事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

那覇市の孔子廟土地使用料免除は政教分離違反:最高裁が全額徴収すべきと違憲判決

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全額徴収が命じられました。

孔子廟土地使用料免除は政教分離違反で違憲判決

孔子廟の土地使用料免除は違憲 政教分離訴訟で最高裁:朝日新聞デジタル

中国の思想家で儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟(びょう)」の敷地として、那覇市が社団法人に土地を無償で使わせたのは政教分離を定めた憲法に違反するか――。この点が問われた裁判の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、「違憲」と判断した。違憲としつつ、使用料の徴収額を市に決めさせるべきだとした二審・福岡高裁那覇支部判決を破棄し、全額を徴収すべきだとした一審・那覇地裁判決を確定させた。

那覇市内にある孔子廟の土地使用料について那覇市が免除したことは政教分離原則に反する違憲な行為であるとして 原告住民が那覇市に対して社団法人に土地使用料を請求するよう請求した事案で、最高裁判決があり、賛成14対反対1で判決が確定しました。

那覇地裁・福岡高裁那覇支部も違憲判決ではあった

公園の孔子廟「土地無償提供は違憲」福岡高裁那覇支部 - 産経ニュース

那覇市は年576万円の使用料を全額免除したのですが、那覇地裁は原告の市民が監査請求した2014年4~7月の使用料を請求すべきという点につき、使用料を約180万円と算定していましたが、福岡高裁那覇支部は使用料を提示せず市に裁量があるとして市が決めるべきとしていました。

地裁も高裁も、いずれも違憲判決ではあったわけです。

原告訴訟代理人弁護士の徳永信一らによる口頭弁論要旨

那覇市孔子廟違憲住民訴訟 最高裁大法廷で審理へ(1)|弁護士 徳永信一|note

那覇市孔子廟違憲住民訴訟 最高裁大法廷で審理へ(2)|弁護士 徳永信一|note

固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件 最高裁判所大法廷口頭弁論要旨|弁護士 徳永信一|note

原告訴訟代理人弁護士の徳永信一、岩原義則、上原千可子 諸氏による事案整理と口頭弁論要旨について。

上記ページでは使用料の算定や使用料に関する市の裁量については書かれていませんが、次項に紹介する判決文にある上告理由を見ると、この点についても主張しており、これに対応する形で簡潔に最高裁の判断が示されています。

最高裁判決文全文

孔子廟最高裁判決全文



令和3年2月24日 大法廷判決 令和元年(行ツ)第222号,同年(行ヒ)第262号 固定資産税等課税免除措置取消(住民訴訟)請求事件

最高裁の判断と言えるものは、PDF5ページの「第2 令和元年(行ツ)第222号上告代理人大城浩ほかの上告理由及び同上告補助参加代理人当山尚幸,同大島優樹の上告理由について  」から11ページの裁判官林景一の反対意見の前までのものです。

「当該施設の性格,当該免除をすることとした経緯,当該免除に伴う当該国公有地の
無償提供の態様,これらに対する一般人の評価等,諸般の事情を考慮し,社会通念
に照らして総合的に判断」という判断枠組みは、過去の最高裁判例(砂川政教分離訴訟判決(空知太神社)とその差戻後上告審、津地鎮祭訴訟、愛媛県靖国神社玉串料訴訟)の趣旨と同様であるとしています。

その上で、本件免除は「本件施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても,本件免除は,一般人の目から見て,市が参加人の上記活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し,これを援助していると評価されてもやむを得ない」として憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当するとしました。

使用料については、使用料は公園条例により一義的に決定され、使用料に係る賦課決定等の行為を想定した規定は見当たらないから、公園施設設置許可がされ,所定の期間が経過することによって当然に使用料が発生する、などとして、那覇市において「本件使用料に係る債権の行使又は不行使についての裁量があるとはいえず,その全額を請求しないことは違法というほかない。」と判示しました。

なお、孔子廟の所有者は「参加人」と表記されている「一般社団法人久米崇聖会」です。宗教法人ではないという点がこれまでの政教分離訴訟と異なると言えるかもしれません。

孔子廟最高裁判決の歴史的政治的な意義

政教分離訴訟は、そのほとんどが日本人が古来より関係を有してきた神社との関連において左派勢力が原告となり展開されてきました。それが今回は、孔子廟という「土着の宗教」とは言えない宗教施設に対して疑義を呈した住民から訴訟提起されたという点で、政治的な転換点でもあると言えます。

孔子廟の本件使用料免除は、平成26年3月28日付けで本件施設に係る公園施設設置許可(は同年4月1日から平成29年3月31日まで)と同時に公園使用料の全額を免除する旨の処分が為されたものです。

当時の那覇市長は翁長雄志であり、「中国寄り」と見られてきました。

かつて山田宏議員から「知事は中国に行かれることが多いが、尖閣諸島の問題をどう話しているか?」と聞かれると、「(訪問団の主催者側から)地方自治体として交流ができるように話をしてくれと言われた。領土問題の話をすると、居場所に困る」などと発言。

同盟国である米国には『米軍基地撤去』を要求する一方でこのような態度で不法な挑発を続ける中国に抗議しないなど、不審な言動が目立ちました。

ただ、彼自身は元々自由民主党所属であり、市長経験後の沖縄県知事選挙の際に共産党の支持を受けて当選した人物であり、一面的に論じるのは危険。

なお、彼を批判する文脈で喧伝される言説の中には注意すべき点も。以下の記事参照。

沖縄の伝統まで「中国脅威論」を煽るために利用されるこの現実(安田 浩一) | 現代新書 | 講談社(3/6)

「娘2人、中国に行ったことないのに…」 翁長知事 - 沖縄:朝日新聞デジタル

以上