事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

報道関係者に配布の広島サミット記念品転売で製造業者「備後の文化を知ってもらう意図を踏みにじる行為」

どう考えるべきか

報道関係者に配られた広島サミット記念品が転売

広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)の記念品として配られた福山市特産のデニムで作ったバッグが、インターネットのフリーマーケットサイトに相次いで出品されている。製造した業者は「備後の文化を知ってもらおうと企画しており、意図を踏みにじる行為」と嘆いている。

 外務省は約3500個の「サミットバッグ」を用意。折り鶴の再生紙を使ったメモ帳やハト形に圧縮したタオルなど5点とセットにして、各国代表団のほか、広島県立総合体育館(広島市中区)に設けられた国際メディアセンターで報道関係者に配った。

G7広島サミットで報道関係者に配られた「サミットバッグ」など記念品が、フリーマーケットサイトで相次いで出品され転売されているという報道。製造業者は「備後の文化を知ってもらう意図を踏みにじる行為」と嘆いているとのこと。

サミットバッグの製作・配布、内容物一覧|外務省

中身は「ボールペン・ノートブック・メモ帳・ハンドタオル・タンブラー・ボール(※代表団のみ配布)」でした。

ハンドタオルとタンブラー以外は、報道関係者がよく使いそうな消耗品です。

東京五輪時もテレビ朝日スポーツ局社員が五輪ドラえもんバッジを転売

テレ朝・朝日新聞不祥事まとめ:亀山社長会社経費私的利用、部長補助金詐欺容疑、記者ハニトラ疑惑 - 事実を整える

この際はテレ朝スポーツ局の経費で制作され、海外メディアや選手に配るためのものだったということで少し事情は違いますが、非売品を転売しているという点は共通しています。

非売品の転売は悪いことなのか?という倫理問題と経済活動の自由

さて、五輪時のテレ朝スポーツ局の例とは異なり、広島サミットのケースは報道関係者が記念品の受領者として想定されており、受領したなら所有権は彼らにあります

その記念品の転売は、悪いことなんでしょうか?

所有権がある以上、排他的に利用処分でき、転売行為は経済活動の自由の行使です。

【G7サミットバッグなど転売相次ぐ】違法ではないが残念 広テレ

■篠原テキスタイル 篠原さん
「まさかそういうのが(メルカリに)出てくるとは思っていなかったので驚きと残念な気持ちが大きかった。本来の目的としては日本の福山のデニムの文化をあのバッグに詰めて各国から来られるメディアの方に福山のデニム文化を知っていただければという思いで作った記念品なので新たな出品はやめていただきたいというのとそれを購入するようなこともやめていただきたい」

ネットの出品について岡野法律事務所の中佐古弁護士は、「物品の転売に関する規約が定められている場合は違法になる」と話します。外務省も「転売は禁止していない」としながら「本来とは違う使われ方になっていることは残念」と話しています。
【2023年5月25日放送】

法律上は、適法です。

ただ、それでもやはり釈然としない感はあります。

転売」と聞いて思い出すのはコンサートチケットやコミケ商品、PS5やニンテンドーswitchなどの転売ヤーです。

コンサートチケットに関してはいわゆる「チケット不正転売禁止法」=【特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律】によって手当が為されています。

が、PS5やコミケ商品は古物営業法違反でない限りは法律上の縛りはありません。

PS5やニンテンドーswitchの新品の高額転売は、一般流通に乗せている商品について、その流れを歪めるものである、など、悪質であるという評価に間違いはないでしょう。

コミケ出品商品は基本的にチャネルが現地限定という違いがありますが、非売品ではありません。ただ、一般商品とは異なり、コミケ商品は出品者が「利益を得る」ことを目的にしていることはほぼ無くて、作品を気の合う者と共有したい、自分の作品にどれくらい魅力があるのか図りたい、作品を愛する者に所持してもらいたい、といった要素が強いのではないでしょうか?

もっとも、転売ヤーが現地で大量購入した結果売り切れ、他の購入希望者が作品を手にする機会が不当に奪われるとは言えます。事前に有名な出展者に狙いを付けているケースもあるでしょう。

コミケにおいて出展者が購入者一人に対する販売量をコントロールするべきとは言えますが、それが現実的なのかという問題もあり、そこをくぐり抜けてしまった後に発生する事態というのは、そういう意味があります。

今回のケースは、上記のいずれのケースとも異なる考え方が必要になってきます。

少なくとも、「製造した業者の期待を裏切る行為」ではあると思います。

転売目的でのサミットバッグの受領を繰り返し?譲り受けたものを転売?

頒布形態が有無を言わさず受け取らざるを得ないものだったのか?」という点は不明ですが、仮に受け取りは任意だったとしましょう。

この場合、「自分では使わないものをそのままにしておくよりは、転売した方が商品頒布の趣旨にもかなうだろう」ということにはなりません。

が、本件の場合、同じ出品者が同じ商品を複数出品しています。

「複数回並んだ」か、もしくは「複数の報道関係者から譲り受けた」のいずれかでしょうが、前者のような行動はリスクが高いので、どうなのか?

4つ出品してる人は少し調べた程度では見つけられませんでしたが、2つ出品している人や、「メディア関係者から譲り受けました」と書いている者が居ました。

【①報道関係者⇒無償譲渡⇒②非関係者⇒転売⇒③消費者】

こういった流通経路だったとしても、任意受領したものを譲渡しているので転売目的が疑われます。

バッグを受け取って中身を見てからその後の利用を決める人が居たかもしれませんが、内容物は事前に公開されていたので、どうでしょうか?現地での案内の仕方がどうなっていたかによります。

サミットバッグの製作・配布、内容物一覧 | トピックス | G7広島サミット2023

仮に現地で受領する前に内容物を知らず、バッグの中身を見てから自身には不要と思い、転売することとした、という場合には、そこまで非難の対象となるのはどうなのかと思います。

転売対策に正規の値段で本家が販売するか流通量を多くして通販で購入する価値を下げるか

広島サミット記念品、フリマサイトに相次ぎ出品 福山特産デニムのバッグ 生産者「悲しい」 | 中国新聞デジタル

24日時点で、フリマアプリで検索すると「非売品」などとしてバッグの出品が10件以上確認できる。セットした品物を含めて3万円以上の値段を付けているケースもあった。

 バッグは福山市内の7社が作製。黒色、和紙の糸を織り込んだ生地、伝統の刺し子風模様の3種類のデニムをつなぎ、産業が集積する同市の特色を表現した。携わった篠原テキスタイルの篠原由起社長は「サミット期間中から出品されており、悲しい。出品も購入もやめてほしい」と話す。

 同社などはレプリカを1万円程度で販売する予定。準備を急ぎ、6月中に発売する。(筒井晴信)

この社は「準備を急ぎ」とあることから転売対策として正規の値段で本家が販売する手段を講じたと読めます。

「流通量を多くして通販で購入する価値を下げる」「転売に頼らなくても手に入るようにする」というのはゲームハードメーカーが採ってきた手段です。

不当な転売者に利益を与えないという共通理解が社会に広がればと思います。

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