事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

社民党、伊是名夏子「乗車拒否」事案の見解を発表:移動の権利とバリアフリー

社民党伊是名嘘

社民党が伊是名夏子氏事案についての見解を発表しました。

社民党が伊是名夏子の「乗車拒否」主張事案を擁護

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社民党が「いまさら」伊是名夏子の「乗車拒否主張」事件に関する見解を公表しました。なぜか媒体がnoteなのがよくわかりませんが。

そして、やはり内容に不審な点が見られました。

【100kgの電動車椅子】をひた隠す社民党

先天性骨形成不全症の障がいを持ち電動車いすで生活する伊是名夏子(社民党常任幹事)さん

と、最初の行に登場しますが、これ以外に「電動車いす」の語は出てきません。

彼女が乗る電動車椅子(レル・ライト)が、仕様上は約100kgの重さであることは隠されています。*1*2

「事実上の乗車拒否」「タクシー予約に1か月かかることも」と強弁

熱海駅から来宮駅までは1.6キロあり、かつ車いすが乗るタクシーの予約には1か月かかることもしばしばあります。アクセスができない事実上の乗車拒否と受け止めるしかありませんでした。

さて、「100kgの電動車椅子・レルライト」という点をひた隠しにする社民党の狙いは、ここに現れているのが分かります。

車いすが乗るタクシーの予約には1か月かかる

確かにレルライトのサイズなら通常のタクシーではトランク等には入らないと考えられます。この点については、熱海第一交通であれば「前日の昼過ぎまでに予約をいただければ、時間通りに対応が可能。当日だと、対応車両が空いていれば乗れるが、当該車両が稼働中の場合は時間待ちになる可能性がある」とする調査結果があります。

参考:伊是名氏の言い訳破綻 タクシー会社に聞いた | 令和電子瓦版

伊是名氏なら来宮駅が有人駅であっても事前連絡が必要と思うハズ

ただ、確かに当日の移動は電車で行くと決めていたのに、その場でタクシーを利用するように促されても、「過去に1か月かかった」経験があるのなら、その方法は避けたいと思うのは仕方ないかもしれません。また、バスも熱海周辺の系列はノンステップ・ワンステップバスが必ずしも利用できず、時間帯や降車場所が限られることも。

しかし、彼女は電動車椅子が重く、階段を運ばせることは危険だということは既に把握していたわけです(地下2階の店舗で店員が階段運搬を申し出たが危険だからと断って入店を諦め、店舗自体の移転を要求している)。

参考:伊是名夏子、地下2階の階段でしか行けない店舗の移転を要求:意識の段差

伊是名氏は「事前に来宮駅が無人駅だということを知らなかった」ような素振りですが、たとえ有人駅であっても、1人や2人では100kgの電動車椅子を運ばせることは危険を伴うことが分かっていたでしょう(なお、階段に車椅子用の昇降機が無いということは来宮駅のHPから分かる)。

来宮駅の構造からは、駅員が3人も4人も居ないだろうということが伺えます。

都内の駅でも2名しか常駐していないところはローカル線ならあります。

首都圏で長年生活している伊是名氏がローカル駅の状況について知り得なかったとは言えない(本当に気にしていなかったため考慮外だった可能性は十分にあるが)。

そのため、たとえ来宮駅が有人駅だろうが、彼女のこれまでの経験に照らせば、事前に来宮駅での案内が可能なのかを把握するハズなのです。

それをせずに最終的に介助してもらったことについて「乗車拒否」と表現するのは、あまりにも実態と異なる状況を読者に想起させる不誠実な文章だと評価されても仕方がないでしょう。

「合理的配慮」に重要な事実=100kgの電動車椅子が無い

社民党は続いて『「障害者基本法」が規定する「合理的配慮」が十分だったか』という観点から以下記述しています。

鉄道の利用に関わる「合理的配慮」については、認定NPO法人DPI(DISABLE PEOPLE’S INTERNATIONAL)日本会議とJR6社並びに大手民間鉄道会社16社との交渉の中で「事前連絡の期限は設けていない」こと、「駅が無人であることのみをもって駅の利用を制約する取扱は行っていない」ことが各事業者の方針であることが確認されています。

ところが、「合理的配慮」が十分だったか否かについて100kgの電動車椅子の事実は重要であるにもかかわらず、ここでもその点は無視されています。

通常の車椅子なら駅員を派遣するまでもなく、伊是名氏ならヘルパー+友人がいたために移動できた事案です。ヘルパーらがいなくとも女性駅員であっても1名を派遣すれば済む話でした。

しかし、100kgの電動車椅子ならば、労働法体系上、4名以上の男性職員が必要です(努力義務。女性を員数に加えるのは不合理)。

参考:1台の電動車椅子を持ち運ぶのに何人の駅員が必要か? ただし労働基準法に従うものとする - 本しゃぶり

これを可能にする人員配置は、必然的に女性駅員の排除に繋がります。4名が抜けて別の駅に行くというのは、通常業務に支障を来さないように調整することの労力が大きいことは容易に予想されます。今回は伊是名氏のみだったために対応できたかもしれませんが、同時多発的に要求されたら不可能でしょう。

既にバリアフリー化に動いている事を無視

今回問題になった来宮駅も2015年3月8日にJR伊東線の熱海―伊東駅間の4駅が無人化されたうちのひとつでした。当時住民側からは「エレベーター設置」の要望も出されましたが、いまだ実現していません。合理化を優先する一方で、乗客の利便性は後回しにされている現状があります。

これは既に議員も行政も企業もバリアフリー化に動いている事を無視しています。

これでは「社民党が「手柄」を横取りしようとしているのではないか」と言われても仕方がありません。詳細は以下で論じています。

社民党の伊是名夏子のJR来宮駅電動車いす「乗車拒否」騒動とバリアフリー

「移動の権利」は法律でも判例でも認められていない

2011年成立した交通基本法では「移動の権利」が国会で議論になりましたが、同法には「高齢者、障害者等の円滑な移動のための施策」として「構造及び設備の改善の推進その他必要な施策」を義務つけ、国や地方公共団体、交通事業者、住民の連携と協働をうたっています。

交通政策基本法では「移動の権利」は規定されていません。

議論になったと言いますが、その過程でそのような権利の存在は認められないとして否定されています(欧米でもフランスでしか見られないと指摘されている)。

交通基本法案~地域公共交通の確保・維持・改善に向けて~

社民党とバリアフリー

社民党は障がい者差別を含むあらゆる差別に明確に反対し、障がい者を含む誰もが等しく自由に利用できる公共交通機関、そしてバリアフリーが徹底されたインクルーシブな社会を皆様とともに創り上げていく決意です。

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