事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟・発信者情報開示請求のまとめ

米山隆一と黒瀬深の名誉毀損訴訟

米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟についての整理

原告訴訟代理人として発信者情報開示請求

最初に重要な前提の確認ですが、米山氏は原告の訴訟代理人として発信者情報開示請求等の訴訟追行をしています。

米山隆一本人として訴訟提起しているわけではないということです。

誤解が生じた原因は米山弁護士のツイートだが

この誤解が生じたのは、米山氏のツイートの記述が一見すると代理人としての記述ではないかのようなものがあったためと思われます。

「発信者情報開示の請求を出したのは私ですが」というのは、訴訟事務の遂行として請求書を書いて送付したという意味ですが、他のツイートでも明確化していないため、誤解する人が出たのはやむを得ないと思われます。
この日のうちに別肢で自分自身が請求をしているのではない旨をツイートしていますが見ない人も多いだろう

その上で、このような記述になったことも理解できます。

引用元のツイートが「訴訟提起はファシズム化だ」という主張であったことから、「誰がファシズム化しているのか」という観点から裁判所と原告側を対比する形で書いていますし、米山氏が批判を受けている場面で原告本人を強調する意味も無いからです。

この前提を理解しないと一連の動きは把握できません。

どのツイートが誰の名誉毀損?室井佑月と推測されているが…

米山氏はどのツイートが名誉毀損なのかは明確にしていません。

が、IPアドレスの開示が「2020年5月30日以降のもの」という指定があります。

このことから、以下のツイートが原因ではないかと推測されています。

黒瀬深、室井佑月

魚拓1 

 

米山隆一が訴訟代理人の黒瀬深の名誉毀損訴訟の経過

  1. 発信者情報開示請求訴訟vsツイッターインク社⇒2020年9月28日、認容
  2. 発信者情報開示請求訴訟vsプロバイダー社⇒2021年5月25日、認容
  3. 名誉毀損訴訟vs黒瀬深(の中の人)⇒予定

さて、米山氏が訴訟代理人弁護士として振る舞っている、黒瀬深との名誉毀損訴訟の経過ですが、いわゆる「本番」はこれからです。

これまでの中で、黒瀬深の中の人が何らかの訴訟行為をする必要は全くありません。

ツイッターインク社やプロバイダー社の従業員や顧問弁護士等が動くだけです。

通常このような場合、運営会社から開示請求があったことの通知が行くことが多いですが、悪質な場合には事後的な通知になる可能性があるようです。

発信者情報開示請求訴訟の流れは誤解がありますが、必ずしも一発で発信者の「特定」が出来るわけではなく、2段階を踏む必要がある場合が多いという事情があります。

なお、令和3年に改正され、来年秋ごろに施行予定の改正プロバイダ責任制限法によって、2段階を踏まなくても済む場合が新設されました。

令和3年改正プロバイダ責任制限法の影響度と実務対応 - 新たな裁判手続の創設、ログイン型投稿への対応、意見聴取義務 - BUSINESS LAWYERS

日本における2021年プロバイダ責任制限法改正について | One Asia Lawyers

米山隆一本人が原告の黒瀬深の中の人+リツイート者への訴訟予定

米山隆一が本人として原告となる黒瀬深(の中の人)+黒瀬深の名誉毀損をしたツイートのリツイートをした者への名誉毀損訴訟の予定があるようです。

「リツイートをした者への名誉毀損訴訟」が認められるかどうかが問題になった事件として、橋下徹氏原告の訴訟がありましたが、認容されています。

大阪高等裁判所判決 令和2年6月23日 令和1(ネ)2126

大阪地方裁判所判決 令和元年9月12日 平成30(ワ)1593

神戸市議会議員岡田ゆうじ氏「スラップ訴訟・恫喝訴訟」主張は和解

なお、関連して神戸市議会議員の岡田ゆうじ議員が「スラップ訴訟・恫喝訴訟」と主張し、米山氏との間で争いが生じましたが、和解が成立しています。

 

依頼人の事件で得た発信者情報を自己の名誉毀損訴訟で利用は適法?

