あれがフェアかどうか、って日本での議論の典型だとこの言い方
— 樋渡 類 (@RuiHiwatashi) June 28, 2018
これだと議論の決着つかないので、法治主義では「定義」をする
それがFIFAフェアプレー規則。文言に合致してるかを議論。規則に不備があれば改正する
今の規則には「どの一試合も勝ちを目指すこと」と明記ありhttps://t.co/gid17PSVsj
【FIFAフットボール行動規範:ルール①】
— 樋渡 類 (@RuiHiwatashi) June 28, 2018
"あらゆる試合"は勝利を目的とすべし
勝ちを目指さないことは、相手を騙す、観客を欺く、自らを貶める行為
強敵にも最後まで諦めず、弱い相手にも手を抜かず
全力で戦わない事は如何なる相手であっても侮辱である
終了の笛まで、勝つためにプレーすること https://t.co/fH2hiI6REo
日本代表がフェアプレーポイントによって決勝トーナメントに進出しましたが、日本代表がワールドカップグループリーグ第三戦のポーランド戦で見せたプレーは無気力試合か?フェアプレーとは何か?という点が問題になっています。
これについては個人がそれぞれの考え方で肯定、否定することもいいですが、「規範=ルール」に則った場合にどのように解釈できるのかについて検討していきたいと思います。
- FIFAフットボール行動規範
- Promote the Interests of Football
- 競技規則"Laws of the Game"の精神
- FIFAのサッカー普及活動:子ども向け「フェアプレー」
- 西野監督の記者会見
- JFA=日本サッカー協会の行動規範
- Winnig=勝利とは何か
- 日本代表対ポーランドは無気力試合か?
- シセ監督のフェアプレーポイントへのコメント
- まとめ
FIFAフットボール行動規範
"Code of Conduct for Football"(FIFAフットボール行動規範)においては以下のように記述されています(魚拓:http://archive.is/3y9UV)
1:Play to Win
Winningは全ての試合の目的である。決して負けるためではない。もしあなたが勝つためにゲームをプレーしなければ、それは対戦相手を惑わせ、観客を欺き、あなた自身を騙すことになる。強い相手を前にしても決して諦めてはならないし、決して弱い相手に情けをかけてはならない。それは相手が全力でプレーすることを侮辱することになる。最後の笛までプレーせよ。
ここでWinningをわざと「勝利」と訳さなかったのは、ここの意味するところが重要だからです。このWinningはその1試合での勝利のみを指すのか、それとも大会全体を通した勝利、つまり「優勝」も含むのかどうかという解釈問題があります。
英語でWinningと言うときは、その意味に「優勝」も含みますから、当然このような疑問が生じるわけです。さらに、それ以上の意味合いが含まれているのかどうかも検討しなければなりません。
では、それはどのように解釈するのかというと、まずは他のFIFAフットボール行動規範を見るべきということになると思います。
Promote the Interests of Football
FIFAフットボール行動規範には「フットボールの魅力を広めよう」という項があります。これが関連すると思います。
6:Promote the Interests of Football
フットボールは世界最高の競技である。しかし、そうであり続けるためにはあなたの助けが必要である。あなた自身の前に、フットボールの魅力を考えよ。あなたの行動がゲームの印象にどのように影響を与えるのかを考えよ。ゲームの肯定的な側面について語ろう。他の人にもその側面を見たり、公正にプレーすることを勧めよう。他の人があなたと同じくらいフットボールを楽しめるよう努めなさい。ゲームの大使になれ。
フットボールの魅力は1試合の攻防に限るものかどうか。大会のレギュレーションが得失点差やフェアプレーポイントによって決まるということであれば、そういった要素による決勝トーナメント進出の可能性を確保する行為もまたフットボール競技の一部であるという意見もあると思います。
日本代表対ポーランドのゲームの肯定的な側面があるとすれば、「恥を偲ぶ」という行為の意味について深い示唆を与えてくれたことである、とでも言えばいいのでしょうか?
競技規則"Laws of the Game"の精神
普段審判員が利用している競技規則の2017-2018には「将来に向けて」という項において、2017-2022戦略の一環として、競技の公平・構成と高潔性が強化されることが謳われ、協議の対象として「時間浪費への対抗措置」「より長いプレーイングタイムの確保」が言及されています。(JFA版は14頁)
今回の事案はピッチ内でのボール回しのためプレーイングタイムではありますが、実質的には「時間浪費」に類すると言えるので、議論の対象になるのではないでしょうか。
たとえば自陣内でのプレー時間に制限がかかるとか(草サッカーレベルでは不適切だとは思いますが)、他のスポーツ競技からの拝借も考えられるかもしれません。
競技規則のレベルでは無理であるならば、大会レギュレーションとしてフェアプレーポイントがあるのですから、あらゆる「時間稼ぎ」行為に対してはフェアプレーポイントの減点措置を取るということも検討されていくのではないでしょうか。
FIFAのサッカー普及活動:子ども向け「フェアプレー」
FIFAの子供向けのフェアプレーの説明文が表示されているWEBでは以下のように書かれています。(魚拓:http://archive.is/0v7Kh)
Winningはあらゆるゲームの目標です。決して負けるようプレーしてはいけません。もし負けることになったとしても公平にプレーしなさい。そうすればあなたは尊敬を勝ち取ります。勝者を称えましょう、そして、次のゲームでの勝利に挑戦しましょう。
Play to lose=負けるようにプレーとはどういうことでしょうか。積極的に負けるようにプレーすることだけにとどまらず、勝つためのプレーをせず、負けている状況を維持することも含まれるように思います。
なお、引き分けの状況を維持することも含むでしょうか?
