事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します

『「野党は反対ばかりしている」は多い』のか?:立憲民主党の中谷一馬の主張

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立憲民主党の中谷一馬氏が【「野党は反対ばかりしている?」を客観的にデータ検証してみた。】というタイトルで寄稿しています。
※選挙ドットコムからの記事みたいですが当該HPや本人のブログ上では確認できず、yahooの記事から引用します。

2ページにも渡って「野党は反対ばかりしている?」について反証を行っていますが、その論述に突っ込みどころが満載なのでここで見ていきましょう。

立憲民主党の中谷一馬氏の主張の概要

  1. 「野党は与党に反対ばかり」ではない⇒約8割が賛成
  2. 反対した法案には理由がある
  3. 与党が審議拒否している:たとえばギャンブル依存症対策基本法等、経済産業委員会での審議など

これらの主張に対して確認していきましょう。

1:「野党は反対ばかりしている」は多いのか?

中谷氏の寄稿文の目的は「野党は反対ばかりしている」ということへの反証です。

しかし、議論のつかみのためなのか知りませんが『「野党は与党に反対ばかりしている」と言う人が多い』或いは『多くの人が野党の良くない面として「野党は与党に反対ばかりしている」を理由にしている』ということを前提としています。

国民の皆さんが野党に持つイメージは様々だと思いますが、その中でも多く耳にするのが上記のような「野党は与党の意見に反対ばかりしている」という意見です。

これって本当ですかね?

  • 31%:建設的な対案を出さない
  • 10%:与党に反対ばかりしている
  • 21%:国会質疑の時間を無駄にしている
  • 38%:有力な証拠もなく疑惑をかけている

468票のサンプルですが、上記のような結果となりました。

「全部」というリプライや引用リツイートが多くつきましたが、「反対ばかりしている」というのは本質的な理由と考えている人はそれほど多くなくて、理由の一つとして捉えているという人が多かったですね。

中谷氏は「野党は反対ばかりしているという意見を多く耳にする」というところから「野党は反対ばかりしている」を否定することで自党の行為を正当化しています。

「多数意見の論拠を崩すことでの自党の評価の回復」を狙っていたのでしょう。

しかし、そもそも「反対ばかりしている」が野党の評価が低い主要因ではないので、このような反論はあまり有効ではないと言わざるを得ません。

そんなところより、もっと法案の中身を主張したらどうですかね?

反対している=戦っているという絵を見せるよう野党も動いているし、それをマスメディアが殊更に映しているという側面があるでしょう。自分でやっておいて何を今更、という話です。

2:「反対には理由がある」だけ?

反対している法律案には、明らかに反対すべきおかしなポイントが存在しているのです。

例を挙げれば、
「党利党略で自民党国会議員の身分保障を優先した参議院議員定数6議席を増やす法案」
「成長戦略、依存症対策などあらゆる面で疑問だらけなのに、賭博ギャンブルを解禁して実行するカジノ法案」
「捏造データをもとに審議を続けてきた、働き方改革関連法案」

など、世論調査を見ても国民の多くが疑問を持ち、反対している方々が多数派を占める法案ばかりです。

えっ!?これだけですか?これらの法案について、何がどうおかしいのでしょう?

おそらく自発的に書いたものでしょうしウェブの記事に「紙幅の関係」 なんてものは無いので書けばいいじゃないですか。たとえば「カジノ法案」は「疑問だらけ」って、自分で「おかしなポイントが存在している」と問題設定しておいてこれじゃあ論述文章としても成立してません。

国民に「勝手にググって問題点を探せよ」って丸投げしているのと同じですよ。

ちなみに「カジノ法案」とはIR整備法案=特定複合観光施設区域整備法ですが、依存症対策は法案に記述がありますし、 特定複合観光施設区域整備推進会議でも議論されており、ギャンブル等依存症対策法という別途成立している法律に基づく部分もあります。

ギャンブル依存症(法律ではギャンブル「等」依存症だが)の9割はパチンコなので、IRカジノを作る事が「ギャンブル依存症問題を放置する」ということにはなり得ません。

また、政局で反対しているだけであるということを示す者もいます。

つまり、自分たちが死ぬほど騒いで反対した自衛隊法であるにもかかわらず、いざ政権を担う段になると、三年三ケ月、何事もなかったかのように、そのまま自衛隊法を運用し続けたわけだ。

「逆襲本」とは、足立無双の逆襲~永田町アホばか列伝IIのようです。

立憲民主党は旧民主党系ですから、現時点でも当てはまるということになります。

3:対案は出しているが:ギャンブル依存症対策基本法

今国会で立憲民主党は、

「原発ゼロ基本法案」「公文書管理法案」「ギャンブル依存症対策基本法案」「共謀罪廃止法案」「子どもの生活底上げ法案」「農業者戸別所得補償法案」「性暴力被害者支援法案」「介護士処遇改善法案」「保育士処遇改善法案」

