事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

【フェイクニュース】「タイヤチェーン装着義務化」報道のデマ

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「タイヤチェーン装着義務化」という言葉が報道を飾っています。

意図的なフェイクニュースなので気を付けましょう。

国土交通省が一次ソースですのでそれを確認していきます。

タイヤチェーン装着義務化の時期と区間

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大雪時の道路交通の確保に向けた取り組みについて(チェーン規制の検討状況)では、チェーン規制の「時期」として【大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪時】という限定があります。

そして、最も重要なのが今回の「規制」の趣旨の説明です。

「従来であれば通行止めとなる状況においてタイヤチェーン装着車のみ通行を可能とするもの」

つまり、平時からチェーン装着義務化をしているのではなく、特別な状況下においてこれまでは通行止めになっていた道路を、チェーン装着している車だけが通行可能になるという、実は「通行拡大方向」への運用変更であるということです。

「規制」という言葉だけ見ると通行制限がかかるかのように考えてしまいますが、逆なのです。

これは報道発表資料でも同様の文章が掲載されています。

大雪時の道路交通確保対策の提言 中間とりまとめ

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http://www.mlit.go.jp/common/001234888.pdf

この図の「Ⅰ」の三つ目の〇部分で、「集中的な大雪時でも、通常時と比べて利用台数に大きな変化が見られないため、冬季の道路交通を取り巻く環境は非常に厳しい状況」という問題意識があります。

この認識に立ってタイヤチェーン装着車に限って通行止め区間を限定的に通行可能にしたということです。当然、チェーン装着していないと危険であり、事故によって交通に混乱をもたらしますから同時に罰則を設けるということとなったということです。

この大事な観点が、報道では全く触れられておらず、むしろ無視されています。

報道各社は時期を意図的に省いたフェイクニュース

タイヤチェーン装着義務化 全国の13区間公表 | NHKニュース

報道各社は、何故か「チェーン装着義務化区間」だけを報じており、実施される条件である「異例な大雪によって従来通行止めとなっていた区間」という点を無視しています。

このため国土交通省は、大雪が予想される際には過去に大規模な立往生が発生した区間などで、タイヤへのチェーンの装着を義務づけることにしていて、対象となる全国の13の区間を公表しました。

この記述では、通行止めとなっていたものをチェーン装着車限定で解放するという要点が伝わりません。

まるで通常利用されている道路において立ち往生が起こっているから、チェーン装着を義務付けるという、利用者に一方的に負担をかけるかのような印象を持ってしまうでしょう。

実は、11月にこの話題が持ち上がったときには、NHKはきちんと検討されている運用について、正しく報道していました。

News Up タイヤチェーン義務化 通行禁止ってほんと? | NHKニュース

つまりNHKは意図的に要点を省いて混乱させる目的で本日の記事を書いていると思わざるを得ません。

こうした報道のせいで、ネット上では「チェーン装着義務化よりもスタッドレス装着義務化が先だろ」という勘違いが多く生まれています。

まとめ:規制区間のみ報じるフェイクニュース

  1. タイヤチェーン装着義務化の条件が大雪時という限定がある
  2. 従来は大雪時に通行止めになっていた区間でチェーン装着車限定で通行可能という方針
  3. 「規制」の目的は冬季の交通混雑の緩和
  4. これらは報道発表用資料で容易に確認可能
  5. 報道機関はタイヤチェーン装着義務化の条件や運用改正の趣旨を意図的に省いて報道
  6. NHKは過去には正しく報道していることから悪質な印象操作

要するに「国は無能」という印象を与えたいのでしょう。

報道機関はこうやって印象操作に余念がないですね。

臨時国会の報道でもそうでしたが、これが憲法改正の発議の局面になったらどうなるかと思うと、ゾッとしますね。

以上