事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

高市早苗元総務大臣の暴論について:週刊文春のNTT接待疑惑記事

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高市議員による気になる記述。

高市早苗元総務大臣の暴論:週刊文春のNTT接待疑惑記事

高市早苗元総務大臣が、週刊文春における、高市総務大臣へNTTが接待していた疑惑を報じる記事について反論していますが、その一部に妙な点が。

『週刊文春』の記事は悔し過ぎる!「行政の公正性」に特に注意を払ってきた者として | 8期目の永田町から 平成29年11月~ | コラム | 高市早苗(たかいちさなえ)

大臣も副大臣も「通信事業の許認可に直接関わる」ことなど、ありません。そもそも、私達は「決裁」をしていないのですから。

  『NTT法』や『電気通信事業法』に基づく認可の中で、事業に係るものの「最終決裁」をするのは大臣や副大臣ではなく、局長です。

  上記の所管法令に基づく定常的な認可以外の「個別案件に係る軽微な認可」についても、全て局長以下の職員が最終決裁者であり、大臣や副大臣は決裁者ではなく、案件の説明すら受けていません。

  私の在任中に、唯一、大臣に認可権があるものとして決裁したのは、NTT持株会社の株主総会で決定した「取締役・監査役の選解任決議」(人事案件)のみです。

  NTTも、関連法制度はよくご存じですから、野田元大臣や私に対して事業認可など業務に係る頼み事をなさるはずもありません。

ー中略ー

尚、総務省所管の特殊法人であるNTT持株・NTT東西の「業務に係る許認可事項」の最終決裁権は、大臣にはありません(局長決裁で大臣への説明は無し)ので、会食の席でNTTから許認可等に関する依頼を受けたことは皆無です。

これらは、週刊文春のNTT接待疑惑記事に対する反論としては補足的、傍論の部分であって、文春報道との関係では本筋ではないのですが、行政の運営に関する話としては無視するわけにはいきません。

これは高市氏の暴論です。

法令上の許認可権限と組織内部の決裁権限

法令上の許認可権限と組織内部の決裁権限が別であることは多々あるのですが、それを外部に対して、自己の正当性を主張するための持ち出してはいけません。

近いところでは、たとえば検事総長の任命権者は内閣総理大臣ですが、内部ルール=慣行として、歴代検事総長の推薦によって次期検事総長が決まることになっていますが、それと似たような話です。

日本電信電話株式会社法上の総務大臣の権限

NTTは特殊法人なので、その組織の基本的な規律等を含めて【日本電信電話株式会社等に関する法律】とその政省令において規定されています。

この中でも、総務大臣が最終的な権限を有していることが書かれているだけで、「局長」など出る幕もありません。

高市早苗議員の狙いは?

「決裁権限」の部分がなくとも、NTT接待疑惑に対する反論として十分成立するのに、なぜ高市早苗議員は、あのような記述を盛り込んだのでしょうか?

「現状では役人に強大な権限委譲がなされており、国民代表の政治家がもっとイニシアティブをとらなければならない」という議論を喚起する目的で身を切ったのでしょうか?

利害関係者との会食に際して、用意周到に接待にならないように準備をしてきた高市議員がこういう論じ方をするのには、何か意味があるんでしょうか?

いずれにしても、これを機に、行政組織と国民代表の議員らとの関係について見直す必要があるのではないでしょうか?

以上