事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

朝日新聞vs飛鳥新社,小川栄太郎裁判の判決文:金銭的に朝日の大敗

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ぐっだぐだの訴訟。

朝日新聞vs飛鳥新社,小川栄太郎裁判の判決文

小川榮太郎氏ならびに飛鳥新社に対する訴訟の判決について | 朝日新聞社インフォメーション

朝日新聞のサイトにおいて、訴訟経緯も含めて判決文がUPしています。

東京地方裁判所 令和3年3月10日判決 平成29年(ワ)第43360号

飛鳥新社発行・小川栄太郎 著作の『徹底検証「森友・加計学園事件」』において、朝日新聞に関する名誉毀損表現があったとする訴訟でした。

謝罪広告無し、訴訟費用の大半が原告(朝日新聞)負担

判決は、飛鳥新社と小川栄太郎 氏に対して、連帯して200万円の支払いを命じましたが、朝日新聞の元々の請求は5000万円であり、名誉毀損訴訟の「勝訴」の中でも最低レベルの金額でしょう(近年は賠償額のレートが上がっている。「ロス疑惑」事件にかかる三浦和義氏による名誉毀損訴訟の際は100万円が相場だった)。

また、謝罪広告の掲載を朝日新聞は求めていましたが、これは認められませんでした。

さらに、訴訟費用については【訴訟費用は、これを30分し、その29を原告の負担とし】とあるように、勝訴した朝日新聞がほぼすべてを負担することになっています。

ちなみに「訴訟費用は、これを30分し、その29を原告の負担とし」というのはフジ住宅訴訟で原告従業員が勝訴した際も同じでした。

金銭的には朝日の実質的敗訴、内容面では…

要するに、金銭的には朝日新聞の実質的敗訴です。

内容面では、朝日が面目を保ち、飛鳥新社・小川側は主張の粗さを指摘されたという所でしょうか。

小川側は書籍において「朝日は加計学園問題の捏造をした・朝日は〇〇について一切報じていない」と断言しています。

「朝日は加計学園問題を捏造した」については、そのような事実が認められる証拠は積みあがってないとされました。

「朝日は〇〇について一切報じていない」という部分の小川側の主張する趣旨は「本来報じるべき中核的内容を報じず、報じたふりをしている」というものでしたが、裁判所はこれは「捏造」の例示という位置づけであると判断したため、その主張自体の純粋な正当性は判断されませんでした。

つまり、あの書籍の書き方如何によっては、小川側の主張は相当性が認められたかもしれないということ。断定するなら証拠を積みましょう、ということで、私は判決の結果に違和感は無いです。

判決文の問題点

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もっとも、判決文の中で疑問な点もありました。

28頁では加計問題の疑惑に根拠が無いという認識を朝日新聞が持っていたという小川側の主張に根拠がないとする事情として、「現に野党議員からは、政府が加計学園に特別の便宜を図ろうとしたのではないかとの指摘があったことが認められる」という点を考慮しています。

「いやいやいや、今の野党が質疑してるからって報道機関の認識が正当である認定方向の資料に使うのはマズいですよ!」と思います。

彼らがネタ元にしているのは週刊誌であったり新聞による誤報をベースとした記事によるものの場合があるのですから、「野党議員から指摘があった」を根拠にするのではなく、その主張の中身を論じないと意味がありません

こういう論じ方を裁判所がしてはダメだろうと思うのです。

まとめ

  1. 5000万円の請求中、200万円の支払いが認められた
  2. 謝罪広告の掲載も請求していたが、認められなかった
  3. 訴訟費用の30分の29は勝訴した朝日新聞が負担(通常は敗訴者負担)

小川栄太郎 氏はこんなことを言ってますが、未だに判決文を公開せず、何をしてるんでしょうか?こういう訴訟の場合、左派は敗訴をしても判決文を公開していますが(植村隆の裁判HPを見よ)、その点だけはフェアだと思っている所、それと対立する側はそうではないのは、私は不満です(フジ住宅も判決文自体をHPに掲載していない)。

ところで、同じ飛鳥新社からは財務省「文書改竄」報道と朝日新聞 誤報・虚報全史【電子書籍】も出版されていますが、これについては何も無いようです。

以上

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