どう整合性がつけられているんだろうか?
- 公立・福岡女子大学が男(トランスジェンダー)の受け入れ表明
- 1年次は全寮制が義務付け:トランスジェンダー対応へ
- トランスジェンダーと性同一性障害と性分化疾患の違い
- 10年前に狙われていた福岡女子大学:男性が入学できないと訴訟提起
- 公立大学の法律関係と女子大学に男性を入学させることの法的整合性
- 1年次は全寮制という強制的なプライベート空間への侵襲の問題
- 刑事収容施設の法律と法務省通達、公衆浴場と旅館業への厚労省通知は「男女を区別」
- まとめ:法秩序全体の問題、少なくとも説明責任が果たされるべき事柄
公立・福岡女子大学が男(トランスジェンダー)の受け入れ表明
2029年度入学(2028年度受験)から、トランスジェンダー学生を受け入れます | 公立大学法人 福岡女子大学 お知らせ 2025.07.03
2029年度入学(2028年度受験)から、トランスジェンダー学生を受け入れます | 公立大学法人 福岡女子大学 プレスリリース 2025.07.03
公立大学法人福岡女子大学が、2029年度入学者から、トランスジェンダーたる戸籍上・身体上・生物学上・遺伝学上の男性を受け入れると表明しました。
1 受け入れの対象となるトランスジェンダー学生の定義
出生時の戸籍は男性で、ジェンダーアイデンティティは女性である学生。2 受け入れ開始時期
2028年度に本学を受験し、2029年度に入学する学生から受け入れを開始。
なお、既に国立大学としてお茶の水女子大学と奈良女子大学がともに2020年度からトランスジェンダーたる男性の受け入れ制度を施行しています(受け入れ実績は不明)。
1年次は全寮制が義務付け:トランスジェンダー対応へ
今後の予定
2026年秋に受け入れガイドライン及び出願資格審査手続を公表する予定です。また、本学入学後の1年次に義務付けている全寮制教育への対応、相談体制の構築など、トランスジェンダー学生を含む本学の全ての女子学生が共に学ぶための環境整備を進めてまいります。
福岡女子大学の特徴として、1年次は教育の一環として全寮制が敷かれているということがありますが、トランスジェンダーたる男性受け入れ後も、この方針は変わらないようです。
※※7月7日追記※※
宙に浮くトイレ問題 トランスジェンダーを全寮制の福岡女子大で受け入れ、寮は完全分離 - 産経ニュース2025/7/7 11:30
大学によると、全寮制教育はグローバル化に対応する人材育成のため、平成23年春から導入。日本人学生と留学生の4人がそれぞれ個室付きの4LDKの部屋をルームシェアする形で生活している。トランスジェンダーの学生の受け入れについて、学生側から寮生活への不安の声も寄せられたが、「個室整備の方針を説明している」という。
この方針がそのまま実施されるのであれば、疑問の多くは解消されます。
※※追記終わり※※
トランスジェンダーと性同一性障害と性分化疾患の違い
ここで、「トランスジェンダー」*1と『性同一性障害』と【性分化疾患】の違いを簡単に整理しておきます。これらの混同が意図的に行われてきたこと、混同した理解がそれぞれの者にとっての深刻な負担となる場合があるからです。
性同一性障害は、「身体違和があること」がトランスジェンダー一般と異なります。そうした人もトランスジェンダーと呼ばれることがありますが、本来的には分けるべきです。
性別取扱変更(※性別変更ではない)まで行っている性同一性障害者は、2023年以前の者は100%手術を受けています。対して、単なるトランスジェンダーは、そうではありません。
そして、性分化疾患(DSD)は、それらとは一線を画すもので、「性染色体、性腺、内性器、外性器のいずれかが非定型的な先天的体質」を指す用語です。ただ、「第三の性」なるものではなく、男性と女性のどちらの要素が強く出ているかどうかの話です。性分化疾患は、性自認とは無関係です。
「トランスジェンダーだ」と言われて、その真偽はどのように判定するのでしょうか?
福岡女子大学の基準では、主観的な自己評価としての性自認が女性であるというだけで認定されてしまいますが、その判定はどのようにするのでしょうか?
さて、実は福岡女子大学、10年前から「狙われて」いました。
10年前に狙われていた福岡女子大学:男性が入学できないと訴訟提起
2015年に福岡女子大学に対して男性が入学できないとして訴訟提起していた事件があり、報道もされています。
「女子大の存在理由が揺らいでいる」公立女子大に入学したい「男性」の弁護士に聞く
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2025年7月4日
2015年02月04日 11時03分
公立大学における女子大学の存在=アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)の違憲性を問う予定だったらしいhttps://t.co/8tTo7MFDxj
が、この訴訟は取り下げられています。
要は原告は「経済的な理由で私立に行けない」「訴訟救助を申し立てた」にもかかわらず、経済的な窮状を裁判官に納得させることができなかったようだ。ちなみに弁護士費用は法テラスによる援助を申請して、こちらは認められている。
つまり違憲を争う前に、元々の「経済的理由で私立に行けないから男性だが公立女子大を受けさせろ」という大前提が崩れてしまった。裁判所は、原告の生活状況、資産状況を示す資料の提出を求めたが、ほとんど資料の提出をしなかったとのこと。これでは本当に女子大に進学する気があるのか疑われても仕方あるまい。
このような男性が、今度は「性自認が女性である」として応募してきたら、認めるんでしょうか?という疑問が呈されるのも自然のことでしょう。
公立大学の法律関係と女子大学に男性を入学させることの法的整合性
では、福岡女子大学の件で陳情をするとすれば、どこに行うべきなんでしょうか?
*1:トランスジェンダーとは、「出生時に割り当てられた性と一致しない性自認を持つ人々」というのが、中核的な意義です。ノンバイナリーも含まれます。性自認というのは、自己の性別の主観的認識です。
が、活動家らによってアンブレラタームとしての意義が拡散されて来ました。
アンブレラタームとしてのトランスジェンダーいうのは、何でもかんでもトランスジェンダーの名の下に、その言葉の意味の内に含めるということで、たとえば女装・男装趣味者である「クロスドレッサー」(「トランスヴェスタイト」(主に男性が女性の服装を着用することで性的興奮を伴う者)と呼ばれることもある)、女装までせずとも男性が自分自身を女性だと想像することで性的興奮を覚える「オートガイネフィリア」、第三の性としてのアイデンティティのある人々なども含まれていました。
が、その定義は都合よく揺れ動いてきており、アンブレラタームとしてのそれらは、いまでは「Q+」=「Queer+」という表記で言い表されるようになっています。
次に、性同一性障害者 (Gender Identity Disorder: GID)というのは、医学上は「身体の性と心の性(性自認,ジェンダーアイデンティティ)とが一致していない状態」と説明されてきました。
法的には「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」を指します。
医学上の用語法は性別違和 (Gender Dysphoria)や性別不合 (Gender Incongruence)という言葉に置き換えられつつありますが、『身体の性が心の性と一致していないことに強い違和感を有する状態』を指す、というのが最も簡略化した説明です。