事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

共同通信JAXAH3ロケットをまたも「打ち上げ失敗」と書くも修正、「発射中断、誤検知ではない」を削り「電力数秒途絶」と2度サイレント修正

異常を検知しました。誤検知ではないです。

共同通信「発射中断、誤検知ではない - H3ロケット1号機報告」

魚拓

2023年2月22日午後6時28分のツイート。

この記事のタイトルが【当初は】「発射中断、誤検知ではない - H3ロケット1号機報告」だったものが、「ロケット発射寸前に電力数秒途絶 JAXA調査」に変わっていたことが分かります。

Googleの検索結果画面でも確認できます。

ところが、それだけではありませんでした。

記事本文の文章が、2度に渡ってサイレントに変更されていました。

端緒となったのは以下のツイートの指摘。

共同通信初稿「H3ロケット1号機の発射が寸前に中断され、予定していた衛星打ち上げが失敗した」

山陽新聞digital 発射中断、誤検知ではない H3ロケット1号機報告
2023年02月22日 18時28分 更新 のキャッシュの魚拓

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、17日に新型主力機H3ロケット1号機の発射が寸前に中断され、予定していた衛星打ち上げが失敗した原因の調査状況を文部科学省の有識者会議で報告した。中断は、電源系統で生じた実際の異常を捉えたもので誤検知ではなかったと説明した。

 1号機の発射は17日午前、予定時刻の直前にロケット1段目の制御用機器が異常を検知し、補助用の固体ロケットブースターに着火の信号が送られず中断した。種子島宇宙センター(鹿児島県)から災害状況の把握などに用いる地球観測衛星だいち3号を打ち上げるはずだった。

 JAXAは予備期間の3月10日までの再挑戦を目指している。

共同通信の初稿は、「H3ロケット1号機の発射が寸前に中断され、予定していた衛星打ち上げが失敗した」「誤検知ではなかった」という表現が見つかります。

同じ文章の記事は高知新聞のキャッシュの魚拓などでも確認できます。

つまり、これは共同通信の配信記事であるということです。

第二稿「H3ロケット1号機の発射が寸前に中断されたのは電源系統で実際に生じた異常を捉えた」

茨城新聞クロスアイ ロケット発射寸前に電力数秒途絶 2023年02月22日(水) 21時57分 共同通信社 のキャッシュの魚拓

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、17日に新型主力機H3ロケット1号機の発射が寸前に中断されたのは電源系統で実際に生じた異常を捉えたためで、誤検知ではなかったと文部科学省の有識者会議で報告した。その後の記者会見でJAXAは、発射寸前に機体内の電池から主エンジンの制御装置への電力供給が数秒間途絶えたと明らかにした。電気回路のスイッチがオフになったとみている。
衛星打ち上げの再挑戦は当面3月10日までで、期間の延長は困難。間に合わなければ期間を再設定する必要があるとしている。
説明では、電源系統の異常には機体や地上設備から電気的な影響が及んだ可能性が高いとした。
(共同)

共同通信の第二稿では、「H3ロケット1号機の発射が寸前に中断されたのは電源系統で実際に生じた異常を捉えたため」と書かれているものがあります。

誤検知ではなかった」という記述は維持されています。

同じ文章の記事は山陽新聞digitalのキャッシュの魚拓などで見つかります。

第三稿「ロケット発射寸前に電力数秒途絶 JAXA調査」「誤検知ではなかった」が削られる

ロケット発射寸前に電力数秒途絶 JAXA調査 2023/02/22 Published 2023/02/22 22:56 (JST) 共同通信

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、17日に新型主力機H3ロケット1号機の発射が寸前に中断された際に機体内の電池から主エンジンの制御装置への電力供給が数秒間途絶えていたと明らかにした。電池と装置をつなぐ回路のスイッチがオフになった可能性が高い。衛星の再打ち上げは当面3月10日までの間を目指すが期間を延長できないため、間に合わなければ後日に再設定する必要があるという。

 こうした内容は22日の文部科学省の有識者会議でも報告した。

 JAXAの記者会見によると、スイッチがオフになった原因はまだ分かっていない。さらに原因を分析するが、部品の交換が必要になる可能性もあるという。

共同通信第三稿では「機体内の電池から主エンジンの制御装置への電力供給が数秒間途絶えていた」という表現となり、「誤検知ではなかった」という記述も削られました

なお、タイトルが「ロケット発射寸前に電力数秒途絶 JAXA調査」に変化したのは、第二稿からのようです。

では、他の報道機関はどう報道しているでしょうか?

