事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

葉梨法務大臣更迭、×死刑のハンコを押す地味な仕事、〇死刑のハンコを押すときだけ昼のニューストップになる地味な役職:メディアのタイトルでの誤導

何が問題で更迭されたのか実際の所は…

葉梨法務大臣更迭報道

〈独自〉岸田首相、葉梨法相更迭の意向固める 山際氏に続き岸田内閣に打撃 「死刑のはんこ押す地味な役職」発言 - 産経ニュース11日15時55分魚拓

葉梨法務大臣が更迭されました。

「死刑のハンコを押すときだけ昼のニューストップになる地味な役職」

葉梨大臣は「死刑のハンコを押す地味な仕事」などとは発言していません。

「死刑のハンコを押す仕事が地味だ」という意味で言っていません。

そのため、「命軽視」といった批判は的外れです。

また、「死刑の判断をするような法務大臣という役職は地味」とも言ってません。

最初の共同通信の報道で流された音声でも「死刑のハンコを押すときだけ昼のニューストップになる地味な役職」と発言していたことは確認できます。

そして、問題視された発言をした場では、当該部分の後に外務省と法務省の仕事内容の共通点を挙げて「国の根幹を為す」「国の屋台骨を支える」と言っていました。これは10日の参議院法務委員会でも読み上げたので後でいくらでも確認可能です。

問題視された発言の部分は、他の会合でも過去に発言していたようですが、同様の文脈・意味として捉えるべきでしょう。

よって、「法務大臣の職責を軽んじている」といった批判は的外れです。

実際の発言がどうだったのかは以下で書き起こしています。

葉梨法相「死刑のはんこ」に関してメディアが切り取りと印象操作:記者会見で発言全体を読み上げ撤回せず - 事実を整える

維新梅村みずほ議員「報道各社の皆様にはぜひ今日の葉梨大臣の全文を発信していただきたい」:死刑のはんこ発言に関して - 事実を整える

各メディアは「死刑のハンコを押す地味な仕事/役職」とタイトルで誤導

メディアの中にはタイトルの書き方によって読者が『葉梨大臣が「死刑のハンコを押す仕事が地味だ」と言った』『葉梨大臣は法務大臣という職を「死刑のハンコをするだけの役職だ」と言った』というような予断を生じさせるものとなっています。

共同通信・時事通信・読売新聞・毎日新聞・産経新聞・日経新聞・東京新聞

これだけのメディアがタイトルで「死刑のハンコ押す地味な役職」と、印象操作となるヘッドラインを作っているのが分かります。

NHKと朝日新聞は「死刑のハンコ発言」などといったものや、きちんと「死刑のハンコを押すときだけ昼のニューストップになる地味な役職」とツイートにも記載しているものがありました。

最初に挙げた複数メディアでもツイート・記事によっては予断を生まない書き方になっているものはあります。

なお、どのメディアも記事本文では実際の発言である「死刑のハンコを押すときだけ昼のニューストップになる地味な役職」を書いていました。

葉梨法務大臣の発言の問題点:失言と言えるとしても辞任や国会審議を止めるものか

葉梨法務大臣の発言、文句を言おうとすればいくらでも言えると思います。

「行政の中で外務と法務を持ち上げてるが、そのほかの省庁も国の根幹であり重要だろう」「ニューストップになるのは何も死刑執行判断のときだけじゃないだろう」

こういう指摘はその通りですが、どうでもいい話でしょう。「ニュースになるのが目的で仕事してるのか」なんてのは、まぁそう思いたいなら勝手にどうぞ、と言った感じ。

他は『「外務省と法務省、票とお金に縁が無い、外務副大臣になっても全然お金が儲からない、法務大臣になってもお金は集まらない。」というのは金と票しか見ていない』といった批判も考えられます。

これについては、自民党会合での発言時点では、「今日お集りの方々が物心両面で支えていただかないと」という主張の前段として機能させるためのものであるため、「金と票だけが頭にあるのか」という批判はやや無理筋でしょう。そのための集まりである自民党支持者らの前での話ですから。

実際、「外務省と法務省は仕事ぶりが表に出てきにくく、成果を上げてもマスコミは報道しない」といった実態はあるでしょう。

もっとも、10日の参院法務委員会における共産党の仁比聡平議員による自民党会合の発言についての質疑に対する答弁で以下答弁していました。

葉梨大臣 経済官庁はいろんな形で企業の皆様とお付き合いができる、そういう中で政治資金パーティーなんかでも来られる方が多い。ただ、外務省だとか法務省っていうのは企業との付き合いというのはそれほどあるものではない。そういうことで政治資金という意味では集めづらい所がある

これは私も眉の距離が近くなりました。

この発言は自民党会合での発言よりも踏み込んでます。しかも国会での発言です。

確かに、実際上そのような機会の違いがあるのは事実なんでしょうが、印象は悪い。

「大臣という行政府の権力者としての地位を政治資金集めの観点で考えてる/利用しようとしてる」みたいな受け止めをする人が発生しても、やむを得ないと思いますよ。

正直な人だなぁとは思います。

私は、この発言自体が何か一般的に悪性評価を受けるべきものとは考えません。

ただ、大臣職の者としての危機管理能力という点で、自分が内閣の人事権を握っていると仮定したとして考えると

「こういうダメージコントロール能力だと、今後も厳しいのではないか?」

こう岸田総理が判断されても仕方がない気がします。

もっとも、メディアで報じられているタイトル部分の文言は、明らかに文脈と異なるものになっており、そういう発言の歪曲によって一人の人間を役職から引きずり降ろそうとするムーブメントが成功する実績が作られることの方がよくないと思います。

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