米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟についての整理
黒瀬深、スクリーンネームの変遷:r8eru⇒Shin_Kurose⇒Fuka_Kurose - 事実を整える
- 原告訴訟代理人として発信者情報開示請求
- 誤解が生じた原因は米山弁護士のツイートだが
- どのツイートが誰の名誉毀損?室井佑月と推測されているが…
- 米山隆一が訴訟代理人の黒瀬深の名誉毀損訴訟の経過
- 米山隆一本人が原告の黒瀬深の中の人+リツイート者への訴訟予定
- 神戸市議会議員岡田ゆうじ氏「スラップ訴訟・恫喝訴訟」主張は和解
- 依頼人の事件で得た発信者情報を自己の名誉毀損訴訟で利用は適法?
- 開示を受けた者は依頼人、目的外利用だけでは「みだりに」ではない
- まとめ:米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟・発信者情報開示請求の整理
原告訴訟代理人として発信者情報開示請求
尚繰り返しですが、私は依頼人の依頼を受け、ツイッター社に発信者情報開示請求を行っただけであり、黒瀬氏に対し直接何か言ったことはありませんというか、そもそも黒瀬氏なるアカウントの発信者情報が分らないから開示請求をしたのであり、何か言えるはずもありません。
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2020年12月4日
最初に重要な前提の確認ですが、米山氏は原告の訴訟代理人として発信者情報開示請求等の訴訟追行をしています。
米山隆一本人として訴訟提起しているわけではないということです。
誤解が生じた原因は米山弁護士のツイートだが
この誤解が生じたのは、米山氏のツイートの記述が一見すると代理人としての記述ではないかのようなものがあったためと思われます。
言わずもがなですが、発信者情報開示の請求を出したのは私ですが、その仮処分命令は双方審尋の上裁判所が発令しています。これがファシズムだというならそれは私ではなく、黒瀬アカウントが正当化してやまない日本政府(三権分立は当然の前提として)がファシズム化しているという事になります。 pic.twitter.com/yLcBg7eOXO
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2020年9月28日
「発信者情報開示の請求を出したのは私ですが」というのは、訴訟事務の遂行として請求書を書いて送付したという意味ですが、他のツイートでも明確化していないため、誤解する人が出たのはやむを得ないと思われます。
この日のうちに別肢で自分自身が請求をしているのではない旨をツイートしていますが見ない人も多いだろう
その上で、このような記述になったことも理解できます。
引用元のツイートが「訴訟提起はファシズム化だ」という主張であったことから、「誰がファシズム化しているのか」という観点から裁判所と原告側を対比する形で書いていますし、米山氏が批判を受けている場面で原告本人を強調する意味も無いからです。
この前提を理解しないと一連の動きは把握できません。
どのツイートが誰の名誉毀損?室井佑月と推測されているが…
米山氏はどのツイートが名誉毀損なのかは明確にしていません。
が、IPアドレスの開示が「2020年5月30日以降のもの」という指定があります。
事実関係を明確にする為、発信者情報開示の仮処分決定を公開いたします。私は債権者代理人弁護士として、ツイッターインクに対し仮処分を申し立て、日本最大事務所の一つが債務者代理人を受任して双方審尋の上こちらの主張が認められました。これを「不当」などと言う人は法治主義を否定する人です。 pic.twitter.com/7LJ4vdK9Wk
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2020年9月29日
このことから、以下のツイートが原因ではないかと推測されています。
※2021年9月に「@Fuka_kurose」にスクリーンネームを変更しています。
※従前の「@Shin_kurose」や「@R8eru」は別人が使用しているようです。
米山隆一が訴訟代理人の黒瀬深の名誉毀損訴訟の経過
本日4時に、黒瀬深と言うアカウントについて、ツイッター社に発信者情報開示の仮処分命令が発令されたことをご報告致します。
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2020年9月28日
これは第一歩にすぎませんが、粛々と手続きを進め、適切な言論環境の確立を目指したいと思います。
東京地方裁判所に継続しておりましたツイッター上の「黒瀬深」なるアカウントについての発信者情報開示請求訴訟において、去る5月25日にプロバイダーに対して発信者情報の開示を命ずる判決が下されておりますことをご報告致します。実際の開示・裁判はこれからですが、粛々と手続きを進めて参ります。
