森山未來のダンスは暗いだとか不気味だとかの評価がありますが、その意味を知るとまた違った評価になると思います。
ミュンヘン五輪でのイスラエル選手団の悲劇追悼
東京五輪2020開会式では、オリンピックゲームに関連して犠牲になった方への黙祷が捧げられました。
特に、1972年のミュンヘンオリンピックで武装勢力に殺害されたイスラエルの11名の選手についてアナウンスでも言及がありました。
※パレスチナの武装勢力が選手を人質に取りドイツ人警官も死亡した事件
殺害された11人の遺族は国際オリンピック委員会(IOC)に大会の開会式で1分間の黙祷を行うように求めていましたが、半世紀近く断られていたものが実現しました。
1972年のオリンピック・ミュンヘン大会期間中に殺害された #イスラエル 人選手11名が、史上初めてオリンピックの開会式で追悼されました。
— Barak Shine バラク・シャイン 🇮🇱 (@BarakShine) 2021年7月23日
この心温まる瞬間を与えてくださいました #Tokyo2020 に感謝します🙏お心遣いは、イスラエル人一人一人の心の琴線に触れました。
pic.twitter.com/l3pNa4PYkj
イスラエルでは大変関心の高い話題のようでした。
イスラエル公共放送、夜の定時ニュースの見出しトップが、この東京五輪での歴史的な、ミュンヘン五輪被害者追悼だった。遺族は49年この瞬間を待っていたと。その瞬間は、体が震え、鳥肌が立つものだったと。
— Mika Levy-Yamamori (山森みか/biniyaminit) (@M_LevyYamamori) 2021年7月23日
היסטוריה בטוקיו | אחרי מאבק של שנים: דקת דומיה לזכר חללי מינכן 1972 בטקס פתיחת האולימפיאדה. @urildorl, שליווה את המשפחות שנים רבות, מספר על המאבק#השבוע pic.twitter.com/XI86KO6OOC
— כאן חדשות (@kann_news) 2021年7月23日
אילנה רומנו, אלמנתו של יוסי רומנו, על טקס הזיכרון לי"א חללי טבח הספורטאים באולימפיאדת מינכן 1972: "רגע היסטורי, בחלומות הכי ורודים לא ציפיתי". אנקי שפיצר, אלמנתו של אנדריי שנרצח גם הוא בטבח: "חיכינו לזה 49 שנים"@YoavBorowitz pic.twitter.com/AgzgkUE74m
— כאן חדשות (@kann_news) 2021年7月23日
遺族の方も大会関係者として会場に来ていたようです。
森山未來の演舞とイスラエル
これで多くのイスラエル人にとって日本の好感度が上がったわけだが(外交的表現でも反セム主義的表現に抗議→鳥肌が立つような歴史的瞬間に感謝)… 森山未来氏が文化庁から1年間テルアビブに派遣されてカルメル市場のそばに住みダンスのレッスンに励んでいたことが、ここでつながってくるとは。
— Mika Levy-Yamamori (山森みか/biniyaminit) (@M_LevyYamamori) 2021年7月23日
僕は文化交流使として1 年という期間を,主に中東はイスラエルで過ごしていました。2013 年に日本で製作されたミュージカル「100 万回生きたねこ」という作品で,演出,振付,美術としてイスラエルの芸術監督インバル・ピント氏,アヴシャロム・ポラック氏と関わったことが,今回イスラエルはテルアビブを拠点とする彼らのダンスカンパニーにお邪魔するきっかけとなりました。
森山未來、文化交流使としてイスラエルへ「自分の表現と向き合うことができた」 | ORICON NEWS
2013年10月21日~2014年10月20日に文化庁からの派遣という形で森山未來氏がイスラエルへダンス留学をしていたということがありました。
森山未來のダンスの意味
いろんな意味が込められていると思われます。
オリンピックゲームでの犠牲者の鎮魂
冒頭でも書いたように、オリンピックゲームに関連して犠牲になった方の鎮魂の意味があるでしょう。
新型コロナ禍での犠牲者への追悼