さらに、米山氏への名誉毀損として米山氏自身が原告となり黒瀬深(の中の人)を提訴する可能性も示唆しています。

弁護士が依頼人の事件で得た発信者情報を自己の名誉毀損訴訟で利用するのは適法か?

東京高裁令和2年9月17日判決 令和2年(ネ)222号にて適法と認定されました。

この判決は、弁護士が第一審原告として第一審被告を名誉毀損で訴えたところ、第一審被告が、弁護士がプロバイダ責任制限法=【特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律】に違反して発信者情報を利用したために権利侵害を受けたとして提訴したという2つの事件を扱ったものです。

この事件は平成24年10月31日のツイートに「懲戒請求された悪徳弁護士」と書いたことが名誉毀損とされました。※なので黒瀬深事案とは無関係。

懲戒請求はいつでも誰でも行え、その請求内容が審査された上で懲戒処分が下されるわけですから、懲戒請求されたというだけで悪徳と評されるのは明らかに不当ですから、この結論は妥当と言えるでしょう。

なお、ツイート時点では未だ懲戒請求がなされておらず、ツイート後に被告が懲戒請求書を発送して翌週に弁護士会に到達したことが認定されているところ、被告は「懲戒請求が為された時期は本件投稿の重要な部分ではない」旨の主張をしたものの退けられています。

開示を受けた者は依頼人、目的外利用だけでは「みだりに」ではない

東京高裁令和2年9月17日判決 令和2年(ネ)222号の判示内容について。

被告は、原告は以下の規定に違反していると主張されました。

(発信者情報の開示請求等)
第四条 省略
3 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない

この主張は一審の横浜地裁(令和元年12月11日判決)では認められましたが、控訴審の東京高裁判決では逆に以下の法理を前提に適法であるとされました。

  1. 「開示を受けた者」は依頼人であり、代理人の米山弁護士ではないから、同規定の義務を負わない
  2. 単に目的外利用をしただけでは「みだりに用いて不当に~害する行為」をしたことにはならない

その上で、この事件の弁護士は依頼人から同意を得て発信者情報を利用し、被告のネット上の発信によって生じた自己の損害賠償請求権を行使するために使用したという事情から、「みだりに~害する行為をした」とは言えないとされました。

発信者情報開示請求の目的は、加害者の特定不能による被害回復困難を解消するためであるから、当該弁護士の利用方法はまさにこの目的に合致していると言えます。

この判断の意義は、横浜地裁の理屈では、ある集団に属する複数名に対して誹謗中傷が行われた場合で、何らかの事情で集団に属する1人しか開示請求をおこなうことができないときに、他の被害者が一切、開示された発信者情報を利用できないことや、別の人が開示を受けた情報を利用しなければ発信者が特定できないようなケースにおいて不合理な結論となるところ、その憂いが無くなったことなどが指摘されています。

高裁で逆転したネット中傷「悪徳弁護士」事件、発信者情報が「別の裁判で証拠にできる」意義 - 弁護士ドットコム

まとめ:米山隆一と黒瀬深に関する名誉毀損訴訟・発信者情報開示請求の整理

  1. 米山氏は現時点まで、本人ではなく依頼人の訴訟代理として振る舞っている
  2. 問題とされるツイートは2020年5月30日以降のもの
  3. 室井佑月に関するものではないかと推測されているが、詳細は不明
  4. 発信者情報開示請求訴訟1 vsツイッター社⇒2020年9月28日、認容
  5. 発信者情報開示請求訴訟2 vsプロバイダー社⇒2021年5月25日、認容
  6. 今後、「本番」の名誉毀損訴訟vs黒瀬深(の中の人)の予定
  7. 黒瀬深の他の発信やリツイート者も対象にした名誉毀損訴訟も予定
  8. さらに、米山氏自身が原告となる名誉毀損訴訟も示唆されている

今回、私がこの事案を整理したのは、この種の事案における訴訟の経過に関する一般的な誤解がある上に、黒瀬深側が不合理な発信を繰り返しているため、誤解によって多くの人が不用意な発信をするおそれがあり、更なる争いに巻き込まれる可能性を危惧したからです。

事実関係を整理すれば、誰のどの発言が正当なのか否かが自ずと視えてくるでしょう。

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