なでしこジャパンがワールドカップ予選のオーストラリア戦で引き分けの状況を維持するボール回しをしたときも激しく非難されました。これに対してFIFAは何ら罰を下していませんが、問題であることは間違いありません。
西野監督の記者会見
西野監督の発言は文字起こしをすると意味不明な日本語になるので、要約は以下
- チャンスがあれば、という判断をしていた段階があった
- しかし、万が一0-2になってしまう可能性を考えた
- 最終的に自分が送ったメッセージは「このままでいい」負ける情況をキープした。
- 選手は私のメッセ―ジを忠実に守っていた
- プランに無かった中で状況が求めていたのが「他力」
- 長谷部投入時点でメッセージを伝えた
「負ける情況をキープ」、「他力」と明言しているのがバカ正直と言うかなんというか。試合中もシュートに持っていくプレーが途中になかったのが悔やまれます。
JFA=日本サッカー協会の行動規範
JFAサッカー行動規範(魚拓:http://archive.is/1tPTx)では以下の記述があります。
最善の努力
どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする。
「一つのゴールのために」と言う文言があることから、今回の日本代表の行為、西野監督の方針は、明確にJFAの行動規範に反する行為です。
これは解釈の余地がありません。
Winnig=勝利とは何か
何度か「予選突破を目指して全力を尽くしたのだからフェアでは?」と反論されたの補足
— 樋渡 類 (@RuiHiwatashi) June 28, 2018
FIFA規範には「any game(単数形)」と書かれているので、「どのような試合であってもその一試合で勝利を目指す」という意味のはずです
(だから日本は「この試合も勝利は目指してました!」と言い張るべきでした) https://t.co/Yp4fK3pCzB
本来、西野監督もそのように発言し、日本代表も全ての時間をボールキープに使うのではなく、攻める姿勢も見せて欲しかったと思います。
たとえばこの試合が勝ち点6同士の試合であり、もう一方の試合で勝ち点3のチームが居た場合、両チームが引き分けを狙ってプレーしていたら、談合となり問題でしょう。
そのような行為を規制する意味でも、勝利に向かってプレーするということは、単一の試合において求められる規範と考えるのが妥当でしょう。
日本代表対ポーランドは無気力試合か?
バドミントンで支那や韓国の選手が無気力試合であるとして失格処分になったことも記憶に新しいと思います。これはルールでは規定されていない処置でしたが、失格処分となりました。
無気力試合とはどういうものでしょうか?
バドミントンの例で言えば、試合開始当初からわざとミスを連発するなど、試合を通して勝つ気のない行為があったということになります。
日本代表対ポーランド戦の場合、少なくとも長谷部投入の82分までは点を取りに行く方針だったのであり、実際にポゼッションし始めたのは84分以降です。これが無気力試合と表現してよいものか。言葉の意味からして疑問です。
無気力試合という表現はあたらないでしょう。
ただ、サッカー日本代表の行為がどのようにFIFAに判断されるのか分かりませんが、罰則が科されるまではいかないにしても、やはり今後の議論の対象となる行為であったことは間違いありません。
シセ監督のフェアプレーポイントへのコメント
シセ監督の以下のコメントがあります。
「我々はフェアプレーポイントの差で突破できなかった。わずかな差で、セネガルは突破できなかった。
なぜかといえば、我々はそれに値しなかったからだ。
それはルールの一つであるのだからね。我々はそれをリスペクトしなければならない。
もちろん、我々は違った形で大会を去ることを望んでいたよ。悲しいことだが、皆これがレギュレーションだとわかっていたんだ。
レギュレーションに沿った行為だから良いなどと言うつもりはありませんが、レギュレーションはレギュレーションであるというのもまた事実です。
シセ監督の振る舞いはまさしくフェアープレイを体現していると言えるでしょう。
まとめ
- 日本代表の行為はFIFA行動規範に反している可能性が極めて高い
- FIFA子供向けフェアプレーの解説にも反している可能性が極めて高い
- JFAの行動規範には明確に反している
- 日本代表対ポーランドは無気力試合と言うことはできない
日本代表には、決勝トーナメントで是非ともサッカーの魅力を表現するプレーを期待したいと思います。
追記:私は規範に反してても勝てば結果オーライだとは思いません。しかし、同時に「勝ち上がる」という大切な結果を求めなければなりません。それが厳然たる事実です。西野監督の決断は正しいとか間違ってるとかの次元を遥かに超えた大博打であって、「規範に反してるから応援しない」とか、「正統性がない」などとは思いません。
この記事も樋渡さんとのツイッター上のやりとりを通じて、「フェアプレー」を取り巻くルールにはどういうものがあるのか、それに照らした場合にどうなりそうなのかをこの事案を契機に学ぶことは良いことだと思い、書きました。そこに日本代表を貶める意図はありません。
多くの方がそうであるように、私も批判はするときもありますが、同時に、どんなときでも応援しています。
ベルギー戦もがんばれ!日本代表!
以上