名護市長選挙で現職の稲嶺進市長が落選し、とぐち武豊(渡具知武豊)さんが当選しました。その際に、名護市は辺野古の基地問題よりも地元民の生活問題が発生しているということが言われていました。
名護市のごみ廃棄の現状
名護市という人口6万人程の自治体での話ではありますが、同じような問題を抱えている、あるいは同様の事態に陥る危険のある自治体は結構あるのではないかと思います。
そこで、名護市をいわばケーススタディとしてその現状と原因を整理していきます。特に、データの見方については角度を変えて検討していきます。
いやぁ、私は都民なんですが、いろいろと参考になる情報がありました。
ごみの最終処分場への放置
投稿者:沖縄県本部公明党
2016年12月から2018年2月現在まで未解決!これは大変ですね。
ごみ袋の有料化:家庭用ごみ袋の費用は高いのか?
よく使われる家庭用30Lと45Lがそれぞれ360円と540円。
ちなみに、どの自治体も指定ごみ袋の値段は10枚一組の金額か、1枚当たりの金額を表示しています。
東京都の場合:東京の指定ごみ袋の料金は高い!?指定ごみ袋の値段を調査!
東京23区には現在は指定ごみ袋はありません。都内の他市を見ると、東京都の方が名護市よりも高い自治体が多いということがわかります。
私が23区内に住んでいたときはこちらにお世話になりました。
では、沖縄の他都市と比べて高いのか?【 平成23年第162回名護市定例会-03月09日-04号 】P.128 ◎ 市民環境部長(岸本健君)によると、沖縄県内の9市と名護市の比較が述べられています。
県内本島9市の平均を比較しますと、袋1枚当たりの単価として約37%割高になっておりますが、本市では有料ごみが4品目、他市では有料ごみは9品目から16品目あります。9市の場合ですが、無料で取り扱うごみは1品目から6品目になっております。そのことにより標準世帯一世帯における1カ月当たりの指定袋の使用枚数を排出ごみ量から算出しますと、指定袋の使用枚数は他市は本市より約5割ほど多く使用していることになります。また一世帯一月の負担額を試算してみますと、本市の場合は月平均418円となっており、9市の場合は最小額が308円で、最高額は520円となっております。名護市の指定ごみ袋が他市と比べ、特段割高になってはいないことを説明しております。
つまり、「事実として値段は高いけれども、一世帯あたりの負担額は高いとまでは言えない」と名護市側の担当者はこの答弁では述べているということです。
しかし、一世帯当たりの負担額で比べているというところが数字のマジックですね。ゴミ袋が割高なら、買わないようにしよう、なるべくゴミが多くならないものを買おう、なるべくごみ袋に詰めてから捨てよう、という行動が考えられます。
他の議事録を見ても、質問者もごみ袋が高いという指摘がありますし、答弁する市の側も、市民からはごみ袋が高いという声が上がっているという事は認識しています。
ちなみに名護市とほぼ同じ規模の自治体である福岡県行橋市はこちら。
指定袋の種類と料金 | 行橋市ホームページ
45Lで1枚62円ですから、10枚で620円。名護市よりも高いですね。
これをどう考えるかは人それぞれでしょう。
16分別の負担
http://www.city.nago.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/ks010802.pdf
名護市は環境省調査でごみの再資源化(リサイクル)率が県内1位であるのですが、それはこのような生活者の負担で成り立っていた面もあるということですね。
上記は平成23年の図ですが、現在も変わっていないことについては、【 平成29年第188回名護市定例会-09月19日-05号 】P.238 ◎ 伊佐嘉巳(環境水道部長)の答弁を参照してください。
名護市のごみ分別早見表
http://www.city.nago.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/gomi002.pdf
…全然早く見れない件
これは分別が大変ですね。
小括1:名護市のごみ問題は大きく3つ
- 処理施設で処理されるはずのごみが最終処分場で放置
- ごみの分別が16品目もあって面倒
- ごみ料金が沖縄の他市に比べて割高
実は、これらの問題は1つの根本原因のせいとも言えるのですが、それは後述します。
ネット上のデマ検証:名護市の「ごみ放置」は誰の責任?
Q:一般廃棄物最終処分場は名桜環境企画が運営なのでそこの責任か?
