これはダメだろう
- 打越さくら議員「山際大臣は統一教会信者ではないのか?」
- 岸田総理、自民党岸田総裁が統一教会=家庭連合との関係断絶を指示
- 憲法上の信教の自由の精神に反する行いと、不合理な質問
- 特定の属性者を構成員から排除することは結社の自由・契約締結の自由
打越さくら議員「山際大臣は統一教会信者ではないのか?」
打越 山際大臣、今日もですね、何か新しい事実が統一教会との関係が何か新しい事実が出て来るかもしれないと、その都度説明責任を果たしていかなければならないようなことを仰ってるわけですね、驚きますよねこれね。
山際大臣はご自身の秘書には信者がいたということは否定されているんですけれども、念のため伺いますけれども、大臣ご自身はいかがなんでしょうか。山際国務大臣 なかなか信教の自由をですね公の場で公人といえどもそういうことを聞くべきかどうかということは私はわかりませんんけれども、お尋ねでございますので私は信者ではございません。
立憲民主党の打越さくら議員(弁護士)が10月19日の参議院予算委員会で「山際大臣は統一教会信者ではないのか?」と聞いた際の発言はこういった形で為されています。
これは前提事実・経緯の認識が必要です。
夏ごろに山際大志郎議員の秘書に旧統一教会の信者が居る、という週刊新潮の記事があり、野党議員も一体となってメディアで「調べろ!」などと騒がれたためにやむなく「統一教会の信者かどうか」を尋ねたという経緯があります。
これもな、週刊新潮が山際大臣の秘書の方を旧統一教会の人間と報じたことがきっかけで、大臣はそんなこと訊けないだろって、ずっと拒否してきた訳だ。
— さいたか💉💉💉💉 (@saitaka523) 2022年9月3日
そういう経緯をすっ飛ばしてるからな。
マスコミや野党は猛省すべきだ。 pic.twitter.com/jw9kMCGkzm
山際経済再生担当大臣の行動には批判もありました。「そんなことを聞くな、秘書の信教の自由はどうなるのか」のような。
しかし、山際議員自身も当初は尋ねるということは拒否していました。世の中の圧力に負けて尋ねたという形です。それに対してすら「確認できないと言っただけだ!ちゃんと調べろ!」という誹謗中傷がありました。
山際大臣の秘書が教会関係者との証言得たとニュース23が報道。
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) 2022年9月3日
山際氏は「信者の秘書はいない」ではなく「確認できなかった」とだけ回答。
ネパールでの統一教会の関連団体主催の国際会議への出席含めて「確認できない」で逃げ切ろうとしてるようにしか見えない。
大臣を辞任するべきではないか。 https://t.co/GXQLZrUkYq
岸田総理、自民党岸田総裁が統一教会=家庭連合との関係断絶を指示
他方で、自民党は岸田総裁が統一教会との関係を断ち、それを党の基本方針として徹底させるとまで言っていました。
令和4年8月31日 岸田内閣総理大臣記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
まず、旧統一教会の問題です。我々政治家は、それぞれの政治活動において、可能な限り多くの方々と接し、その意見に耳を傾け、自分自身の考えも御理解いただく努力が不可欠です。また、信教の自由や政教分離は憲法上の重要な原則として最大限尊重されなければなりません。
しかしながら、政治活動には責任が伴います。宗教団体であっても、社会の構成員として関係法令を遵守しなければならないのは当然である一方、政治家側には、社会的に問題が指摘される団体との付き合いには厳格な慎重さが求められます。
私の政権における大臣、副大臣、政務官については、自ら当該団体との関係の点検を行うとともに、関係を絶つことの確約を得たところです。しかし、閣僚等を含め、自民党議員について、報道を通じ、当該団体と密接な関係を持っていたのではないか、国民の皆様から引き続き懸念や疑念の声を頂いております。
自民党総裁として率直におわびを申し上げます。
国民の皆様の疑念、懸念を重く受け止め、自民党総裁として茂木幹事長に対し、先週来、3点指示をいたしました。
第1に、党として説明責任を果たすため、所属国会議員を対象に当該団体との関係性を点検した結果を取りまとめて、それを公表すること。
第2に、所属国会議員は、過去を真摯に反省し、しがらみを捨て、当該団体との関係を絶つこと。これを党の基本方針として、関係を絶つよう所属国会議員に徹底すること。
第3に、今後、社会的に問題が指摘される団体と関係を持つことがないよう、党におけるコンプライアンスチェック体制を強化すること。
自民党として説明責任を果たし、国民の皆様の信頼を回復できるよう、厳正な対応を取ってまいります。
また、当然のことながら、政府としても霊感商法等の被害者への対応に万全を期すため、法務大臣を議長とする「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議や、消費者庁に霊感商法等の悪質商法への対策検討会を設置しており、政府を挙げて被害者の救済に全力で取り組んでいきます。
