ポプテピピック9話「奇跡とダンスを」の解説です。
今回は「センター」と「時間」「動物」が隠しテーマでした。
それらの関連性を示したうえで、更なる隠しテーマについて考察してきます。
センター(中心)となる場所や要素
場所や要素に「中心」を意味するものが多数含まれていました。
タイムズスクエアとジャパリパーク
9話の象徴的な場所であるニューヨークの「タイムズスクエア(Times Square)」。シアターディストリクトと呼ばれる区画とほぼ一致するエリアであり、これから映画のパロディを行うぜ、という宣言のようにも思えます。
タイムズスクエア - Wikipedia
ここは「世界の交差点」とも呼ばれる場所です。看板にいろんなネタがありますが、注目すべきは上の写真の左上にある「〇〇〇RI PARK」という看板です。これは明らかにけものフレンズの「ジャパリパーク」を指していますね。
単なるサファリパークの可能性もありますが、ここの風景にはピチューの看板があったり悟空を思わせる風貌の人物が映っているなど、マンガやアニメのネタがたくさんあることからも間違いないでしょう。
ジャパリパークは『世界中の動物を集めることを目的に造られた巨大施設』です。世界中の物が集まるニューヨークでも世界中の広告や企業、観光客が集まる、まさに「世界の中心」と呼んでよい場所にとって、ジャパリパークはふさわしいと言えます。
セントラルパーク
ジョセフやポプ子らがキャンプをしていたのは、ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークです。まさに都会のど真ん中にある広大な公園です。
ワールドトレードセンター
ニューヨークの街に2つ高くそびえたつのは「ワールドトレードセンタービル」です。
2001年9月11日の同時多発テロ事件によって崩壊してからは「グラウンド・ゼロ」又は「ワールドトレードセンター・サイト(跡地)」と呼ばれました。現在は「1 ワールドトレードセンター」が建てられています。
この世界観は2001年以前という事になりますね。
ゲームセンターとゲームセンターCX
腕相撲の対戦相手のロボコップは、かつてゲームセンターに置かれていた「ARM CHAMPS」が元ネタ。
ということで、大川ぶくぶ先生の肩書「ゲーム実況者」は、「センター」繋がりで「ゲームセンターCX」を想起させるものであると考えられます。
ゲームセンターCXとは、フジテレビCSで放送中のゲーム番組ですが、いわゆる「実況ゲーム」の先駆けです。2003年にお笑いコンビ・よゐこの有野晋哉さんによるゲーム操作を番組で扱ったのが最初です。ゲーム実況動画は、2007年にサービス開始したニコニコ動画等の動画配信サービスが活発になってから盛り上がりを見せたものです。
ぶくぶ先生は「クリアするまで止められない」という縛りで実況をしたことがある、ということでしょうか?なんらかの実況をした実績はあるようです。
配信おわりました やっぱすごいゲームですねこれは・・・
— 大川ぶくぶ/bkub (@bkub_comic) 2017年9月30日
「中心」を想起させる心臓など
冒頭の「バラバラタイちゃん」では心臓が出てきました。人体の枢要部ということで、人間の要となる部位ですね。
また、「センターオブユニバース」「センターオブジアース」もありましたね。
Center of Universeという題名のMr Childrenの歌がありますが、ミスチルの歌詞はこの場面とは内容が合っていません。「Center of Someone's Universe」という形で「その人の人生において最も大切な」という意味があります。Center of the Universeという題名で無数の海外作品がヒットしますので、その内のどれかなのでしょう。
センターオブジアースはディズニーのアトラクションの名前がありますが、このアトラクションの元ネタはフランスのジュール・ヴェルヌの「地底旅行=Journey to the Center of the Earth」、原題:Voyage au centre de la terreという小説です。度々映画にもなっています。
さて、世界の中心が舞台となった「奇跡とダンスを」ですが、時代錯誤な表現がいくつもあります。それは「時間」を意識させるものでした。
時間にまつわる元ネタ
時間を認識させてくれる要素や、時間を巻き戻す・遡る物語がある元ネタが多数ありました。
バックトゥザフューチャー(Back To The Future)
ジョセフ(後のニューヨーク市長?)の履いている靴はバックトゥザフューチャー(Back To The Future)=BTTFの2作品目で登場した靴です。1985年から2015年の未来に飛んだマーティーマクフライが自動で靴ひもが締まる靴に驚いていましたが、現実世界でもナイキが「エアマグ」の名で発売しています。
ニューヨークの地下鉄は1980年代にはこの画像のように大変汚れており、危険な場所と言われていました。つまり今回のニューヨークは80年代のニューヨークを舞台としているという事ですね。ただ、ジョセフは2015年の靴を履いてますし、ポプ子とピピ美はなぜかスマホを持っています(笑)
