民営化ガー
- 西仙台ハイランド団地の断水継続
- 「専用水道」の事案に過ぎないものを"民営化"
- それでも「民営化の問題なのだ」と強弁する人たち
- コンセッション方式と水道管更新のPFIでの民間委託
- 行政が水道を管理運営していて復旧が遅れた例はいくらでもある
西仙台ハイランド団地の断水継続
西仙台ハイランド団地の世帯で民間企業が管理している水道が断水し、復旧のめどが立っていないという報道。理由は「工事にお金がかかるから」という企業側の弁。
これについて「民営化の弊害」や「民営化の際の試金石」といった論調で論じられていますが…
『仙台市内の団地でなお断水続く 民間管理の水道』
— Simon_Sin (@Simon_Sin) 2022年3月24日
水道を民営化したらどうなるか?のテストケース
しかもこれ、作業が遅れてるとかじゃなく「復旧の見通しが立っておらず、市は住民や事業者と断水解消にむけ、協議したい」って状況なんだぜ
インフラを民営化したらアカンよhttps://t.co/PbVhYxfSbk
いつもの界隈が騒いでますが…
今回の事案は、「専用水道」というまったく別の事案です。
「専用水道」の事案に過ぎないものを"民営化"
最も事情が載っているのは地元の河北新報によるこの記事ですが、この記事のシェアにすら、「専用水道」という文字を無視して「民営化」の問題とするツイートが大きく3つ拡散されています。
Hoaxy® by OSoMeで可視化できるのでSNSでの拡散状況を把握したい方はどうぞ。
青葉区新川(にっかわ)の団地の(たった)50人に影響。
名称からピンと来る人がいると思いますが、ニッカウヰスキー工場の近くです。
※ニッカは「日果」であり、もともとは北海道の余市町に工場を持っていたところ、仙台工場を作る際にたまたま「にっかわ」近くが適していた。
要するに山奥の地域の話。しかも新たに開発された土地なので、古来からの住民が巻き添えを喰らったなどという事情もおそらく存在しません。
それでも「民営化の問題なのだ」と強弁する人たち
このニュース、そもそも民間企業の作った『専用水道』だから関係ないとか電気やガスは民間なのにみたいな引用リプがたくさんついてますが、専用水道のように民営になるとこういう事態が起こりうるので各地で水道事業の売却の話が出ている今しっかり見るべきニュースですし全然関係なくないと思いますね https://t.co/P1JYew8Usp
— Albizia🏳️🌈🏳️⚧️ (@Albizia_jewelry) 2022年3月24日
これを特殊な例として「こういう事情のある団地は仕方がない」という見方もあるようですが、そこに生活する人がいる以上、ライフラインの確保は保証されなくてはなりません。このような非常事態に、管理する企業が「直したいが、金がかかる工事はできない」と言うような状況はあってはならないのです。
— Katz💙💛@PanTraductia (@PTraductia) 2022年3月24日
それでも「民営化の問題なのだ」と強弁する人たちが居ます。
しかし、今回の事案は、たとえるなら「マンション内の配管に問題が生じて給水ができない」ということとほぼ同じです。
マンションの所有権・運営権は民間が持っていますから。
この話も2018年当時SNSを賑やかせましたが、まったく何も学んでいないようです。
仮に、コンセッションの場合であったとして考えてみると
- 民間企業が事業継続困難になる
- その後、一定期間の間、県が契約解除しない
- その間に今回のような地震といった変災が発生して水道管に問題が生じる
これらの事情が重ならないと今回のような事態にはならない。
コンセッション方式と水道管更新のPFIでの民間委託
宮城県のコンセッション方式は、水道資源・設備の所有権は行政が持ち、水道事業の運営権の設定を民間に対して行い、民間が運用するものです。
その対価を行政が得ています。
宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)募集要項等の公表について - 宮城県公式ウェブサイト
他方、大阪市で計画されているのは老朽化した配水管の更新を民間に委託するものであり、また違った形態です。
大阪市、水道管の更新事業が長期化へ 「民営化」方針が頓挫:朝日新聞デジタル
これらをも「民営化」だとして表現する者も居ますが、本来、「民営化」と言われていたものとは形態が異なるものであり、不用意な用語法です。混乱・煽動したい人らの用語法です。
今回の西仙台ハイランド団地の事例も、株式会社青葉ゴルフが【1972年に仙台ハイランド(現在廃業済み)用に造成した土地を丸々管理してた】というものです。
『最初から全部民間がやってた』私設水道なのであって「民営化」ではありません。
この会社は2006年に民事再生法の適用となってるが、仮に水道事業売却が為されていたらこの時点で解除可能でした。その事がコンセッションの契約に盛り込まれています。この程度のことは当たり前にして行政も考慮しているわけです。
コンセッション方式にしたって問題が生じることはあるでしょう。
それは行政が完全に運営していたら発生していなかったであろうこともあり得る。
想定していないものも発生するかもしれない。
それは契約内容の限界なのか、運営方式の限界なのか、後者だとして他のメリットとの総合で判断される話。
そもそもなぜ民営化やコンセッション方式の話が検討されていたのか?
行政ではメンテナンスが行き届かず、コストもかかる。このままでは今後は水道料金の大幅値上げが避けられない場合もあるため、住民負担を軽減する方法として考えられたという経緯があります。
それを無視して「水道料金が値上げされた」⇒「だから民営化が間違いだ」という短絡思考に陥るのはとても楽ですが、お勧めはしません。
行政が水道を管理運営していて復旧が遅れた例はいくらでもある
しかも、行政が管理してる場合でも復旧が遅れた例なんていくらでもある。
東日本大震災の際は仙台の街中でも暫くは水道が使えない地域が発生しました。
個人の主観ではマンション内の水道管の問題との混同があり得るが。
3月29日にほぼ市内全域の復旧が完了した
18日、2週間以上経過しています。
しかもなおも一部の地域では断水が発生していました。
今回の震度6強の地震から1週間ですが、復旧のめどが立っていないということからは、逆に「公営化」のケースとなるかもしれません。
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