など他党との合同提出も含め44本の議員立法法案を国会に提出しました。

「対案を出さない」じゃなくて「建設的な対案を出さない」という事が問題です。

まず、「対案を出すことがすべて良いということではない」という認識は必要でしょう。『共謀罪(テロ等準備罪)廃止法案』などはまさにその一例です。FATAの勧告の要請にようやく答えた立法なのに、これがなければ日本人の貿易や渡航に制限がかかってしまいます。

反対方向の対案ではなく、同じ方向の対案というものも、場合によっては有害であるという認識も必要だと思います。たとえば「ギャンブル依存症対策基本法案」についてみていきましょう。

同法は平成28年12月15日成立のIR推進法(上述のIR整備法案とは別の法律)を契機に同年12月22日に内閣に設置されたギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議で立法のための議論がなされてきました。

この議論を受けてギャンブル「等」依存症対策基本法は自民党の中谷元らによって提出されましたが、同時期に初鹿昭博ら野党議員によってギャンブル依存症対策基本法が提出されています。

法律の中身を見ると、構成はとても似通っています(平成20年頃からの超党派IR議連での議論の蓄積もあったためだろうが)。

具体的な違いで目についたのは以下です

  1. 「依存症」の定義が与党提出法案ではあるが、野党提出法案では無い
  2. パチンコを「ギャンブル」に含めている
  3. ギャンブル依存症対策推進本部の副部長は与党は国務大臣だが野党は厚生労働大臣

野党案は定義することに問題があるという考えと思われますが、法律の根本的な部分で定義がないというのは疑問です。

パチンコは現時点では法的に直ちにギャンブル=賭博となるものではないという扱いです。だからこそ成立法律はギャンブル「等」となっています。野党案は法律案の名称からして現行法体系を無視したものになっているので、成立してしまったら大混乱が起こります。

ギャンブル依存症対策基本法には内閣にギャンブル依存症対策推進本部を設置すると書いてありますが、副部長に厚生労働大臣という特定省庁の利権を生みかねない組織はどうなのかと思います。与党案、野党案いずれも委員に各省庁の大臣が記述されていますが、ギャンブル依存症対策は多方面に渡るものですから、特定省庁が「上役」になるような組織は好ましくないと思います。
※公営ギャンブルは別々の省庁が所管となっており、厚生労働省は所管を持っていないのでバランスを取るつもりだったのでしょうが、ギャンブル依存症対策は全分野に影響力を行使しますから厚生労働省に副部長席を独占させるのは「権力」を与え過ぎだと思います。

結局のところ、野党提出のギャンブル依存症基本法案は邪魔でしかなかったと思います。

4:経済産業委員会は政府提出の案件がないから審議すべき?

立憲民主党枝野代表の発言の引用

「政府提出法案を優先してやりたい。与党のみなさんがそういう立場であることは認めるわけではありませんが、理解します。そうであるならば、経済産業委員会はどうなんでしょう。
政府提出の審議案件がとっくの昔になくなっています。われわれはいわゆる原発ゼロ法案を提出をして審議を求めています。
政府提出法案がまだまだたくさん残っていて、そちらの審議をやらざるを得ないので野党提出の議員立法の審議ができない、のではなくて、政府提出の案件がなくなって空っぽスカスカでやることがないのに、野党の議員立法の審議にすら応じない。誰が審議拒否をしているんですか?」

国会は経済産業委員会だけあるのではありません。

各委員会を独立して議題を選定するべきという要請も無いはずです。政策に基づいて国会で審議するべき立法案に優先順位をつけ、不要なものは審議しないというのが当たり前の姿だと思います。

そもそも自分たちが要求した質疑すらボイコットした挙句に18連休をして国会期日を無駄にした党の言っていることとは思えません。

まとめ:報道や情報を鵜呑みにせずファクトチェックすべき

その判断は客観的であり根拠はあるのか?

これらの数値や実態を客観的にみて、野党は与党に反対ばかりしていると言う人はいないのではないでしょうか。
様々な場所で、「野党は反対ばかりしている」という人々は、どのような根拠をもとにそのような発言をしているのか分かりませんが、客観的な事実に基づいた意見でないことだけは間違いありません。

「野党は反対ばかりしている」は表面的な反対理由でしかなく、本質的には政局で反対している、建設的な対案を出していない、国会質疑の時間を無駄にしている、有力な証拠もなく疑惑をかけている、といったものが理由であるということは最初に示しました。

中谷氏の論を真に受けて「野党はまともな仕事をしているんだなぁ」などと思わないよう、ファクトチェックして良かったです。

以上