誤報と言わなければならない
「石破総裁あす衆議院解散を表明」という誤報
自民党石破総裁 あす衆議院解散を表明へhttps://t.co/sG4snwp0gj
— 日テレNEWS NNN (@news24ntv) 2024年9月29日
自民党石破総裁 あす衆議院解散を表明へ 日本テレビ放送網 2024年9月29日 21:17
令和6年9月29日、「石破総裁あす衆議院解散を表明」という報道が出ました。*1
特に日テレは「複数の自民党幹部によりますと、自民党の石破総裁はあす30日、衆議院の解散を表明することが分かりました。これに伴い、衆議院総選挙は10月15日公示・27日投開票の日程で行われることになります。」と書いており、誤報と言わなければなりません。
「来月1日に召集される臨時国会で衆議院を解散」の意味だが
この話は、正確にはNHKや日経新聞が報じているように『「来月1日に召集される臨時国会で、9日に衆議院を解散し、27日に衆議院選挙の投開票を行う日程」について、石破自民党総裁が9月30日にそのような予定であることを意見表明する』という意味なら意味が通ります。
まず、現在は国会閉会中であり、10月1日に臨時国会が召集されるという前提事実がなければ、読者は判断できません。
そこまで読み込んで「10月1日以降の予定について言うつもりなのだな」と理解したとしても、日テレは『いつ総理としての解散権を行使するのか?』という点を書いていないため、「これに伴い」の意味が通りません。
総理としての解散権の行使ではなく、単に通例上、次期総理大臣と目される自民党総裁である者が意向を表明したとして、それが選挙の日程を確定的なものとする効果は発生しないため、ただの誤報と言わなければなりません。
また、公職選挙法31条3項では、解散から40日以内に総選挙を行うこと、同31条4項では「総選挙の期日は、少なくとも12日前には公示しなければならない」と定められており、解散権の行使をした日から自動的に公示と投開票日が決まるわけでもありませんから、その観点からも「これに伴い」と書いている意味が通らないことになります。
「自民党総裁には内閣総理大臣の解散権は無い」という不毛な意識と7条解散説の論争
こうした誤解を招く記事によって、「自民党総裁には内閣総理大臣の解散権は無いだろ」という突っこみがSNSでは多発しましたが、流石にそんなことではない。
しかし、文章の客観的な意味内容としては、そのような指摘が妥当するものになってしまっているという点で、低レベルな記事がどれほど読者の認識・意識を不毛な方向に向かわせるのか、という事が意識されなければならないと思います。
以下のような政局の動きにも利用され、有権者の判断を歪めることになります。
閉会中に国会に何の説明もなく総理をやめると言った岸田総理も、首班指名されていないのに衆議院解散すると表明するらしい石破総裁も、国会軽視が甚しいと思います。
— 西村ちなみ 立憲民主党 (@chinami_niigata) 2024年9月29日
自民党石破総裁 あす衆議院解散を表明へ(2024年9月29日掲載)|日テレNEWS NNN https://t.co/EaVIpOkiLi
また、石破茂議員は内閣総理大臣の衆議院の解散権の根拠についての「憲法7条解散説」(現実の運用はこの説で政府見解でもある)を否定していました。*2
現実に合わせて持論を修正することは妨げられるべきではないですが、従前の自身の発言との整合性を問われた際にその変節の理由をきちんと説明できるのか?というのは重要になってくるでしょう。
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