事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

神奈川新聞柏尾安希子 植村隆裁判で西岡力訴訟を隠蔽し「捏造と認定せず」映画「標的」の宣伝

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「西岡力隠蔽」がここでも

神奈川新聞柏尾安希子 植村隆裁判で「捏造と認定せず」映画「標的」の宣伝

神奈川新聞の柏尾安希子記者が植村隆のドキュメンタリー映画「標的」の宣伝をするツイートのスレッドにおいて、植村隆裁判で「捏造と認定せず」などとツイート。

これは櫻井よしこ氏への訴訟(札幌訴訟)での話であり、西岡力氏に対する訴訟(東京訴訟)を無視した隠蔽です。知らないハズが無いでしょう。

また、柏尾記者の「櫻井氏の記事の方が真実でないとした」という部分は、実際には極一部の記述の細かい部分の話で、結局「重要な部分において真実」と認定されています。そして全体として真実相当性が認定され、損害賠償責任は発生していません。

西岡力訴訟(東京地裁・高裁・最高裁判決)を隠蔽する捏造界隈

植村隆が西岡力氏に対して提起した訴訟(東京訴訟)において、「植村隆の捏造」が認定されています。東京高裁の判決でもこの点は修正されていません。

裁判所において「捏造」とは、単に事実誤認があったというだけでなく、そこから進んで「事実と異なることを知りながら敢えて〇〇した」の意味として扱われています。

具体的に植村隆の主張のどこに捏造があったのか。

【平成3年8月11日付朝日新聞大阪本社版朝刊に掲載された従軍慰安婦問題に関する署名記事】において、【金学順が、日本軍(又は日本の政府関係機関)により、女子挺身隊の名で戦場に連行され、従軍慰安婦にさせられた】と書いた部分です。

そして、最高裁で上告棄却されて判決確定となっています。

植村隆、西岡力訴訟でも最高裁で上告棄却:慰安婦問題に関する金学順証言 - 事実を整える

安倍晋三議員の早とちりに過ぎないSNS投稿の削除

柏尾記者はこのようなツイートもしており、まるで「だから「植村が捏造」は間違いだ」ということの傍証としたいようです。

しかし、これも櫻井訴訟では真実相当性が認定されたにとどまったものについて、最高裁判決が出たことについて安倍晋三議員が「捏造が確定」と言ったのが誤りであり、実際にはその後の西岡訴訟の最高裁判決による植村敗訴で捏造が確定しました。
(櫻井訴訟最高裁判決時点で西岡訴訟の東京高裁判決は出ていた)

「櫻井よしこの事実誤認」と言われている部分は結局重要な事実において真実とされている

植村-櫻井訴訟では、櫻井側の主張に齟齬があり攻防中に櫻井側が訂正したものがあります⇒櫻井氏コラムで産経新聞が訂正 慰安婦問題 訴状めぐり:朝日新聞デジタル

 櫻井氏は14年のコラムで、植村氏が韓国人元慰安婦・金学順(キムハクスン)さんの証言を掲載した1991年の朝日新聞記事を批判。「金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている」と記した。だが、金さんの訴状に「40円で売られ」「再び継父に売られた」との記述はなかった。

 植村氏は、自分の記事が雑誌などの櫻井氏の文章で「捏造(ねつぞう)」とされて名誉を傷つけられたとして、櫻井氏と出版3社を相手取り、15年に札幌地裁に提訴。植村氏の指摘を受けて櫻井氏は今年3月の本人尋問で、「間違いですから訂正したい」と約束していた。

 約束を受け、この訴訟で櫻井氏とともに被告となっている出版社ワックは5月26日発売の月刊「WiLL」7月号で、櫻井氏寄稿の同誌14年4月号論文での同様の誤りについて訂正する記事を掲載した。

