事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

消費税増税法の成立経緯と麻生太郎内閣:附則104条と民主党政権時の三党合意

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oldtakasuさんによる写真ACからの写真

消費増税法の成立経緯はどうなっていたでしょうか?

所得税や法人税についても消費増税法では関連していますが、ここでは一般の消費税率が8%、10%に上がったことに焦点を絞り、それ以外の法制については捨象します。

いわゆる消費税増税法(消費増税法)の成立経緯概観

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11月30日に作成された事務局説明用の資料において、消費増税法が作られた経緯、三党合意でどう法案が作成され・修正されたのかがまとまっています。

こうしてみると、事の発端は民主党ではなく、自民党政権(麻生政権)だったことがわかります。

いわゆる「三党合意」は、この後になされたものです。

平成21年:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 附則104条

いわゆる「消費増税法」と呼ばれているものは、【社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 法律第六十八号(平二四・八・二二)】です。

その法律が成立する前に、自公政権(麻生内閣)時代の「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラム(平成20年12月24日閣議決定)」を受けて平成21年に【所得税法等の一部を改正する法律 法律第十三号(平二一・三・三一)】が成立しています。

その法律の附則104条において、将来的に消費増税をすることが盛り込まれたのが、現在の消費増税の動きのすべての発端です。

附則104条と麻生太郎

所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)(抄)

(税制の抜本的な改革に係る措置)
第104条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとするこの場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
2 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予測せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
3 第1項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。

ー省略ー
消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。

麻生太郎オフィシャルサイト

いわゆる附則104条を麻生政権において成立させたというのは本人が述べています。

このことはいろんな方が既に指摘している通りです。 

附則104条はその後の社会保障・税一体改革大綱(平成24年2月17日閣議決定)でも、社会保障制度改革国民会議(平成25年8月6日)の報告書でも引かれていて、いわゆる消費増税法が成立した原因であるというのは間違いありません。

民主党野田内閣と消費増税法案制定

附則104条には「平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とあるように、期限が決められています。つまり平成24年3月末までに法整備しろということが書いてます。

麻生政権は平成21年9月16日までであり、その後は民主党政権になりました。

消費増税法が衆議院に提出されたのは平成24年3月30日(第180回国会における財務省関連法律 : 財務省)ですから、野田総理自身の見解はともかく、民主党が性急に消費増税をしようとしたという事実は無い、ということになります。

小泉政権時代から与謝野馨らが増税方針であり竹中平蔵が反対していたというのは有名な話ですが、メディアではほとんど報道されないのは本当に謎です。

安倍総理叩きが行われるのに、消費増税関係の者はほとんど叩かれません。

たまに「麻生叩き」が発生してもくだらない発言の揚げ足取りで終わりです。

さて、消費増税法が作成・成立するにあたって行われたのが三党合意です。

民主党政権時の三党合意とは

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三党合意とは消費税に焦点をあてるならば、消費増税法、つまり【社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 法律第六十八号(平二四・八・二二)】を作成することと、衆議院提出後に議論をして条文修正をすることを合意したことを指します。

消費税関係の大きなスケジュールと三党合意の位置づけは以下です。 

  1. 平成24年3月30日 法案提出 第180回国会における財務省関連法律 : 財務省
  2. 平成24年6月8日~15 日 民主・自民・公明の3党で実務者協議
  3. 平成24年6月15日 税関係協議結果(合意文書)
  4. 平成24年6月21日 三党合意の確認書(上図) 
  5. 平成24年6月26日 衆議院修正案
  6. 平成24年7月13日 参議院付託
  7. 成立日:平成24年8月10日 成立法律
  8. 公布日:平成24年8月22日
  9. 施行日(増税日):平成26年4月1日(別段の定めがあるものを除く) 

三党合意と谷垣総裁

石原伸晃が当時の自民党幹事長だったために三党合意で名前が出ることが多いですが、当時は谷垣禎一が自民党総裁であり、増税方針だったということは忘れてはなりません。

民主党増税の協力者、谷垣禎一総裁
谷垣氏、「消費税10%必要」 - ライブドアニュース

しかも、谷垣さんは東日本大震災を理由に増税するということを言っており、多方面から非難されていました。

被災者を苦しめる自民党谷垣総裁の増税 | 上念司 Facebook

【iRONNA発】大地震を利用する増税派の悪質な手口を忘れるな 田中秀臣・上武大学ビジネス情報学部教授(1/6ページ) - 産経ニュース

谷垣氏の増税希望方針は、安倍政権以降も変わっていません。

谷垣氏「安心して消費税をいただけるように」 :日本経済新聞

民主党との政治駆け引きでやむを得ず合意せざるを得なかったのか?

むしろ谷垣さんの方から民主党に対して三党合意の履行を求めているのが分かります。

テキスト:谷垣禎一総裁 定例記者会見 | 総裁記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党

まとめ:消費増税については「民主党ガー」は通用しない

  1. 現在の消費増税路線は麻生政権時代の所得税法等の一部を改正する法律附則104条が発端
  2. 民主党政権時の自公民三党合意は民主党主導というわけではなかった
  3. 麻生さんは三党合意以前から消費増税路線
  4. 麻生さん・谷垣さんは安倍政権以降も増税方針

消費増税については「民主党ガー」は通用しません。

以上