事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

「柴山昌彦文科相が政治活動と選挙運動の違いを理解していない」というデマ

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この件で「柴山昌彦文科相が政治活動と選挙運動の違いを理解していない」

というデマがあるので気を付けましょう。

ツイートの事実経過を見てないからこういうデマに引っかかるんですよ。

柴山昌彦文科相が高校生の政治話に難癖?

この記事で事実経過をまとめていますが完結に文脈を示すと以下のようになってます。

この高校教員と自称する者と高校3年生の会話があった後に以下の非公式RTをしたという経緯があります。

柴山大臣の非公式RTのうち、特に後者が高校生をも名宛人に含んでいるために、高校生の昼食の時間での政治談議を問題視しているかのような印象になっていますが、そういう趣旨ではありません。

この点については先述の記事で述べているのでここでは触れません。

これらのツイートの中で、選挙運動の話になる決定的な部分があります。

政治活動と選挙運動の違いを理解していないというデマ

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「せめて、次の選挙ではこの政策を進めている安倍政権に絶対投票しないように周囲の高校生の皆さんにご宣伝ください」

総務省|現行の選挙運動の規制

【選挙運動とは】
 判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

はい、「次の選挙」「安倍政権に投票しないように」というのは明らかに次回の国政選挙を指しており、次回の衆議院議員選挙という特定の選挙の場面を想定していますから、特定性に欠けることはありません。

現時点での選挙運動の判断をしているのではなく、「次の選挙」という未来の場面での選挙運動について言及しています。

ところで「安倍政権に投票しないように」は「落選運動」の可能性があります。

落選運動」については何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみ
を図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている
(大判昭5.9.23刑集9・678等)とされています。

ただし、裏を返せば、それによって誰かを当選させる意図が見えた場合には選挙運動になるということです。

「落選運動だから選挙運動ではない」とはただちに言えるものではないので、柴山大臣が「選挙運動」について言及したことが間違いだとは言えません。

学校の政治的中立性からは落選運動の呼びかけもどうなのか?

更には学校という場の政治的中立性の観点からも手放しで是認できるとは思えません。

文科省からは以下の通達が出ています。

教職員等の選挙運動の禁止等について:文部科学省

公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではなく、その政治的中立性を確保するとともに、行政の公正な運営の確保を図る必要があることは言うまでもありません。

特に、教育公務員(校長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、常勤及び再任用短時間勤務講師、実習助手、寄宿舎指導員)については、教育の政治的中立性の原則に基づき、学校において特定の政党の指示又は反対のために政治的活動をすることは禁止され、さらに選挙運動等の政治的行為の制限等についても公職選挙法及び教育公務員特例法に特別の定めがなされているところです。

高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知):文部科学省

第3 高等学校等の生徒の政治的活動等

他方で、1)学校は、教育基本法第14条第2項に基づき、政治的中立性を確保することが求められていること、2)高等学校等は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第50条及び第51条並びに学習指導要領に定める目的・目標等を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること、3)高等学校等の校長は、各学校の設置目的を達成するために必要な事項について、必要かつ合理的な範囲内で、在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされていることなどに鑑みると、高等学校等の生徒による政治的活動等は、無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解される。

この通達自体が憲法違反であるという主張をするのもありでしょうが、教員による政治活動のみならず、18歳の高校生を利用して学校内の生徒らに対して自己の政治的主張を浸透させようとする教員の存在を想定すれば、不合理な通達ではないと思います。

したがって、「選挙運動ではない落選運動」であったとしても、教育基本法や学校教育法の理念・趣旨に照らせば、それを学校内で行うよう要請することは慎むべきと考えるべきでしょう。

世の18歳高校生のみなさんも、政治的中立性が求められる公的施設である学校内で選挙運動ではない落選運動を展開することについて是認するべきなのか否かは考えるべきだと思います。

ここは議論が分かれると思います。

まとめ

この話は柴山大臣にツイートされた高校生側からすれば驚いただろうし、私も柴山大臣のツイートはあまりにも不親切であり不用意だと思います。

「弁護士なのに政治活動と選挙運動の区別がついてないぞ」などとツイートの文脈と事実関係を踏まえない言説がありますが、相当程度は柴山大臣の発信方法が原因でしょう。

以上