どういうことなの?
※当初エントリでは「役員名簿を継続的に公表する義務がある」という理解で書かれていたものを「認定の申請の際に」「一定の期間」という限定を加え、修正しています。
NPO法人ぱっぷすの役員名簿が非開示
NPO法人ぱっぷす(旧名称:特定非営利活動法人ポルノ被害と性暴力を考える会)の役員名簿が東京都によって非開示とされていました。
定款に記載されている役員の任期は定款上で平成 31年 6月 30日 までとあるので現在はすべてがこの通りではありません。
が、平成29年の事業報告書からずっと役員名簿については氏名が黒塗りとなっています。住所部分は理解しますが、役員の名前部分まで、代表者以外を黒塗りにすることが正当化されるのはいったいどういう事情があったのでしょうか?
特定非営利活動促進法では役員名簿の公表義務は時限的
特定非営利活動促進法(NPO法人法)
第十条 特定非営利活動法人を設立しようとする者は、都道府県又は指定都市の条例で定めるところにより、次に掲げる書類を添付した申請書を所轄庁に提出して、設立の認証を受けなければならない。
一 定款
二 役員に係る次に掲げる書類
イ 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿をいう。以下同じ。)
ロ 各役員が第二十条各号に該当しないこと及び第二十一条の規定に違反しないことを誓約し、並びに就任を承諾する書面の謄本
ハ 各役員の住所又は居所を証する書面として都道府県又は指定都市の条例で定めるもの
三 社員のうち十人以上の者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面
四 第二条第二項第二号及び第十二条第一項第三号に該当することを確認したことを示す書面
五 設立趣旨書
六 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
七 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
八 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書(その行う活動に係る事業の収益及び費用の見込みを記載した書類をいう。以下同じ。)
2 所轄庁は、前項の認証の申請があった場合には、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項をインターネットの利用その他の内閣府令で定める方法により公表するとともに、同項第一号、第二号イ、第五号、第七号及び第八号に掲げる書類(同項第二号イに掲げる書類については、これに記載された事項中、役員の住所又は居所に係る記載の部分を除いたもの。第二号において「特定添付書類」という。)を、申請書を受理した日から二週間、その指定した場所において公衆の縦覧に供しなければならない。
一 申請のあった年月日
二 特定添付書類に記載された事項
3 前項の規定による公表は、第十二条第一項の規定による認証又は不認証の決定がされるまでの間、行うものとする。
特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法人法)では、認定の申請の際に役員名簿の公表義務が一定期間、課せられています。その方法については内閣府令で以下定められています。
平成二十三年内閣府令第五十五号 特定非営利活動促進法施行規則
(公表の方法)
第一条 特定非営利活動促進法(以下「法」という。)第十条第二項の内閣府令で定める方法は、インターネットの利用とする。ただし、インターネットの利用に代えて、公報に掲載する方法により公表することができる。
これらはNPO法人の役員の欠格事由との関係で重要な情報です。
(役員の欠格事由)
第二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、特定非営利活動法人の役員になることができない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
三 この法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項の規定を除く。第四十七条第一号ハにおいて同じ。)に違反したことにより、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 暴力団の構成員等
五 第四十三条の規定により設立の認証を取り消された特定非営利活動法人の解散当時の役員で、設立の認証を取り消された日から二年を経過しない者
六 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として内閣府令で定めるもの(役員の親族等の排除)
第二十一条 役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が一人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の三分の一を超えて含まれることになってはならない。
ただし、28条や30条では事業所での据え置きと利害関係人からの閲覧請求の際に正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧させなければならないとある通り、継続的な公表義務は無いようです。
ぱっぷすと共に都から同一の事業委託を受けている一般社団法人Colaboにおいて、一般社団法人法上の貸借対照表公表義務違反(団体が認めている)がありましたが、こちらの状況とは異なるようです。
ぱっぷすの役員名の公表とBONDやホザナハウスなどとの比較
NPO法人ホザナ・ハウス | NPO法人ポータルサイト - 内閣府
ホザナハウスの代表である森氏は元暴力団員だったようですが、そこから離れている(薬物使用で破門されたと言われている)ために欠格事由には該当しないようです。
BONDプロジェクト | NPO法人ポータルサイト - 内閣府
ホザナハウスの内閣府ページを見ても、ぱっぷすのように「所轄庁のHP」へのリンクがありません。自治体HPを探しても、それぞれの役員名簿を掲載しているページはありませんでしたし、各団体HPでも「役員名簿」が分かる形にはなっていませんでした。
他方で、ぱっぷすは所轄庁である東京都のインターネット上のホームページに名簿を掲載しておきながら、代表者以外は非開示としている点が特異な状況です。
ぱっぷすの団体HPをみても、そこに掲載されている役員と東京都に提出している役員名簿との人数が合致していませんから、公表していない役員が存在することになります。
それとも、その役員については「公報」、つまりは東京都の発行する施政誌などに掲載されているのでしょうか?これはホザナハウスやBONDについてもこの可能性があります。
一般法人について、法人の代表者の個人の住所がネット上で閲覧できてしまうことにより、みだりに利用される事案が発生したことから、制限の必要性があり実際上も法人の住所だけがあれば良い場合がほとんどであることから、ネット上での閲覧のみ規制がかけられた経緯があります。それをネット上で拡散した議員は民事訴訟で敗訴しました。
しかし、これらのNPO法人の事例では役員の個人住所ではなく「役員の氏名」までが非開示とされていることから、非常に特異な状況です。
他のNPO法人の内閣府の公表ページをみても、個人住所欄は消しているものは見つかりますが、役員名まで消しているものは見つかりません。
これはどう評価すべきでしょうか?
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