事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「立命館大学の金友子講師が朝鮮学校無償化の嘆願書を書かせた」というデマについて

立命館大学の金友子、嘆願書

出典:駐大阪韓国文化院:https://www.k-culture.jp/info_news_view.php?number=1363

「立命館大学の金友子(キムウジャ)講師が授業中に朝鮮学校無償化の嘆願書を書かせた」「成績に影響する」とする言説についてSNSで何度も拡散されているので、改めて情報を整理しました。

「金友子(キムウジャ)講師が朝鮮学校無償化の嘆願書を書かせた」というデマ

魚拓

この話が広まった発端はこのツイートのようです。

結論から言うと「金友子講師が朝鮮学校無償化の嘆願書を書かせた」というのはデマなのですが、このツイート自体はデマであるという認定はできません。

経緯は以下になります。

立命館大学は金友子講師の行為が不適切だとして指導

授業内における学生団体の要請活動への本学嘱託講師の対応について

 現在、ネット上で取り上げられている標題の件について、事実が確認できましたので、以下の通りご報告いたします。

 2013年12月13日、本学嘱託講師が、授業において朝鮮学校無償化に対するアピールをさせて欲しいとの受講生からの要望を受け、当該受講生が所属する学生団体による説明、嘆願書の配布、回収を許可しました。その際、同講師は嘆願書への署名は任意であること、署名と成績とは無関係であること、そして嘆願書は署名の有無に拘わらず学生団体の担当者が回収することを、受講生に対しアナウンスをしました。なお、学生団体の担当者が回収したため、同講師は嘆願書の提出者や記入内容については関知しておりません。

 しかしながら、結果として受講生に同講師が嘆願書への署名を求めたかのような誤解を与えてしまいました。このことは、大学として不適切であったと考え、講師に対し、指導を行いました。なお、受講生に対しては、授業内において改めて説明いたします。

 多くの方にご心配とご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます。また、今後、このようなことが再発しないように徹底してまいります。

                                                    立命館大学

2014年1月のニュースリリースによれば、立命館大学は金友子講師の行為が不適切だとして指導したようです。

受講生とは立命館大学の正規の学生なのか」については不明です。

「授業において」というのが、後述のように「授業時間を利用して」という意味であることからは、少し注意するべきだったと言え、大学の指導が行われたのは仕方がないと思います。

出席カードと共に配布したのか」についても、よくわかりませんが、好意的に考えると講義時間の真っ最中ではなく終わり際に配布した可能性があります(出席カードを講義時間中に予め配布して講義の感想を提出させるスタイルの場合など考えられるが)。

受講生が集まっている状況を利用する、というのは良くあることで、それ自体は規制しろとは言いませんが、こういうものは講義の時間外に行うべきだと思いますし、私の経験からしても、講義者とは異なる主体によるチラシやアンケート等の配布は、そのように行われていた記憶があります。

なお、このリリースは何故か現在、見ることができません。

片山さつき議員が文科省に事実関係の確認を求めたが

片山さつき Official Blog : 立命館大学の女性講師が講義を行う際に出席カードと一緒に朝鮮学校無償化の嘆願書を配布し、学生に記入させた件の文科省説明。

本日の文部科学省からの事実関係のヒアリングは、以下の通りです。

 問題になった授業は、昨年12月13日、立命館大学コリア研究センターの女性研究員による、一般教育科目である「東アジアと朝鮮半島」の授業の中で行われました。
 当日の授業は、ゲストスピーカーを招いて、京都朝鮮学校占拠事件について取り上げるものでした。
 授業時間の中で、学生クラブ団体”朝鮮クラブ文化研究会”が、朝鮮学校無償化の嘆願書を配らせてほしいと申し入れ、当該研究員は、これを許可しました。
 その際当該研究員は、「嘆願書への署名は任意であること、署名と成績とは無関係であること、そして嘆願書は署名の有無に拘わらず学生団体の担当者が回収すること」を、受講生に対しアナウンスした、ということでした。

大学リリース後に片山さつき議員が文科省に説明を求めた際のものですが、大学リリースとほぼ同じことしか書いていません。

唯一、「当日の授業は、ゲストスピーカーを招いて、京都朝鮮学校占拠事件について取り上げるもの」だったということくらいでしょうか。

そういう流れでの嘆願書の配布であったため、講義を受けた学生からすれば「講師が書かせた」かのような印象、「成績に影響する」という疑念を持ってしまっても仕方がないと言えます。外部からみても、講義時間内であるということからは、そういう外観を持ってしまっていると言えます。

何らかの研究に利用するなどの類のものではなく、政治活動ですからね。

一般論として、「実は裏で繋がっていて、回収は別でも講師が賛同した学生の名前とかチェックしてるんじゃないの?」などと言われる危険は、その講師自身が引き受けるべきでしょう。それを回避したいなら、自らの講義時間とその影響下での嘆願書の類の配布は避けるべきでしょう。

朝鮮学校差別に反対する在日朝鮮人大学生連絡会・全国協議会の学生が主体

「外国人学校、民族学校の制度的補償を要求する文部科学省へのメッセージ」募集運動にご協力を!! - 朝鮮学校を知ろう!考えよう!応援しよう!キャンペーン魚拓

「朝鮮学校差別に反対する在日朝鮮人大学生連絡会・全国協議会」では、「朝鮮学校を知ろう!考えよう!応援しよう!キャンペーン」の一環としてて外国人学校、民族学校の制度的保障を要求する文部科学省へのメッセージを集めています!!

どうやら嘆願書の出どころと署名を求めた主体は「朝鮮学校差別に反対する在日朝鮮人大学生連絡会・全国協議会」のようです。立命館大学における事案に関しては、実体ある団体としては"学生クラブ団体”朝鮮クラブ文化研究会”の活動として行われていたようです。

一応、講師とは別主体による活動の一環であるという事情が存在していることが分かります。

ネットニュース媒体が「講師が書かせた」と記事化するも削除

ガジェット通信やハムスター速報が記事化したが、削除されたという記録が残っています。ここには載せません。

なお、この件と無償化除外の件について、お決まりのように「差別」の話として論じている者がいます。この件にはそういう側面からの非難があったのは事実ですが、基本的には単なる事実誤認の範囲です。

また、無償化除外については、学校教育法上、朝鮮学校と同じ分類なのは学習塾などがあり、そういう所も無償化にしろ、と言っているのと同じなのでそれを「差別」と言うのは牽強付会もいいところです。

まとめ

  1. 立命館大学の金友子講師の講義中に朝鮮学校無償化の嘆願書が配布されたのは事実
  2. 嘆願書の配布主体は受講生所属の学生団体であり、回収についても金友子講師が関っているという実態は確認できない
  3. 立命館大学は「結果として受講生に同講師が嘆願書への署名を求めたかのような誤解を与え」たため不適切として同講師を指導したとリリースを出しているが、現在はリリースが削除されている

2020年現在でもなぜか何度も拡散されてるので、経緯をまとめました。

以上