事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

全文pdfあり:森友国有地売却財務省決裁文書、書き換え改ざん疑惑

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森友問題について状況を整理

結論を先に書き、改ざんと書き換えの言葉の定義も踏まえて問題提起していきます。

財務省:決裁文書についての調査の結果:all.pdf - Google ドライブ
資料の出典:NHK

「森友」文書 書き換え 財務省の調査結果 全文書掲載|NHK NEWS WEB

森友問題の結論:財務省のミスとマスメディアのフェイク

結論から言って、少なくとも財務省がミスをして、それを上塗りするような「添付文書」(調書)の書き換えをしたということが言えます。

また、マスメディアもフェイクニュースを流していたことが白日の下に晒された事になります。整理しながら説明します。

国有地売却決裁時と決裁文書開示後の書き換え・改ざんの問題の整理

森友学園問題の構造

  1. 国有地売却決裁に関して政権側の関与や財務省側の不当な行為があったか?
  2. 決裁文書開示後に添付文書の書き換え・改竄があったか?

「森友問題」と呼ばれるものがマスメディアによって騒がれてきたのは、専ら1番の問題でした。2018年3月12日に明らかになったのは2番の問題。ここを間違えてはいけません。そして、ここで言うところの「関与」とは、「森友学園との国有地売却の過程において、アポイントの仲介をしたり値引きを迫るために財務省の判断に対して何らかの圧力を加えたこと」を指します。更には、そのような意味での「関与」があったとしても違法ではなく、違法となるには金銭の授受がなければいけません。

国有地売却決裁の問題 :政権側の関与と財務省側の不当な行為の有無

これは2つにわかれます。

1:国有地売却決裁に関して政権側の「関与」があったか?

結論:「関与」について、疑惑が生じる余地はない。

これは2018年3月12日の報道を待つまでもなく既に明らかになっていたものです。今回の発表でわかったことは、書き換えで中身が変わったとしてもこの点に変化はなかったという事です。書き換えの傾向を全体的に見ると、財務省と森友学園側の交渉の詳細な経緯について削除されていると言えます。

金銭の授受がなく違法性がないどころか、財務省の判断に何ら影響を与えていないということであり、「関与」はありませんでした。

では、マスメディアが報道している具体的な疑惑について、実際はどうだったのか?一つずつみていきます。

安倍総理の関与?

特例承認の決裁文書②安倍総理の名前削除

報道では、「安倍首相の名前記載部分も削除」 とありますが、該当箇所は「特例承認の決裁文書②」にあるこの部分(43ページ)のみです。

籠池氏が参加している団体として日本会議大阪が挙げられており、そこと関係する日本会議に参加している麻生太郎、平沼赳夫、安倍晋三の名前がありますが、これだけです。

安倍総理から財務省側に国有地売却を働きかけたということや、籠池氏を支援したということは書かれていません

籠池氏が「日本会議大阪代表・運営委員」であることから、安倍総理との何らかの関係をほのめかす記述があるのですが、これ以外には何ら関係を示すものはありません。籠池氏が安倍総理との関係を述べたという事すら書いてません。

財務省が籠池氏の所属団体から勝手に想像したか、このような籠池氏の主張にかこつけて特殊な案件の処理を通そうと考えたのではないかと考えられます。

何度も言いますが、このような記載のみで「政権側が働きかけた」という疑惑が上がること自体、妄想に過ぎません。

また、森友学園に来訪したことがある人として、中山成彬、三木圭恵、杉田水脈、上田小百合が紹介されているだけで、ハッキリ言って、何がいいたいのかさっぱりわかりません。

昭恵夫人の関与?

特例承認の決裁文書①昭恵夫人
昭恵夫人の名前が出てくるのは、「特例承認の決裁文書①」が掲載されている33、34ページと「特例承認の決裁文書②」が掲載されている40ページです。

特例承認の決裁文書②昭恵夫人

33ページと40ページの記述内容は同じものです。内容を補足しつつ説明すると以下です。

近畿財務局の職員と籠池氏との打ち合わせの際、籠池氏が「本年4月25日、安倍昭恵総理府人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」という発言があった。その際、籠池氏と昭恵夫人が現地で並んでいる写真を提示された。

このような内容です。つまり、「前に進めてください」と昭恵夫人が発言したかは不明。これは籠池氏の主張に過ぎません。

また、仮に昭恵夫人がこのような発言をしていたとしても、昭恵夫人は籠池氏に対してそのように発言したにとどまり、財務省側へは何ら働きかけていないということがわかります。
特例承認の決裁文書①昭恵夫人と平沼議員
報道では『「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した」とのインターネット記事内容が削除』『視察の記述も削除』というものがありました。これがなぜ削除されたのか不可解ですが、少なくともこの記述から昭恵夫人が財務省等に対して国有地を森友学園に売却することを斡旋していたなどというような疑惑を思い浮かぶ余地はありません。