ターミネーター
ロボコップを倒した後に登場するのは「ターミネーターのT-800」。アーノルド・シュワルツェネッガーでおなじみの、未来からジョンコナーを殺すためにやって来たアンドロイドですね。
FFXV(ファイナルファンタジー15)
ポプ子とピピ美が載っている車を押しているのは「ファイナルファンタジー15」のキャラクターです。FF15にも時間を巻き戻す描写があります。
時をかける少女
河川敷のシーンは、時をかける少女のパロディですね。
作中の時間表現:虫食いフィルム再び
第8話「飯田橋の昇竜」で使われた古いフィルムを回しているかのような描写として、「虫食いフィルム」がありました(私が勝手に使用している俗称です)。
第9話の他のパートと見比べてください。この話にしか、虫食いフィルムの表現は使われていません。これは、見ている映像が昔の物であることを表していると言えます。視覚をフルに働かせる必要がありました。
しかし、冒頭の海の映像はCGなのにフィルムの傷の表現を入れるという暴挙には笑ってしまいますね(笑)
ロレックス、鼓動、川の流れ、うさぎなど
タイムズスクエアという名称そのものが時に関係しますし、ブログ冒頭の画像には時計のロレックスをもじった広告がありました。アリスのうさぎも時計を強調した上に、実は時計の針が進んでいる音がずっと鳴っていました。また、ばらばらタイちゃんのコーナーでは、心臓の鼓動が鳴っていたことに気付いた方もいると思います(ヘッドフォンでないと聞こえづらいかもしれません)。更に、河川敷の場面では、川の流れる音もしっかりと入っていました。心臓の鼓動や川の流れというのは、時の経過を暗示させる要素ですね。それにしても、聴覚を酷使させる9話ですね(笑)。
また、今回は前半と後半とで音が異なる場面がいくつもありました。バラバラタイちゃんの観客の歓声が前半はあったのに後半はありませんでした。アイキャッチで女性と男性が入れ替わっている箇所もあります。
その他、ピピ美がボタンを押させる場面で「五億年ボタン」を想起した方もいらっしゃるかと思います。さすがにそれはポプテピピックと関連付けることは難しいと私は思うので、ご自身でググってどうぞ。概要としては、5億年をループするというホラーものです。
動物の鳴き声と五感
今回、アイキャッチ(タイトルコール)の場面も耳を休めることはできませんでした。
神城維来などポプピピ以外の人がコール
Aパートの大人ジョセフ役を務めた神城維来とは、"The Anime Man"の名前でユーチューバ―としても活動している方の日本名(本名のファーストネームはJoeyと思われる)。日本人とオーストラリアのハーフ。彼自身クリエイターとして作品制作をしています。バラバラタイちゃんのナレーション、8bitパートのアナウンスも担当していました。前回あれほどユーチューバ―に厳しかったのにこれだよ!
動物の鳴き声
「ポプテピピック」のアイキャッチ時に「動物の鳴き声」がしていた事に気づいているでしょうか?犬、猫、虎、鳥などの鳴き声がしました。これは、冒頭でジャパリパークがあることによると思われます。
※偶然にも、今回初参画の制作者として「ゴリラフィルム」が登場しましたね。進撃の巨人のプロモーションビデオや闇芝居のアニメ制作などを手掛けていました。
また、このように「音」に注意を促すことで、「聴覚」というキーワードを意識させるものだということに気づきました。
ポプテピピック9話は、日本語、沖縄語、英語、フランス語とただでさえ聴覚を酷使するものであるのに、更に聴覚に神経を使わせる要素があったということです。
嗅覚と味覚と触覚:フーチバー親方の新垣正弘
動物と言えば、嗅覚と味覚も敏感です。
JAPONーMIGNONでは、臭いがキツイ料理のネタがありました。それが嫌で店を変えたのに今度はラーメン屋というのも皮肉が利いています。また、沖縄語の監修を務めたのは、新垣正弘さんという方でした。沖縄では伝説的な芸人であり、「フーチバー親方」の異名があります。フーチバ―とは沖縄料理にかかせないヨモギのことです。クセの強い料理の「匂い消し」に使われています。
このように、味覚と嗅覚を強く意識させる要素もあったポプテピピック。
バラバラタイちゃん、では「手」が登場していたこと、ポプ子とピピ美がハグするシーンがあったことから「触覚」の要素も垣間見えたところです。
以上、これまで視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を研ぎ澄ます必要があるネタがこれでもかという程、執拗にありました。五感に意識を向けさせたのはなぜでしょう?他に考えられるものはなんでしょうか?
ジョセフとシックスセンス
ジョセフは奇妙な存在であるということに気づきます。ここから映画のネタバレも含みます。
「奇跡とダンスを」の世界観とジョセフの立ち位置
既に述べたように、この話のニューヨークは1980年代であるにもかかわらず、ジョセフは2015年のシューズを履いています。どう考えても時代錯誤でおかしい。ジョセフはこの世界の住人ではないのではないか?という疑問が湧きます。
時空の交差点。タイムズスクエアは、エンドレスエイトを抜けた先のスタート地点なのでしょうか?
