「WHOが新型コロナウイルスを空気感染に分類」はデマです。
「WHOが新型コロナウイルスを空気感染に分類」というデマ
どうやら「WHOが新型コロナウイルスを空気感染に分類」というデマの拡散者は、2月8日に公表されたNovel Coronavirus(2019-nCoV) Situation Report – 19というレポートの以下の文言を根拠にしているようです。
"Implementing empiric additional precautions (droplet and contact and, whenever applicable, airborne precautions) for suspected cases of 2019-nCoV infection"
"airborne precautions"に「該当する場合には」
droplet and contact and, whenever applicable, airborne precautions
飛沫(感染)予防、接触(感染)予防、そして該当する場合には空中(感染)予防
未だ全容が解明されていない新型コロナウイルスについて、1月25日時点でいろんな状況に対応できるようにしましょうと言ってたに過ぎません。
この部分をもって「WHOが新型コロナウイルスについて空気感染をすると認定した」と理解するのは不可能です。よって、デマです。
医療機関に対するレポート
上記の扱いは、上記レポート内で参照しているIPC strategies=感染症の予防と管理の手順として、1月25日にリリースされた「新規コロナウイルス(nCoV)感染が疑われる場合の医療中の感染予防と管理」を元にしています。
Novel Coronavirus (2019-nCoV) technical guidance
3.2 Airborne precautions for aerosol-generating procedures
Some aerosol-generating procedures have been associated with an increased risk of transmission of coronaviruses (SARS-CoV and MERS-CoV), such as tracheal intubation, non-invasive ventilation, tracheotomy, cardiopulmonary resuscitation, manual ventilation before intubation, and bronchoscopy.
エアロゾルを発生させる方法に対する空中(感染)予防
いくつかのエアロゾルを発生させる方法は、コロナウイルス(SARSやMERS)の伝播リスクの増加と関連しています。たとえば気管挿管、非侵襲的人工呼吸器、気管切開、心肺蘇生、挿管前の用手換気、および気管支鏡検査など。
要するに医療機関が治療にあたって考慮するべき点を述べているに過ぎず、それはエアロゾルを発生させるような特殊な方法を行った場合に限定されていることが分かります。
一般人に対して注意喚起しているものではありません。
エアロゾル感染と空気感染はまったく別物です。
まとめ:一部の記述に「脊髄反社」してるだけ
「WHOが空気感染すると言っている」はデマです。WHOの2/8のレポートが根拠のようですが、空気感染対策しろというのは診察やケアでの濃厚接触や飛沫が飛びまくる気管支鏡検査をする医療従事者に対する話の部分で、一般市民向けに書いてませんよ。一部だけ取ってきて空気感染だと騒ぐのはやめましょう。
— EARLの医学ツイート (@EARL_Med_Tw) 2020年2月10日
「エアロゾル感染」(エアロゾル伝播)についても、医療従事者が機材を使用した際に発生する可能性のある現象として注意書きされているに過ぎないものを、まるで一般的に発生しているかのように言及する人が居ました。
エアロゾル感染は空気感染=飛沫核感染と別:飛沫感染と何が違うのか
医療従事者向けの情報を一般向けと曲解し、さらに内容をまともに見ずに"airborne"という単語の有無で「脊髄反社」するのはやめましょう。社会に害を為す行為です。
以上