事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

立憲・泉代表「防衛3文書の反撃能力は国際法違反の先制攻撃、テレ朝日は誤報」⇒それでも間違いだとツッコミ殺到

国際法についてもデマを流す立憲民主党

立憲・泉代表「防衛3文書の反撃能力は国際法違反」

立憲・泉代表 政府が防衛3文書で決定した“反撃能力”に「反対」[2023/01/25 17:07] テレ朝news

修正前⇒立憲・泉代表 反撃能力保有は「国際法違反で反対」

衆議院の代表質問で立憲民主党の泉代表は、政府が防衛3文書に盛り込んだ反撃能力の保有を巡って「敵基地攻撃は国際法違反の先制攻撃にならざるを得ず反対だ」と主張しました。

 立憲民主党・泉代表:「敵基地攻撃は国際法違反の先制攻撃にならざるを得ず、反対の立場です。政府の『反撃能力』も、もし相手国のミサイル発射の阻止を目的とするなら、同じく国際法違反の先制攻撃とみなされるでしょう」

テレビ朝日が1月25日の衆議院内閣委員会で立憲民主党の泉健太代表が「敵基地攻撃は国際法違反の先制攻撃にならざるを得ず」と発言したと報道。

見出しが『反撃能力保有は「国際法違反で反対」』となっています。

安保関連3文書とは、(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)です。

国家安全保障戦略について | 内閣官房ホームページ

これに対して泉氏は…

立憲・泉代表「テレビ朝日の見出しは誤報」⇒それでもおかしいとツッコミ殺到

立憲・泉代表「テレビ朝日の見出しは誤報」などと騒いでます。

確かに、「反撃能力の保有それ自体が無条件で国際法違反だ」という意味となっていますから、誤報と言えるでしょう。本文も「着手段階で」ということを省いています。

しかし、「それでもおかしい」というツッコミが殺到しています。

着手後の反撃能力(敵基地攻撃能力)は国際法上の自衛権として認められ、先制攻撃とは別

敵基地攻撃能力と国際法上の自衛権 – 国際法学会 "JSIL" Japanese Society of International Law

すでに発射されたミサイルを迎撃するのではなく、敵基地攻撃を行うということは、国際法上の位置づけが争われている先制的自衛(あるいは、違法との見方の強い先制攻撃)にあたるのではないかと指摘されることがあります。これに対して日本政府は、「自衛権は武力攻撃が発生した場合にのみ発動し得るものであり、そのおそれや脅威がある場合には発動することはでき〔ない〕」として、先制的自衛は認められないという立場を示しています。したがって、これまで日本政府が法理的に可能としてきた範囲にとどまる限り、敵基地攻撃は、武力攻撃が発生した後にのみなされうるのであって、先制的自衛をめぐる論争とは関わらないものだとひとまず理解できます。

 そうすると、武力攻撃が発生したとみなす時点が問題となりますが、日本政府は、「武力攻撃が発生した場合とは、この侵害のおそれがあるときでもないし、また我が国が現実に被害を受けたときでもないし、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである」としています。国際法上の自衛権発動の要件としての「武力攻撃の発生」について、被害が実際に生じるまで待つ必要はなく、武力攻撃が開始されればよい、という考え方は、国際法学においても一般的に受け入れられています。そうした考え方と、武力攻撃の着手をもって発生と捉える日本政府の立場とは整合的です。

たとえば他国領域内でミサイルが発射され、まだ自国領域内に到達・着弾していない段階で自衛権を行使できるという点は、国際法学上、概ね一致した意見です。

政府見解というのは以下。

第145回国会 参議院 外交・防衛委員会 第5号 平成11年3月15日

○国務大臣(野呂田芳成君) 実は、私は国会で、この間もこの委員会でも申し上げたとおりでございますが、先制攻撃という言葉は一回も使ってはおりません。どういうわけか、ごく一部の新聞だけが先制攻撃の発言をしたという記事になっておりますけれども、これは私としては正しくない報道だと思っております。
 御案内のとおり、我が国においては、憲法九条のもとで許容される自衛権を発動するためには、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するのに他の適当な手段がないこと、それから必要最小限度の実力行使にとどめることに該当する場合に限られていると思っております。
 我が国に対する急迫不正の侵害がない場合において自衛権の行使として武力の行使をすることは、もちろん憲法上認められていないというのが政府の統一見解でございます。我が国に対する急迫不正の侵害がある場合については、従来から我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指しているわけでありまして、武力攻撃が発生した場合とは、この侵害のおそれがあるときでもないし、また我が国が現実に被害を受けたときでもないし、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである、こういうふうに一貫して申し上げているところであります。
 委員が御案内のとおり、敵基地への攻撃については昭和三十一年の政府統一見解がありまして、我が国に対して急迫不正の侵害が行われた場合、その手段として我が国に対し誘導弾等によって攻撃をされた場合、日本としては座して自滅を待つわけにはいかぬので、そういう場合においては、敵の誘導弾等の基地をたたくことは、他に手段がないと認められる限り、法理的に自衛の範囲に含まれるということで可能であるというふうに一貫して答弁してきたところであります。
 また、いわゆる先制攻撃というのは、武力攻撃のおそれがあると推量される場合に他国を攻撃することと考えているわけでありますから、私は各委員会において敵基地攻撃に関する従来からの政府としての考え方を説明の上、そのような場合には、武力攻撃のおそれがあると推量される場合ではなくて我が国に対し急迫不正の侵害がある場合、つまり我が国に対する武力攻撃が発生した場合であるということから、我が国に現実に被害が発生していない時点にあっても我が国として自衛権を発動し敵基地を攻撃することは法理的には可能である旨を答弁したわけでありまして、先制攻撃を認めたものではないということを改めて御答弁させていただきたいと思います。

昭和三十一年の政府統一見解というのは【第24回国会衆議院内閣委員会第15号昭和31年2月29日】で示された見解のことです。

反撃能力(敵基地攻撃能力と呼ばれていた)については憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものです。

これまで政策判断として保有することとしてこなかった反撃能力でしたが、令和4年12月16日 の安保関連3文書の改訂で、保有する必要があり保有することとする、と明言されました。

つまり、立憲の泉代表の発言は、国際法上認められている反撃能力について、国際法違反だと嘯き、さらにはそれが「先制攻撃である」という概念の捻じ曲げも伴っているという悪質な言動だったということです。

急迫する武力攻撃への自衛(反撃)=pre-emptive self-defenceと「先制的自衛・先制攻撃」=anticipatory self-defenceとの混同

なお、「先制的自衛・先制攻撃」=anticipatory self-defenceという語の混同については

防衛実務国際法 /弘文堂/黒〓将広

国際安全保障第31巻第 4号 武力攻撃の発生と自衛権行使 真 山 全 

これらにおいても指摘されており、急迫する武力攻撃への自衛(反撃)=pre-emptive self-defenceとは本来的に異なる概念です。

どうも、こうした概念を混同させようとしている者が居るようで、日本のマスメディアがその一端を担っている雰囲気があります。

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