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2021年6月9日
- 発信者情報開示請求訴訟vsツイッターインク社⇒2020年9月28日、認容
- 発信者情報開示請求訴訟vsプロバイダー社⇒2021年5月25日、認容
- 名誉毀損訴訟vs黒瀬深(の中の人)⇒予定
さて、米山氏が訴訟代理人弁護士として振る舞っている、黒瀬深との名誉毀損訴訟の経過ですが、いわゆる「本番」はこれからです。
これまでの中で、黒瀬深の中の人が何らかの訴訟行為をする必要は全くありません。
ツイッターインク社やプロバイダー社の従業員や顧問弁護士等が動くだけです。
通常このような場合、運営会社から開示請求があったことの通知が行くことが多いですが、悪質な場合には事後的な通知になる可能性があるようです。
また、この様な法的請求がなされた時、ツイッター社は対象アカウントにその旨を通知します(通知されないのは極めて悪質な時です)。黒瀬深アカウントの「中の人」は「通知はない」と言い張っていますが、それはツイッター社の運用上有り得えませんし、仮に本当なら余程悪質とされた事になります。 https://t.co/YWwkQ65OHX pic.twitter.com/WiwGPwVa6W
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2020年9月29日
発信者情報開示請求訴訟の流れは誤解がありますが、必ずしも一発で発信者の「特定」が出来るわけではなく、2段階を踏む必要がある場合が多いという事情があります。
なお、令和3年に改正され、来年秋ごろに施行予定の改正プロバイダ責任制限法によって、2段階を踏まなくても済む場合が新設されました。
令和3年改正プロバイダ責任制限法の影響度と実務対応 - 新たな裁判手続の創設、ログイン型投稿への対応、意見聴取義務 - BUSINESS LAWYERS
日本における2021年プロバイダ責任制限法改正について | One Asia Lawyers
米山隆一本人が原告の黒瀬深の中の人+リツイート者への訴訟予定
「黒瀬深」アカウントの誹謗中傷は余りに度を越していますので、追加の名誉毀損訴訟についても検討しております。匿名の陰に隠れて好き勝手をされていた方には、自らの言論から当然生じる全責任をとって頂く所存です。
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2021年6月9日
尚、誤情報の安易な拡散を防ぐために、「黒瀬深」アカウントの方に対する裁判と並行して、当該TWをRTされた方についても、法的手続きを開始させて頂く事を、申し添えさせて頂きます。
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2021年6月9日
米山隆一が本人として原告となる黒瀬深(の中の人)+黒瀬深の名誉毀損をしたツイートのリツイートをした者への名誉毀損訴訟の予定があるようです。
「リツイートをした者への名誉毀損訴訟」が認められるかどうかが問題になった事件として、橋下徹氏原告の訴訟がありましたが、認容されています。
大阪高等裁判所判決 令和2年6月23日 令和1(ネ)2126
大阪地方裁判所判決 令和元年9月12日 平成30(ワ)1593
神戸市議会議員岡田ゆうじ氏「スラップ訴訟・恫喝訴訟」主張は和解
なお、関連して神戸市議会議員の岡田ゆうじ議員が「スラップ訴訟・恫喝訴訟」と主張し、米山氏との間で争いが生じましたが、和解が成立しています。
【和解に関するご報告】
— 神戸市会議員 岡田ゆうじ🛡️ (@okada_tarumi) 2021年3月26日
昨年9月、私が元新潟県知事の米山隆一様に対し、「米山氏はSLAPP訴訟・恫喝訴訟を行っている」と主張するツイートをしたことを受け、米山様から提訴された件について、私から謝罪を申し上げる機会を得、和解協議が合意に至り、和解が成立したことをご報告させていただきます。
依頼人の事件で得た発信者情報を自己の名誉毀損訴訟で利用は適法?
尚、ネット中傷に対し発信者情報を用いて訴訟を行った原告代理人弁護士を、被告が中傷した事案において、当該発信者情報を用いて、当該弁護士が、当該被告に損害賠償請求を行った訴訟において、当該弁護士が勝訴した判決が下されております。https://t.co/ebWbZULQNM
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2021年6月9日
さらに、米山氏への名誉毀損として米山氏自身が原告となり黒瀬深(の中の人)を提訴する可能性も示唆しています。
弁護士が依頼人の事件で得た発信者情報を自己の名誉毀損訴訟で利用するのは適法か?