※最終処分場の運営者がどこかは調べきれませんでした。ここではそのような指摘があるという意味で記述しています。なお、運営者は平成9年から丸玉環境メンテナンス、平成10年~24年が名桜環境企画、平成25年度からは有限会社ニュークリーン沖縄が受託、その後名護市が直接管理を経て平成29年4月1日から新たに事業者が受託しています。
A:一般廃棄物最終処分場は「被害者」です。冒頭の動画でも説明されていましたが、他の施設で処理するはずのものが「仮置き」として押し付けられているだけです。
『名護市のごみ放置の原因は自民党推薦の岸本直也市議が経営する、とぐち武豊の関係企業「名桜環境企画」である』というのはデマです。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年2月3日
平成29年9月19日の名護市議会で、うるま市運営の焼却炉が故障したため嘉陽の施設に「仮保管」しているだけ。最終処分場とは別の別自治体で処理するフローだった。 pic.twitter.com/6oVH1da3Xe
先に記述した図の内、③のプラスチック類と④のゴムは他の自治体に処理を委託しています。その分が最終処分場に仮保管されているということです。
平成29年第188回名護市定例会-09月19日-05号の議事録を見ればその経緯がわかります。長いですが。
◆24番(岸本直也議員) わかりました。先週は私、最終処分場のほうに見学、技術担当の職員のほうからご案内いただきまして、見学させていただきましたが、今現在約450トン余りのその他ビニールが山積みされている状況ですが、昨年度からこれが処理できないという状況で、飛散の問題、それから灰の問題、カラス、ネズミの問題もあるかと思います。嘉陽区からの指摘もあるという話もございましたが、この400トン余りのその他ビニール、今後の処理計画としてどのようにお考えなのか。今現在、中部北環境施設組合のほうの施設の故障という話がございましたが、一日当たり5トンぐらいのその他ビニールが搬入されるという中で、処理ができない状況で、450トン、これから1,000トン近くいくのかと思うのですが、処理方法、今後どのようにお考えなのかお伺いいたします。
伊佐嘉巳(環境水道部長)
現在、その他プラスチックについては、先ほど議員のほうからありました中部北環境施設組合の焼却炉に持ち込んでいますけれども、去年の12月から施設の改修だとかふぐあいが出まして、しばらく受け入れが困難ということで止めています。その後、被雷したということで、一部万全に機能しないということで、現在は搬入を抑えられております。それが12月から嘉陽のほうにそのまま、飛散しないように網をかけて保管しております。中部北環境施設組合の整備が整い次第、順次処分をお願いしたいと考えています。しかし、1カ所だけに頼っておりますので、今後別の事業者がないかどうか検討中でございます。沖縄市だとか、あとは読谷村の業者がおりますので、そういったところに打診をして、調整をしているところであります。順次、たまっているものを焼却したいという段取りは進めております。
中部北環境施設組合はうるま市が運営している焼却施設です。
都市間の関係でいえば、うるま市が委託を受けているのでなんとかするべきなのですが、名護市民にとってはそんなこと関係なく、責任は名護市行政にあるということになります。よって、「名桜環境企画が悪い」フェイクニュースです。
小括2:「名桜環境企画が悪い」はデマ・フェイクニュース
したがって、ごみ放置の原因は名護市の行政全体の責任ということになります。最終処分場の運営者とみられる「名桜環境企画」に責任があるとする言説は明確にフェイクニュースです。
うるま市の施設が使えなくても、対応方法は大きく2通りあります
- 他の自治体に処理委託する
- 名護市内にプラスチック類の焼却処理施設を作る
なぜ1番目の手段が取れなかったのはよくわかりませんが、より根本的なのは2番目の問題です。なぜずっと処理施設が造られなかったのか?実は、16品目の分別をせざるを得なかった事と密接に関係しています。
これが「名護市のごみ問題」の根本的かつ本質的な原因です。
これについて以下で説明します。
名護市のごみ放置はどうして起こったのか?
経緯概要:一般廃棄物処理施設建設(焼却施設と処分場)より16分別
ざっくり言うと以下の流れがあったことが議事録等からうかがえます。
- 最終処分場の耐用年数(ごみ埋め立て許容量が限界)が迫っていた
- 焼却処理施設も作っていないので行政の努力ではごみを減らせない
- じゃあ市民に頑張ってもらってごみの量(容積)を減らすために16分別 しよう
平成20年第152回名護市定例会-09月16日-02号 P.108 市民環境部長(親川敬君)
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年2月4日
「16の分別の一番の狙いは、処分場の埋立容積の関係からプラスチック・ビニール等については適正処理を行って、原則埋立てをしないという方向で埋立処理量2,500削減すること」
やはり、処理施設のキャパ不足が本質的問題
上記の議事録ですが、なんと平成20年のものです。
最終処分場の埋立容積が足りない状況を長年放置してきたこと
これが根本的かつ本質的な問題であるということがわかります。
このゴミ問題の解決方法は論理的に2パターンあります。
一つはごみの受け入れ容量を増やすこと。もう一つは、処理すべきゴミの量(容積)を減らすこと。
ゴミの受け入れ容量を増やすことに寄与するのは、もちろん最終処分場の新設です。
処理すべきゴミの量(容積)を減らすことに寄与するものは以下が考えられます。
- 焼却施設の新設
- 既に埋め立てたゴミを掘り起こして破砕処理
- ごみの分別による効率化
- ごみ処理の外部委託
