週刊文春が報じた「韓国人受験生を全員不合格 加計学園獣医学部に「不正入試」疑惑」ですが、以下の記事でその推論の不当性を論じました。
加計学園獣医学部韓国人全員不合格は人種差別?⇒推薦入試以外で4人合格
今回、入試方式を調べていたら新たな事実が分かり、別の観点から疑問が湧いてきました。
- 岡山理科大学獣医学部の入試方式は多岐にわたる
- 推薦入試A方式の面接試験は2020年入学の入試から
- 留学生枠20人が別に存在している
- 留学生枠がある中で推薦入試を選択した外国人とは
- 私費外国人留学生入試の条件
- 追記:日本人にも面接が0点の者が居たことが分かりました。
- 評定が一律35点は低い点数ではない
- 文春の加計学園獣医学部「不正入試」記事はやはり疑問
岡山理科大学獣医学部の入試方式は多岐にわたる
岡山理科大学獣医学部の入試方式は多岐にわたります。
- 専門学科・総合学科特別推薦入試
- 特別推薦入試
- 推薦入試
- 一般入試(前期SA、SAB、SB、後期、センター利用CⅠ、CⅡ、CⅢ)
- 帰国生徒入試
- 社会人入試
- 国際バカロレア入試
- AO入試
- 私費外国人留学生入試
- 編入学試験
上記ページからは以上の受験方式があることが分かります。
今回問題視されている入試は上記のうちの「推薦入試」の話です。
推薦入試A方式の面接試験は2020年入学の入試から
韓国人受験生を全員不合格 加計学園獣医学部に「不正入試」疑惑 | 文春オンライン 2020年3月12日号
今回、問題になっている面接試験は昨年から導入された
文春の記事では「昨年から導入」という文言がありますが、実際には推薦入試A方式で面接が行われるようになったのは2020年入学のための受験から(つまり今回の試験から)です。
確かに「2019年中に面接方式を導入する決定が為された」のは事実なので、そのような意味であれば記述の整合性は取れますが、いずれにしてもミスリーディングです。
「週刊誌の記事以外の明確な証拠」などありません。「一律減点」であること、前年までの扱いと異なること、すべて報道から合理的に理解できる点から議論しています。韓国人「だけ」「一律ゼロ点」であるのは、受験での選抜のあり方から見て、どう考えても不自然です。
— Hiroyuki Harada 原田 広幸 (@harad211) 2020年3月7日
このような考えに至る人が結構いるのですが、「前年までの扱い」など存在しないので、不当な評価ということになります。
おそらく、「留学生入試」と混同していると思われます。
留学生枠20人が別に存在している
私費外国人留学生入試と留学生別科入試があります。
これは「国際バカロレア入試」とも異なる選考方式です。
このうち、私費外国人留学生入試は20名を獣医学部が募集人員としています。
これがいわゆる「留学生枠」のことです。
こちらは最初から面接試験が存在していました。
参考:https://www.ous.ac.jp/up_load_files/pdf/ryuugaku_vet2.pdf
2019年入学者含む現在の在籍者数は15人です:留学生在籍者数 | 岡山理科大学
過去には「韓国人留学生枠がある」などというデマも発生して、それをさらに池上彰のテレビ番組が拡散するということもありました。
TBS・池上彰「加計学園 獣医学部は韓国人留学生枠20人を作った」⇒誤報です。「留学生に税金が支払われる」⇒他大学も同じ - Togetter
留学生枠がある中で推薦入試を選択した外国人とは
さて、留学生枠がある中で推薦入試を選択する外国人とは、いったいどういう人が考えられるでしょうか?