東京高裁令和2年9月17日判決 令和2年(ネ)222号にて適法と認定されました。
この判決は、弁護士が第一審原告として第一審被告を名誉毀損で訴えたところ、第一審被告が、弁護士がプロバイダ責任制限法=【特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律】に違反して発信者情報を利用したために権利侵害を受けたとして提訴したという2つの事件を扱ったものです。
この事件は平成24年10月31日のツイートに「懲戒請求された悪徳弁護士」と書いたことが名誉毀損とされました。※なので黒瀬深事案とは無関係。
懲戒請求はいつでも誰でも行え、その請求内容が審査された上で懲戒処分が下されるわけですから、懲戒請求されたというだけで悪徳と評されるのは明らかに不当ですから、この結論は妥当と言えるでしょう。
なお、ツイート時点では未だ懲戒請求がなされておらず、ツイート後に被告が懲戒請求書を発送して翌週に弁護士会に到達したことが認定されているところ、被告は「懲戒請求が為された時期は本件投稿の重要な部分ではない」旨の主張をしたものの退けられています。
開示を受けた者は依頼人、目的外利用だけでは「みだりに」ではない
東京高裁令和2年9月17日判決 令和2年(ネ)222号の判示内容について。
被告は、原告は以下の規定に違反していると主張されました。
(発信者情報の開示請求等)
第四条 省略
3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
この主張は一審の横浜地裁(令和元年12月11日判決)では認められましたが、控訴審の東京高裁判決では逆に以下の法理を前提に適法であるとされました。
- 「開示を受けた者」は依頼人であり、代理人の弁護士ではないから、同規定の義務を負わない
- 単に目的外利用をしただけでは「みだりに用いて不当に~害する行為」をしたことにはならない
その上で、この事件の弁護士は依頼人から同意を得て発信者情報を利用し、被告のネット上の発信によって生じた自己の損害賠償請求権を行使するために使用したという事情から、「みだりに~害する行為をした」とは言えないとされました。
発信者情報開示請求の目的は、加害者の特定不能による被害回復困難を解消するためであるから、当該弁護士の利用方法はまさにこの目的に合致していると言えます。
この判断の意義は、横浜地裁の理屈では、ある集団に属する複数名に対して誹謗中傷が行われた場合で、何らかの事情で集団に属する1人しか開示請求をおこなうことができないときに、他の被害者が一切、開示された発信者情報を利用できないことや、別の人が開示を受けた情報を利用しなければ発信者が特定できないようなケースにおいて不合理な結論となるところ、その憂いが無くなったことなどが指摘されています。
高裁で逆転したネット中傷「悪徳弁護士」事件、発信者情報が「別の裁判で証拠にできる」意義 - 弁護士ドットコム
まとめ:米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟・発信者情報開示請求の整理
- 米山氏は現時点まで、本人ではなく依頼人の訴訟代理として振る舞っている
- 問題とされるツイートは2020年5月30日以降のもの
- 室井佑月に関するものではないかと推測されているが、詳細は不明
※追記:後に米山氏本人が室井佑月が原告であることを認めるツイートをしている - 発信者情報開示請求訴訟1 vsツイッター社⇒2020年9月28日、認容
- 発信者情報開示請求訴訟2 vsプロバイダー社⇒2021年5月25日、認容
- 今後、「本番」の名誉毀損訴訟vs黒瀬深(の中の人)の予定
- 黒瀬深の他の発信やリツイート者も対象にした名誉毀損訴訟も予定
- さらに、米山氏自身が原告となる名誉毀損訴訟も示唆されている
今回、私がこの事案を整理したのは、この種の事案における訴訟の経過に関する一般的な誤解がある上に、黒瀬深側が不合理な発信を繰り返しているため、誤解によって多くの人が不用意な発信をするおそれがあり、更なる争いに巻き込まれる可能性を危惧したからです。
事実関係を整理すれば、誰のどの発言が正当なのか否かが自ずと視えてくるでしょう。
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