この内、平成20年の時点では、1は時間がかかり、計画も未定、2は実施済み、3は市民が行動すればいいだけなので実施予定、4も実施済みだったということです。
平成 24 年 8 月 10 ⽇:名護市一般廃棄物処理施設整備計画議事録
名護市役所-平成24年度 廃棄物環境審議会
http://www.city.nago.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/ksdai1.pdf
当時の名護市長(稲嶺氏)も「16分別は最終処分場の延命につながったことは明白」とまで言っている。この問題の本質は、ごみの処分場の新設、改修を長年放置してきたことであるということがここからもうかがえます。
要するに、手っ取り早く着手できる16分別という方法を採用したはいいが、それに頼り切っている状況になってしまっていたということです。
この時点で、最終処分場の新設と焼却施設の建設も検討されていましたが、この検討の流れについては以下で紹介します。
具体的な経緯:名護市民必読の渡具知武豊の質疑
『名護市のごみ放置の原因は自民党推薦の岸本直也市議が経営する、とぐち武豊の関係企業「名桜環境企画」である』というのはデマです。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年2月3日
平成29年9月19日の名護市議会で、うるま市運営の焼却炉が故障したため嘉陽の施設に「仮保管」しているだけ。最終処分場とは別の別自治体で処理するフローだった。 pic.twitter.com/6oVH1da3Xe
上記ツイートに連なっているツイートでも大まかに情報は追えるので、そっちがいい人はどうぞ。
平成20年の当時から、処分場の埋立容積が問題視されていた。
このことについては、 【 平成23年第163回名護市定例会-06月17日-06号 】P.317 ◆ 15番(渡具知武豊君)の一連の質疑がこの問題の本質に迫っているので、名護市民は必読だと思います。
http://www.kaigiroku.net/kensaku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?USR=okinags&PWD=&A=frameNittei&XM=000100000000000&L=1&S=15&Y=%95%bd%90%ac23%94%4e&B=255&T=0&T0=70&O=1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=412&N=837&W1=%82%b1%82%cc16%95%aa%95%ca%82%c9%82%c8%82%c1%82%bd%8c%6f%88%dc%82%c9%82%c2%82%a2%82%c4%82%cd%81%41%82%bb%82%cc%93%96%8e%9e%92%53%93%96%89%db%92%b7&W2=&W3=&W4=&DU=0&WDT=1
この質疑において、処理施設の運用は後5年かかると言われていまました。
新しい一般廃棄物処理施設建設の計画目標年次は、平成31年となっている。工程計画もそれに合わせて組まれている。なぜ平成31年か?「ごみ焼却施設における処理量は、平成 31 年度以降、年々減少する結果となることから」とある。これは妥当なのか?という事が問題視されるべきだろう。 pic.twitter.com/9hO0H4Tkkf
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年2月4日
平成25年3月に発表された名護市一般廃棄物処理施設整備基本計画書(案)http://www.city.nago.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/ks010808.pdf
こちらでは焼却炉は7年、処分場は8年計画となっています。
この時点で、平成31年に運用開始の計画と、先延ばしになっています。
そして
【平成29年第188回名護市定例会-09月19日-05号】P.241 ◎ 伊佐嘉巳(環境水道部長)「現在、新焼却場ということで整備計画を進めています。基本計画の段階では、5年後の平成34年には供用開始したい」
またまた先延ばしになっていました。
いかがでしょうか?
この問題、焼却施設等の建設がされてこなかったのは、これまでの名護市全体の責任であり、当然、それを推進してこなかった行政側の責任です。しかし、少なくとも平成23年以降にこの計画が全く進められなかった、むしろ遅延していった責任というのは、また別個に考えるべき事だということが明らかです。
小括3:名護市ごみ問題は一般廃棄物処理施設建設の度重なる遅延が原因
- 平成20年に問題が指摘され、焼却施設等の必要性が示されていた
- 平成23年に5年後に施設が運用されると言われていた
- 平成25年には平成31年に施設が運用される計画だった
- 平成29年時点であと5年(平成34年)後に施設運用となっている
こりゃ、ダメでしょ
とぐち武豊新市長には、是非とも焼却施設の運用開始を前倒しして頂きたい!
って、都民の私が何で言ってるんだか(笑)
まとめ:名護市の「ごみ放置」問題の根本的原因
- 名護市のごみ問題の根本的な原因は、一般廃棄物最終処分場の容量不足
- 容量不足に対処するためには、受入れ量を増やす、ごみの容積を減らすの2通り
- 受入れ量増加は、最終処分場の新設だが未対応
- ごみの容積減少手段として、焼却施設の新設と16分別があり得た
- 現時点では16分別に頼り切っている状態
- 焼却施設の新設と最終処分場の新設は計画するも延期を繰り返してきた
今年の後半には、名護市議会議員選挙があります。
このゴミ問題はまたその時に再燃するでしょうね。
その時に、このブログが役に立てればいいと思います。
以上