NHKや朝日新聞など他の報道「異常として検知していた」

「H3」打ち上げ中止 ロケット1段目の機器で異常 JAXA調査結果 | NHK | 宇宙

2023年2月22日 21時40分 (魚拓

今月17日、打ち上げが中止された日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、メインエンジンに電力を供給するロケットの1段目にある機器で異常が起きたとする調査結果を明らかにしました。JAXAは原因を究明したうえで来月10日までに再び打ち上げに臨む方針です。

「H3」の初号機は今月17日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定でしたが機体の1段目にある機器が異常を検知したため、補助ロケットに着火信号を送らず打ち上げが中止されました。

JAXAは、今月18日に初号機を組み立て棟に戻したあと、原因調査を本格化させていて、22日に文部科学省の有識者会議でこれまでの調査結果を報告しました。

報告によりますと、打ち上げの6秒ほど前、メインエンジンの燃焼が始まったあと、燃焼を調整する機器に電力を供給する「VーCON1」と呼ばれる装置の内部で電流と電圧の値がゼロになる異常が発生していたことが判明したということです。

電源の異常を検知すると、補助ロケットに着火信号を送らないということでJAXAは、装置の内部にあるスイッチの動作や機器と地上設備との間の電気系統などを中心に詳しい原因を調べているということです。

また、補助ロケットを含む機体や地上設備のほか、搭載している衛星には損傷がないとして、原因を究明し対策を講じたうえで、予備の打ち上げ期間にあたる来月10日までに再び打ち上げに臨む方針です

打ち上げ直前の異常検知は「電圧低下」 H3ロケットでJAXA調査:朝日新聞デジタル
キャッシュの魚拓

打ち上げが中止になった新型ロケット「H3」について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、主エンジンに電源を供給する系統で打ち上げ直前に電圧が落ち、異常として検知していたと、文部科学省が開いた有識者会議で報告した。さらに詳しく原因を調べ、予備期間の3月10日までの打ち上げをめざすとしている。

 JAXAによると、ロケットの第1段にある主エンジン「LE9」に電源を供給する電気系統で電圧が落ち、第1段全体の制御用機器が検知した。そのため、発射0・4秒前に着火予定だった2本の固体ロケットブースターに着火の信号が送られなかった。電圧が落ちた理由として、系統をつなぐスイッチの不具合や地上からの電気的なノイズなどの可能性が考えられるという。岡田匡史・プロジェクトマネージャは「メーカーとも協力しながら調査中。予備期間内の打ち上げに向けて全力で取り組む」と話した。

 H3は17日午前10時37分に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上がる予定だった。18日に発射点から組み立て棟に移動した。LE9や固体ロケットブースターに異常はなく、機体や搭載していた地球観測衛星「だいち3号」にも損傷はないという。(玉木祥子)

いずれも、タイトルや記事本文が変更されているということは確認できませんでしたが、ページソースではmodifiedの履歴が残ってます。

ただ、NHK記事も朝日新聞記事でも「誤検知ではなかった」点が明らかであり、「異常として検知していた」という旨が書かれています。

「誤検知」は検知した結果自体が実態と合わないという意味であり、「異常として検知」というのは、異常が発生したことを実態通りに正しく検知したという意味であり、まったく異なります。

共同通信の現行の記事では「誤検知ではなかった」という記述が削られ、「異常として検知していた」という他の報道機関が報じている記述が無いため、この点について、より「失敗側」の印象になるように記事が変更されたと言えるでしょう。

なぜ、このような変更になるのでしょうか?

サイレント修正による誤認識の放置・再生産:共同通信の不必要な修正の過去の例など

軽微な変更ならともかく、記事の内容に大きな変更があったにもかかわらずサイレント修正で済まされているような場合、当初稿による誤認識の放置と、その内容の流布による誤認識の再生産の危険があります。

もっとも、修正がより正しい事実認識に近づくものであるならばまだ理解できるのですが、今回のように詳細部分を省いたものに敢えて変更しているのは解せません。

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