複数の政治家の関与?:鴻池、平沼、鳩山議員ら

特例承認の決裁文書①鴻池議員への陳情

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特例承認の決裁文書①が掲載されている32ページと特例承認の決裁文書②が掲載されている39ページは問題となる箇所は同じ内容です。また、特例承認の決裁文書②が掲載されている35ページにも鴻池議員に関する記述があります。

特例承認の決裁文書②鴻池議員

要するに、鴻池議員の事務所に籠池氏が「陳情」し、鴻池議員の秘書が対応したということです。この後どのような展開になろうが、鴻池議員の案件にとどまり、ここから安倍総理に話が上がったという事実はここからは窺えませんし、ただちにそのように考えるのは無理があります。

次に、平沼赳夫、鳩山邦夫議員の名前があります。

特例承認の決裁文書②平山鳩山議員

これも鴻池議員と同じく、市民から議員に上がってきた陳情を受けたため、役所に対応を求めた以上の事はわかりません。至極当然の対応を両者は行ったということです。

陳情を受けた議員が実現に向けて動くか否かは議員の裁量ですし、陳情に基づいて国家機関に働きかけることはそれ自体では「圧力」や「斡旋」を意味しません。

こうした記述から一足飛びに「政権中枢の関与」というストーリーを想定できるのは不思議で仕方がありません。

小括:政権側の関与という疑惑は事実無根だということが明確に

80頁に及ぶ決裁文書のうち、マスメディアが騒いできたのは上記の部分だけです。

これまでマスメディアは散々「政権側の関与」の問題であるとして森友学園問題を騒ぎ立ててきました。しかし、このように文書が全面的に開示された結果、そのような疑惑が生じる余地すらないということが明確になりました。また、財務省の書き換え後においてもそのような疑惑が生じる余地がないという事とも明らかになりました。

特に、政治家との関係について削除された部分は、「そもそも決裁文書に記載があるのが意味不明であり、本来不要であるはずのもの」です。なぜこのような記述があったのかは、この文書で近畿財務局と森友学園との交渉の経過を見るとなんとなく見えてきます。近畿財務局は、特殊な案件の土地売却に際し、政治家の名前を出して「仕方がないから売った」という体にして決裁を通したかったのだろうということが伺えます。

マスメディアは政権側の関与の疑惑を報じていた部分は明確にフェイクニュースであり、後述する財務省の書き換え問題を「暴いた」のだとしても許されるものではありません。

2:国有地売却決裁に関して財務省側の不当な行為があったか?

書き換えが行われた事と関連する話ですが、既に高橋洋一氏や須田信一郎氏が常々発信していました。「財務省近畿財務局のミス(チョンボ)」で概ね結論は出ている話。

 pdf全体を通して、森友学園側と財務省側との交渉の経緯がすっぽりと削除されていることに気づきます。この点を隠したかった面もあるのでしょうね。

決裁文書開示後に改竄があったか? 

ここでの問題は、2016年6月頃に決裁後、2017年2月に国会議員に対して開示すらされた決裁文書の添付文書が、2017年2月~4月の間に財務省理財局の指示によって書き換えられたことが文書管理の制度上、ずさんな監督下にあったのではないか?というものです。

書き換えが行われた理由として、当時同省理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官の答弁と整合性を取るため、学園との価格の事前交渉をうかがわせる記述や、複数の国会議員との関係を示す記載が削除された、と報道されています。

2018年3月12日に財務省が発表した内容は、主にここに関わってきます。関連して、先述した通り国有地売却時点の財務省側の判断過程に問題は無かったか?という問題が加わります。

さて、ここで確認すべきなのが、「改ざん」とは何か?です。

改ざんの定義

菅官房長官は「改ざん」ではなく「書き換え」ではないか、と言っています。

この二つの違い何でしょうか?政府側がどのような意味で「改ざん」という語を使っているのか、この件についてはまだ発言していませんが、言葉の問題なので文科省のガイドラインが参考になると思います。

研究活動の不正行為への対応のガイドライン
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf

文科省のガイドラインによると、捏造と改ざんとは以下と定義されます。

  1. 捏造
    存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
  2. 改ざん
    研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。

ここから、改ざんは①既に存在している文書について、②客観的真実とは異なる内容のものに書き換えること、と定義できます。

「書き換え」の範囲

続いて、論理的に「書き換え」は以下のような場合に用いられる語と予想されます。

  1. 真実と異ならないが、元の文書とは別の事実を表すもの
  2. 真実と異ならず、元の文書の記述に別の事実が追加されたもの
  3. 真実と異ならず、元の文書の記述を削除したもの
  4. 元の文書と記述されている事実は同じだが表現が異なるもの

なお、5番目として、「元の文書が示す事実が真実と異なっており、真実と異なることが無いように記述を訂正したこと」については、書き換えをするまでもなく、訂正をすれば足りるので含めていません。

財務省の発表した資料を見る限り、多くは3番の削除や4番の表現変更であり、おそらく客観的真実と齟齬が生じる記述に変更されている部分は仮に存在したとしても極々一部にとどまると思います。したがって、菅官房長官もこれは「書き換え」ではないか?と言っているのだと思います。