前回の記事でも指摘しましたが:加計学園獣医学部韓国人全員不合格は人種差別?⇒推薦入試以外で4人合格 、推薦入試の筆記試験問題の内、獣医学部は数学が必修であり、他は英語・生物・物理・国語から1科目選択する必要があります。
問題になった受験生は、全員英語を選択していました。
試験問題を見ればわかりますが、最も日本語能力が不要なのが英語の筆記試験です。
他は生物・物理も覚える単語が日本語なので、母国語ではない者にとっては難易度が全く異なると言えます。
私費外国人留学生入試の募集要項には「大学の講義を理解できる程度の日本語能力が必要です」とあるため、推薦入学で面接試験が無ければ、それを回避することが可能です。
私費外国人留学生入試の条件
私費外国人留学生入試の入学試験要項には以下記述があります。
日本国籍を有しない者で、次の❶~❺のいずれかに該当し、かつ、入学時(春入学:2020年4月もしくは秋入学:2020年9月)までに「留学ビザ等」を取得できること。
❶ 外国において学校教育における12年の課程を修了した者又は春入学:2020年3月31日もしくは秋入学:2020年8月31日までに修了見込みの者
❷ 上記1に準ずる者
❸ 文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程又は相当する課程を有するものとして認定又は指定した
在外教育施設の当該課程を修了した者又は春入学:2020年3月31日もしくは秋入学:2020年8月31日までに修了見込みの者
❹ 文部科学大臣の指定した者
⑴ 国際バカロレア資格取得者 、アビトゥア資格取得者(ドイツ連邦共和国) 、バカロレア資格(フランス共和国)資格取得者 注7 、ジェネラル・サーティフィケート・オブ・エデュケーション・アドバンスト・レベル資格取得者(グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国)⑵ 国際的な評価団体の認定を受けた教育施設に置かれる12年の課程を修了した者又は修了見込みの者
❺ 本学において、個別の入学資格審査による認定を受けた者
この他、学校からの推薦書などが必要です。
選考方法は英語、数学、日本語、小論文に面接です。日本語と小論文の試験を除けば推薦A方式とほとんど同じです(難易度は未確認)。
私費外国人留学生入試の試験の時期はⅠ期~Ⅲ期あり、2019年の9月から12月に実施されていますし、この試験を受けたから他の試験が受けられないということはありません。
他方で、獣医学部の推薦入試A方式は「専願制=合格したら必ず入学する」なので、岡山理科大学獣医学部の入学を第一に考える者が入学することが想定されています。
推薦入試は過去問が公開されているので、対策を講じやすいので選択された可能性がありますが、日本語能力が達者であれば留学生枠の試験において受験して合格していたのではないでしょうか。
追記:日本人にも面接が0点の者が居たことが分かりました。
「加計」推薦入試「韓国人0点」報道 文科省問い合わせに「事実と異なる」 - 毎日新聞
文科省が6日に同大の担当者から聞き取った調査によると、19年11月にあった獣医学部獣医学科の推薦入試を受験した韓国人留学生の面接の得点は全員0点で、全員が不合格だった。大学側は日本人の中にも面接が0点の受験生が複数おり、一般入試などでは韓国人留学生の合格者がいたことなどを説明。入試が適正に行われたと主張した。
「日本人の受験者の中にも面接試験の点数が0点の者が居た」
これは面接の問いへの返答に対して一定の基準が設定されており、それを満たしていなかったのでしょう。
これで「人種差別」とよく言えたものです。告発者はこの事実を知っていた上で人種差別だと騒いでいたことになります。
評定が一律35点は低い点数ではない
文春の記事にある得点表を見ると、韓国人ら以外の評定は34、30、42、31、32、35、45、38、41、31、27、46、31、となっています。
合計点数が判明している韓国人受験者の評定は、一律に35点ですが、ここからは高いとも低いとも言えるような数字ではありません。
文春の加計学園獣医学部「不正入試」記事はやはり疑問
読者の中には、過去に騒がれた「留学生枠」と勘違いしている者も少なくないのだろうと思います。それは異なるということをここで示しました。
やはり、文春の加計学園獣医学部「不正入試」記事は疑問です。
以上