山際議員が秘書に確認したと表明したのは、この後の話です。
岸田総裁の下では、ちょっとでも疑惑を持たれたら統一教会の信者か否かを聞くしかなくなるように追い込まれる。
要するに、打越さくら議員が批判されるのであれば、岸田総理も批判は免れない。
もちろん、岸田総裁の方針通りのことを聞いただけなのだから何ら問題はない、ということではなく、別個に評価できる話ですが。
注意すべきは、これは「信教の自由の侵害」の話なのか?ということ。
憲法上の信教の自由の精神に反する行いと、不合理な質問
相手の信仰を尋ねること。
これ自体は「信教の自由侵害」ではないです。
信仰の告白を強制されない自由はありますが、返答する際の選択肢が用意されている状況では(尋ね方によるが)、単に信仰を尋ねるだけでは信教の自由侵害ではないです。
でも、相手の信教について「聞いちゃダメ」と言われてますよね。
それは、場合分けが出来る人ばかりではないから単純化し、説得力があるように見せかけるために信教の自由・信仰告白を強制されない自由、と説明してるだけです。
実際、それで多くの場合に妥当しますし社会から無用の争いは無くなります。
「選挙の秘密」も同じような事になってます。相手にどこに投票したのか聞くことすらダメな雰囲気になってますよね。でも、それだけでは自由の侵害にはならない。お互いに開示して政治談議をすることもあります。
が、「そういうことになってる」ことで全体的には望ましい社会になる、ということでロジックの厳密さが度外視された標語やメッセージが発せられているというだけ。
背後にある信教の自由の精神への配慮があるのは確かです。それ自体では自由侵害ではないが、控えるべきとされる行為というのは世の中に夥しいほど存在します。
信教の自由は無視して、相手の信仰を聞く行為の意味を考えると
- 単なる興味本位(目的も悪気も無い)
- 自分の教義に沿う人なのかの判別のため
- 単に信仰を明らかにさせること自体で相手や状況をコントロールしたい、レッテル貼りしたい
- 何らかの必要があって
3の場合の弊害が大きい。だから一般にダメとされる。
2の例としては、「日蓮正宗の人で組織される団体に入会しようとする相手に創価学会員かどうか聞く」とかですね。これは正当でしょう。4の場合に含まれるとも言えますけど、特別切り出して言及する意味がある。
さて、打越さくら議員の質問は、必要だったのか?
おそらく先方の言い訳としては「岸田総理自身が政権や党において統一教会と関係断絶する方針を明言してるのだから当然だ」と言ってくるでしょう。
もっとも、総理の方針だから侵害ではない、とはならないので、やはり信仰を聞くのはマズいのではないか?という話はできます。
特に打越議員は弁護士ですから、信教の自由の精神にとってどうなんだ?社会正義・人権を守るための弁護士としてどうなんだ?と。
私は、こんな質問はするべきではないと思います。
山際大臣には返答するか否かの自由は、【この時点では】残されていました。
では、「答えない」とした後に、「岸田総理自身が政権や党において統一教会と関係断絶する方針を明言してるのだから答えるべきだ」としてきた場合、どうか。
この場合、実質的にYES/NOを答えなければならない状況になっていると言えるでしょうから、山際氏の信仰に関する沈黙の自由は侵害されていると言えるのではないでしょうか?少なくともその精神に反した行いと言える。
(もしも「そうだ」と答えてたらどうするんだろうか?「お前は統一教会だから政権に居るべきではない、辞任しろ」とでも言うなら他人が強要する話なので少なくとも信教の自由侵害だろう)
ただ、「侵害が正当化されない=憲法違反」とはならないでしょう。
これは免責特権があるからとか打越議員は公権力ではない、ということとは関係なく、(その後の追及の仕方にもよるが)まさに政権担当者として、総理総裁の方針に従っているのかどうかということを問うているわけですから。
特定の属性者を構成員から排除することは結社の自由・契約締結の自由
翻って、ある団体について、その団体の信者が大量に違法な行為をしている実態があることを理由としてお付き合いを忌避するというのも、私人にとっては当然の憲法上の権利の行使です。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2022年9月1日
【お付き合いを強制させられる】の方がおかしく、異常です。
特定の属性者を構成員から排除することは基本的に結社の自由・契約締結の自由です。
一部の場合は法令等で修正され、完全自由ではなくなることがありますが。
外国人雇用のケースでも同様の話はあります。
自由ではあります。
しかし、その判断に伴う弊害や外部からの否定的評価があったとしても仕方がない場合もあるでしょう。
特に政治家・政党の話になればなおさら。
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