群馬県太田市長の清水聖義、新型コロナウイルス感染者の個人情報をツイートしていました。しかも約20時間も放置したままでやっと削除しました。
- 群馬県太田市長の清水聖義、新型コロナウイルス感染者の個人情報をツイート
- 個人情報保護法は地方公共団体の適用なし
- 地方公務員法上の守秘義務の問題?
- 特別職の公務員に対する守秘義務の規律
- 自治体の条例・例規
- 他の法令で違法となる可能性
群馬県太田市長の清水聖義、新型コロナウイルス感染者の個人情報をツイート
群馬県太田市長の清水聖義によれば、木崎あおぞら保育園勤務の40代女性(職場と年代と性別はこの種の話では全国的にも報道されているので、これは公にしても良いだろう)が新型コロナウイルスに感染していたことが判明したということです。
清水氏のツイートには、その他に女性の家族構成に関わる記述、職場での立場、情報源などが記述されており、明らかに公的な立場の者から発信するには不必要な情報が含まれていました。
このツイートは8日の午後3時前にツイートされたもので、ツイッターユーザーらは削除するよう求めていましたが、ようやく午前10時過ぎに削除されました。
個人情報保護法は地方公共団体の適用なし
個人情報保護法
5 この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
一 国の機関
二 地方公共団体
市長は地方公共団体そのものではないですが、その権限を代表する者なので同じでしょう。
また、清水氏個人の私的なツイートと考えても、清水氏が個人情報取扱事業者とは言えないため、個人情報保護法は適用されないでしょう。
地方公務員法上の守秘義務の問題?
地方公務員法上の公務員の守秘義務の問題と考える人も居るかもしれませんが、実は特別職には同法は適用されません。
第三条 地方公務員(地方公共団体及び特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)のすべての公務員をいう。以下同じ。)の職は、一般職と特別職とに分ける。
2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
3 特別職は、次に掲げる職とする。
省略
四 地方公共団体の長、議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの
省略第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
特別職の公務員に対する守秘義務の規律
特別職の公務員に対する守秘義務の規律はありますが、地方公務員の特別職に一律に適用されるものは無いようです。
官吏服務紀律
官吏服務紀律は国家公務員の規律であり、地方公務員は関係ありません。
参考:特別職公務員の守秘義務に関する質問に対する答弁書:答弁本文:参議院
「市町村吏員服務紀律」(明治 44 年内務省令第 16 号)は廃止
かつては「市町村吏員服務紀律」(明治 44 年内務省令第 16 号)がありましたが、日本国憲法施行と共に廃止されています。
自治体の条例・例規
自治体の条例・例規において何らかの定めがある可能性があります。
通常、個人情報保護法の自治体バージョンが存在するのでそちらを見てみます。
太田市個人情報保護条例
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 個人情報 個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。
(2) 実施機関 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会、固定資産評価審査委員会、消防長及び議会をいう。
ここでは「実施機関」として「市長」も含まれています。
(利用の制限)
第8条 実施機関は、当該実施機関の内部で個人情報取扱事務の目的の範囲を超えて個人情報(特定個人情報を除く。以下この条において同じ。)を利用してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
(1) 本人の同意があるとき。
(2) 法令等に定めがあるとき。
(3) 出版、報道等により公にされているとき。
(4) 個人の生命、身体又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。
(5) 当該個人情報を利用することに相当の理由があり、当該個人情報の利用によって本人又は第三者の権利利益を不当に侵害することがないと認められるとき。
「当該個人情報を利用することに相当の理由」に「女性の家族構成にかかわる事項」のツイートは含まれないでしょう。
第7章 罰則
第31条 実施機関の職員若しくは職員であった者又は第13条第2項の事務若しくは業務に従事している者若しくは従事していた者が、正当な理由がないのに、個人の秘密に属する事項が記録された公文書であって、一定の事務の目的を達成するために特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を提供したときは、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
しかし、罰則は個人の秘密に属する事項が記録された公文書を体系的に構成したものを「提供」した場合に限られていますので、本件の適用はないでしょう。
ただ、太田市の個人情報保護条例に反する違法な行為であるとして非難されることは必至だと思います。
他の法令で違法となる可能性
後は女性からプライバシー侵害だとして民事不法行為で訴えられるくらいでしょうか。(記述内容からは名誉毀損や侮辱にはならない)
いずれにしても不必要な行為であり、非難されるべき行為でしょう。
以上