事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

大阪吉村知事「陽性者イコール感染者ではない」より「感染力が無い人は感染者ではない」が問題

大阪吉村知事「陽性者イコール感染者ではない」 は正しい

大阪府・吉村知事が定例会見1月13日(全文6完)陽性者イコール感染者ではない 1/13(水) 19:21配信

吉村:僕の中では感染者っていうのは、やっぱりそれに感染して、ほかに感染させる力がある状態で、PCRで陽性っていうのは、陽性者はあくまでもPCRで陽性になった人っていうのが陽性者であって、それはイコール感染者ではない。人に感染させる力がなくなっている人も、これはやっぱり陽性者にもなるし、疑陽性の話だってあるし。陽性に出たのが陽性者であって、イコール感染者ではないというのは、僕の頭の中では十分理解していますが、一般用語で使うときには、そこはまとめて使っているときはあります。

大阪吉村知事の「検査で陽性者イコール感染者ではない」 は正しいです。

PCR検査でも抗原検査でも抗体検査でもそうですが、検査で陽性が出たからと言って必ずしも病原体を保有しているということにはなりません。

細かい話は省きますが、どうしても「偽陽性」の結果が出ます。体操の内村航平選手が陽性になったが後に偽陽性だったと判明したことは記憶に新しいでしょう。

なお、無症状の方に検査をして感染者を見つけて隔離したとしても、陽性反応が出る時期の後半だと、感染予防効果はないということが分かっています。

無症状の方にPCR検査を拡大することの問題は?|コロナ専門家有志の会

陽性者イコール感染者だと思っている残念な人たち

これらは論外。

しかし、吉村知事の発言に問題が無いことを意味しません。 

吉村知事「僕の中では感染者とは、他人に感染させる力がある状態」の問題

吉村知事の発言の中でいくつかコントラバーサルなものはあるのですが、中でも「僕の中では感染者とは、他人に感染させる力がある状態」という趣旨の発言は、政治家(しかも緊急事態宣言に関する法的主体である知事)として、あまり良い発言とは言えません。

感染者」という単語は感染症法には出てきませんが、感染症法上は病原体を保有しており且つ症状のある者として「患者」或いは「感染症の患者」という用語が用いられています。

そこに感染力の有無は関係ありません。

そのような意味において「感染者」という用語が使われており、長年実務が回っています。その最中に、独自の解釈を持ち出してくるのは議論に混乱を生じさせるだけでしょう。誰が言い出したのかは見当がついていますが、言い出した者は愚かだと思います。

無症状の方にPCR検査を拡大することの問題は? コロナ専門家有志の会

なぜなら、病原体を保有しているが感染力を持つ者と、そうでない者とを分ける明確な方法は無いからです。特に病原体が未だに特定されていない時期や(この時期のものが「新感染症」に分類される)その特性が不明な病原体の場合にはなおさらです。それは感染症の特性が判明した後であっても、更に個別の病原体保有者毎に異なるでしょう。

ですから、それを分ける基準として一般的な名詞単独の言葉を用いるということは、非現実的です。

しかも、「感染者」という長年利用してきた言葉の意味を変える話ですから、徒に混乱をもたらすだけです。百歩譲って、なぜ、他の形容詞を用いたり特殊な用語を使って差別化しないのでしょうか?

病原体を保有しているか否かは検査で陽性になったか否かという基準がある。患者と無症状病原体保有者は「症状の有無」という切り分け基準がある。

それらは神の眼から見たら完璧な分類ではないかもしれないが、有効だからこそ立法化されてきたわけです。

吉村知事にこの「感染者」の用語法を刷り込んだ人間、いったい、何をしようとしてるのでしょうか?

以上