うのかどうかは分かりません。
夏祭りに私服で参加する行為が地方議員の職務行為にあたるとは思えません。
音喜多駿都議は告発義務違反ではなさそうだが
したがって、法的な義務に違反しているとして音喜多都議を非難するのは無理筋ではないかということになります。
しかし、法的な義務はなくとも、少なくとも道義的な意味において「悪いことを見過ごしてはいけない」という一般的な通念があるはずであり、それに反しているのではないでしょうか?
お金やビール券を有権者にばら撒くのを黙認するおときた氏に絶句
— ふくなが60% (@fukunaga60) July 27, 2018
おときた氏はこれまでもあまり表に出ない内部事情っぽい情報を出しては炎上してきました。そうやって「自分は一般人が知らない情報を知っている」という雰囲気を醸し出し、有権者の支持を得ようとしているのではないでしょうか。
今回のツイートもそうした一面が表出したものと考えざるを得ません。
そもそも、音喜多氏の言っていることは本当なのでしょうか?
わざわざ書く必要のないことを敢えて書き、 一般国民に政治不安を感じさせるツイートを行うのはいかがなものかと思います。
まとめ:東京都北区の都議会議員選挙有権者へ
- お金やビール券をばら撒く行為は公職選挙法で禁止されている寄附行為にあたる
- 音喜多氏は一般的な知識ではなく具体的場面で寄附行為を把握した可能性が高い
- そうではないなら政治不安をいたづらに広める行為である
- 音喜多氏には告発義務はなさそう
- 法的な告発義務はなくとも、道義的には違法行為を見過ごしているとして非難されるべき
東京都北区の有権者の方々、夏祭り等でお金やビール券をばら撒く議員が居たら告発する前に注意してあげてください。有権者が気づかせてあげることも大切だと思います。
以上