また、札幌の裁判所の判決で「真実ではない」とされた部分があります。

では、それはどういう内容か。可能な限り固有名詞を特定した形に直して引用。

 また、上記<2>の事実のうち、金学順氏が、平成3年8月14日にソウル市内で開いた記者会見の際、家が貧しかったため実の母親にキーセンに売られたとの話をしたとの部分については、金学順氏の共同記者会見の内容を報じた当時の(j)新聞にも同旨の報道がされている(前記認定事実ウ(エ))ことから真実であると認められるが、「女子挺身隊との話が出てこなかった」との部分については、金学順氏が、同記者会見で、「挺身隊慰安婦」(前記認定事実ウ(ア))、「挺身隊」(前記認定事実ウ(イ)、(オ))と述べたことからすると、「女子挺身隊という話が出てこなかった」との部分については真実であるとは認められないもっとも、上記<2>の事実の重要な部分は、金学順氏が、共同記者会見でも、家が貧しく実の母親によって売られたとの話は出ていたが、原告は、共同記者会見後の記事でも金学順氏が実の母親によって売られたことを報じていないということにあると解される。そして、原告は、金額順氏の共同記者会見後、平成3年訴訟の提起前にも本件記事Bを記載しているが、その記事でも、実親によってキーセン学校に売られたとの部分を報じていない(前記認定事実エ(イ))のであるから、重要な事実において真実であると認められる。

 <3>及び<5>の事実についてはいずれも弁論の全趣旨により認めることができる。<4>の金学順氏が一度も「挺身隊」だったと語っていないという部分については、金学順氏が、共同記者会見で、「挺身隊」又は「挺身隊慰安婦」だったと述べていることからすると、その限度では真実ではないというべきである。しかし、同記述の前後の文脈からすれば、同記述は、韓国で慰安婦の意味として使われている「挺身隊」又は「女子挺身隊」という意味ではなく、金学順氏が第二次世界大戦下における女子挺身勤労令で規定された「女子挺身隊」であったと語ったことはないということを意味するものと解される。そして、金学順氏が、女子挺身勤労令で規定するところの「女子挺身隊」であったと語ったことはないとの事実は真実であると認められる

 そうすると、櫻井論文オの前提事実は、いずれも重要な部分において真実であるか、又は真実であると信じたことについて相当の理由があるところ、これらの事実を前提として、被告櫻井が、原告が金学順氏が女子挺身隊として日本軍に連行されたという事実がないのにこれを知りながら、金学順氏が日本軍に連行されて慰安婦とされたという事実と異なる記事を敢えて執筆したと言われても仕方がないであろうと論評ないし意見をしたとしても、原告に対する人身攻撃に及ぶなど論評ないし意見の域を超えたものであるとはいえない。

このように、櫻井側の主張に不正確なものがあったものの、そのいわんとする所の中心部分は正しい、という認定が為されています。

なお、このような認定の仕方はありふれていますし、この判決文の中でも、同様の扱いが金学順の証言においても適用されています。
(「義父」「継父」「養父」と表現がまちまちであることなどは、いずれも「血のつながりの無い男親」という意味において一致しているとして問題視していない)

むしろ本判決では、植村の記事が誤導的(「女子挺身隊の名で」という部分が、法令に根拠のあるものという印象を読者に与える)と認定しています。

関連する判決の日付と事件番号は以下。

東京地方裁判所 令和元年6月26日判決 平成27年(ワ)390号

東京高等裁判所 令和2年3月3日判決 令和元年(ネ)3134号

札幌地方裁判所 令和元年6月26日判決 平成27年(ワ)390号

札幌高等裁判所 令和2年2月6日判決 平成30年(ネ)第302号

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柏尾記者のような「西岡訴訟の隠蔽」は、SNSなどで大々的に繰り広げられています。

また、朝日新聞も西岡訴訟の東京高裁判決の内容を歪めて伝えており、最高裁判決で確定された事案であるにもかかわらず、依然として事実の捏造が蔓延っている状態です。

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