次に疑問なのは、なぜジョセフの語りという形式なのか?という点。実は、ジョセフという名前は作中で明らかになっていないのです。スタッフロールで初めて確認できます。奇妙なことに、作中で誰とも会話をしていないということに気づきます。
「実は会話をしていない」という展開が待ち受けているアメリカ映画として「シックス・センス」が挙げられます。ネタバレなのですが、シックスセンスの設定を思い出してください。
シックスセンスと中心、時間
製作会社 スパイグラス・エンターテインメント Kennedy/Marshall
配給:ブエナ・ビスタ 、東宝東和
ジョセフはポプ子とピピ美に何ら干渉しておらず、彼女らもジョセフに気付いている描写は皆無です。
ジョセフは自分のみたいものを見ていただけではないだろうか?その理想的な舞台設定として、世界の中心で時間軸も混ざっている世界をみていたのではないだろうか?だからこそ時代錯誤な物や存在が時空の交差点において共存していた。ジョセフがゴーストバスターズによって吸い込まれないのはなぜか?見たいものをみているからではないか。
ポプ子が現世の者とコミュニケーションをとれていたのはなぜか?それはジョセフとは異なる存在だからだろう。自由の女神像の上で写真を取っているのは、彼女らがジョセフとは異なる自由な存在という事を暗示しているのではないか?
※「半目」というのは、ポプ子役の中村繪里子さんは写真を撮られるとなぜか半目の確率が異様に高いという中の人ネタでした。
そして、ジョセフが市長になった後のシーンでも、なぜか「虫食いフィルム」の表現が残っていたことが思い出されます。この表現方法は第8回では「昔に作られた映像作品のパロディ」でした。しかし、今回の映像はそのような意味なのでしょうか?今回の「映画」の冒頭を思い出していただきたい。海の描写はCGであったという事を。よって、第9話における虫食いフィルムの表現は「昔に作られた映像作品」とは異なる意味ではないか?
さらに、市長になる前と後の両方のシーンでも「虫食いフィルム」の表現が使われていたことから、市長になる前と後の世界には連続性があるといえます。そうすると、市長の演説シーンは「ジョセフが見たいシーンを見ている」シーンであると言えないでしょうか?
虫食いのようなノイズが入っている理由は、ジョセフは「ニューヨークで夢を見ていた」から。これは深読みし過ぎでしょうか?
ボブネミミッミでは夢落ちが結末である不思議の国のアリスのネタだったのは偶然か?
シックスセンスとの関連性
第9回、4つ葉のクローバー、4HIT、タイムズスクエア。4と9。そしてバラバラになった人体のパーツと即身仏のおっさん。これは偶然だろうか?
特に格闘シーン。たった4HITで体力ゲージMAXからゼロまで減らされてはたまらない。第8回ではある程度削ってからピピ美の必殺技の9HITでHPを削りきったことと比較すると、これはいささか不自然です。「4HITに合わせなければならなかった」そう考えるのが自然ではないだろうか?
シックスセンスでは「死者」を予感させる場面では必ず「赤」い物が登場していました。物語の中で色がキーファクターになるというのは古今東西変わりなく普遍的なものであるということは8回の隠しネタ考察でも指摘しました。
「赤」のリュックを常に持っていたジョセフ。リュックが映ってないときは背後に「赤電話」。これも偶然でしょうか?もちろん、ポプテピピック9回ではアメリカらしく色が雑多な感じであり、赤の色が殊更多く使われていたと言う前回のようなことはありませんでした。
ただし、先述の「虫食いフィルム」や格闘ゲームのコーナーが第8話に続いて9話でも出現していることからは、第8話をいわば「チュートリアル」のようにして9話の隠しネタに気付かせようとしているとは言えないだろうか?8話と9話は類似性がある、という事は、自由の女神が両話において出現していることからも裏付けられます。
シックスセンスの主演はブルース・ウィルスでした。そう、前回の8話で前髪を揃えたポプピピの前に現れたのは、ブルース・ウィルス扮するダイ・ハードのマクレーンだったことが思い出されます。ポプテピピックは声優が担当している別の作品のキャラクターのパロディを良く行うということからは、今回もその点が意識されているとは言えないだろうか?
このように、ある類のモノに気付くセンサーを訓練をさせておいて、更なる隠しネタを仕込むという手法は第6話でもありました。
しかし、10人中1000人という点も含め、9話の謎は多く残されたままです。
ゴーストとシックスセンス
この場面、ジョセフのポーズは「ショーシャンクの空に」のパロディですが、ポプ子が触れているのは「ろくろ」。意識高い系の会話をしているのは、意識高い系の人物がしゃべるときになぜかろくろを回すかのような手のポーズを取るというのが元ネタ。
ニューヨークを舞台にした恋愛映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(原題:Ghost)でも、ろくろを回すシーンがあるのでこれが元ネタと思われる。冒頭のゴーストバスターズといい、第9話は「ゴースト」にまつわる映画のパロディが複数あったと言える。
アマゾンプライムビデオでホラー検索すると……#ポプテピピック pic.twitter.com/a9mXqAnPpQ
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年3月6日