ただし、これは定義の問題であって、改竄にあたらないからといって問題ないということにはなりません。特に、1~3は問題の程度が大きいと思われます。

今後は、この点についてもある時点からの書き換えができないようにする仕組みを設けるべきなのでは?罰則も設けるべきでは?という議論がでてくることを期待します。

許される書き換え 

文春が加計問題でも「書き換え」と報道していますが、これは上記で示した「元の文書が示す事実が真実と異なっており、真実と異なることが無いように記述を訂正したこと」にあたるに過ぎない。「訂正」と言ってもいい。

しかも報道においても、「古いものとセットで」作成したとあるのだから、「削除」の事実も無い。これを問題視するのは害悪でしかない。

間違いを正すこともできないというのか?本当にバカげている。

結局何が書き換えられていたのか?⇒「交渉の記録は廃棄した」「価格交渉は無かった」が削除

佐川理財局長の国会答弁で明らかに客観的真実と異なる点は以下です。

  • 「交渉の記録は廃棄した」
  • 「価格交渉は無かった」

この点に関連する記述が削除された、というのが主たる書き換え部分です。つまり、森友学園と近畿財務局の売買契約の交渉に関する記述が削除されているというのが主たる変更点だということです。

書き換えの必然性に疑問がある箇所

ただし、必ずしもこれと関連しないと思われる部分も書き換えられています。

  1. 政治家の名前が書いてある部分
  2. 森友学園の概要を示す説明文
  3. 国有地売買契約の条件についての詳細説明
  4. 小学校設置認可の条件の詳細説明

これらの内、1についての検証は以下です。

報道では『「政治家の関与」の部分として矛盾があるから消された』というものがありますが、フェイクニュースです。鴻池氏の部分が消されたのは「交渉の経緯」にかかるものであり、「交渉はしていない」と言った佐川氏の発言と矛盾するためです。

したがって、ここでも政権側の働きかけがあったのでは?というストーリーは破たんしていることが分かります。

※追記:長谷川幸洋氏のストーリー

こちらでは①佐川が書き換え方針を固めた⇒②事実と異なる答弁をした

というストーリーが描かれ、前提として財務省のミスを隠ぺいするためとのこと。

この場合でも「政治家の名前部分を削除した理由」は上記のようなものと言えるのではないかと思います。

朝日新聞、毎日新聞への忖度?

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朝日新聞や毎日新聞の名前も削除されていますね。

「きっと朝日新聞と毎日新聞が関与したのだろう。忖度したに違いない。」

……そうはならんやろ。

隠された問題点:野田中央公園の土地売却など

既に有名な話ですが、森友学園の隣接地である野田中央公園の土地売却においても、不当な値引きが為されていたのではないか?という疑惑があります。そして、それに強くかかわっていると思われる野党の国会議員も判明しています。森友学園を問題にするのであれば、そういった土地の取引についても国益に適う形で検討しようということで問題提起がされています。

森友学園問題は、表向き政権批判に使われていますが、裏ではこの問題を表面化させないようにしているのではないか?この点は大阪の闇が関係しているらしいので、立ち入りません。

また、それ以外にも、森友学園問題に関係する諸問題はありますが、そもそも森友学園問題自体が小さな問題であり枝葉末節の類のものなのでここでは取り上げません。 

結語:省庁は文書管理の徹底、メディアは反省を

国会議員に対して開示までされた文書が、その後の官僚答弁と整合性を取るために書き換えられるというのは、民主主義の根幹を揺るがすものです。そして、このような大量の作業を強いられたのは間違いなくノンキャリアの財務省職員であり、彼らの良心の呵責による心身の負担はとてつもないものだったと予想されます。

このような負の習慣が財務省にあると疑われるのですから、一度解体して浄化すべきでしょう。こんな財務省が推進してきた消費増税も凍結すべきです。税の申告の際に国民は細かくチェックされるのに、そのチェックをしている国家機関の側がこのような不正を働いている事には怒りを覚えます。

そして、忘れてはならないのは、この森友問題は早くから財務省の問題だという指摘があったにも関わらず、延々と「政権側の関与」という疑惑をかける事すら困難な事案をでっち上げて国会期日を無駄にした野党とそれを煽ったマスメディアの罪です。1日あたり約3億円が無駄になっていますし、別の法案の審議決議も止まっています。

既に述べましたが、マスメディアの報道によって財務省の文書書き換えが発覚したと言うことができたとしても、それは国会期日を無駄にさせた扇動行為を治癒させるものではりません。マスメディアはこの点を誤魔化して財務省の書き換え問題を騒ぎ立てるでしょうが、この点を埋もれさせないようにするのが国民の役目だと思います。

「財務省が悪い」で終わるのではなく、必要な文書管理体制が敷ける法整備を与野党で議論されることを願い本稿を締めたいと思います。

以上