新型コロナ禍でのオリンピックゲーム開催ということで、この意味もあると思われます。後述しますが、「疫病退散を願う儀式」に通ずる動きや演出があったという指摘があります。
未練の幽霊と怪物の成仏
https://www.instagram.com/p/CRrJL-uMOJL/?utm_medium=copy_link
森山未來氏のInstagramでは、五輪開催までに関与してきたものの開催時にはスタッフとして名を連ねることにはならなかった方々の名前があり、彼らに対する感謝の言葉がつづられています。
その中には小林賢太郎氏の名前も。
五輪開会式の演出担当者は、チーム構成に変遷があったのは周知の事実です。
ところで、森山未來氏はKAAT神奈川芸術劇場での「未練の幽霊と怪物の成仏」という演目において、新国立競技場のデザインが一度は採用されながらも建設費等の関係で変更された当時のデザイン監修者のザハ・ハディッド氏を直接取り上げた能の演者の一員として出演していました。
https://www.kaat.jp/d/miren2021(魚拓)
『挫波』ー東京五輪招致のため、2012年新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家「ザハ・ハディド」。その圧倒的なデザインで脚光を浴びながら、後にその採用を白紙撤回され、それからほどなく没した彼女をシテとして描く。
『敦賀』―夢のエネルギー計画の期待を担い、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅ。もんじゅを臨む敦賀の浜を訪れた旅行者が出会うのは――。
目に見えないもの、霊的な存在がその想いを語る「夢幻能」の構造を借り、岡田が問うものはー
社会とその歴史は、その犠牲者としての未練の幽霊と怪物を、
ひっきりなしに生み出して来て、今だって生み出し続けています。
わたしたちはそれら幽霊や怪物のことを見ないこと忘れてしまうことを、
その気になればできちゃうし、そのほうが快適な向きは確かにある。
でもそれらに、つまり直視しないこと忘却することに、抗うために、
能という演劇形式が持つ構造を借りて、音楽劇を上演します。 岡田利規
退くこととなった芸術スタッフに向けたメッセージを残しているのだから、ザハ・ハディド氏に向けたメッセージでもある可能性は十分にあるでしょう。
東大寺修二会や五体投地の動きと指摘する人も
森山未来のこの動き
— 巴井 (@tom_oi2by2) 2021年7月24日
改めて見ると達陀の五体投地の動きみたい。
竹をダンッ‼︎ってやるあの動き。
美しいダンサーがやるとこうなるのでは。 pic.twitter.com/szNHSY9ifE
森山未來が地面に体を打ち付けた独特な舞は、奈良東大寺二月堂の“お水取り”として知られる東大寺修二会(しゅにえ)をモチーフにしてると思う。これは日本で最も長く続く仏教儀式で僧侶たちが仏の前で体を打ちつけ、罪を悔い、わび、そして祈る。まさに、「疫病退散を願う」儀式。#東京2020 #開会式
— 🐬都南レオパルト🐬 (@TonanLeopard) 2021年7月23日
森山未來氏のダンスの動きは「東大寺修二会」や「五体投地」の動きと類似しているという指摘もありました。
いずれも宗教的な意味があるもので、もしかしたらその動きを取り入れたものなのかもしれません。
小林賢太郎解任劇と森山未來の演舞、開会式の演出との関係
- ユダヤ人が人口の基本構成であるイスラエルの選手の追悼
- 犠牲者の鎮魂
- 無念・未練の成仏
これらの演出を考えると、小林賢太郎氏が20年ほど前に片桐仁とのコンビ「ラーメンズ」のコントの一場面で発言された「あ~ユダヤ人大量惨殺ごっこやろうといったときのな」「トダさん怒ってたなぁ~」「放送できるか!ってな」という発言を原因とする解任という組織委員会の判断は、一定程度、理解できるものと言えるでしょう。
ベースとしては、小林賢太郎氏が全体調整に関わったものだからといって、その演出をそのまま採用したところで、20年前の発言でその後全く発信しておらず本人も反省している内容について肯定したと受け止められるようなものではないし、そうあってはならないと言えます。
解任は、開会式のメッセージを明確にするためには効果的だったのでしょう。
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