8話のもう一つの隠し要素:騙す、欺く
前回8話の隠し要素について書きましたが、紙幅の関係で書けなかった隠し要素を改めて指摘していきます。
指定暴力団"bamboozle gang"
ポプテピピック8話の北米版では、竹生会は"bamboozle gang"と訳されていました。
"bamboozle"とは、「騙す、欺く」という意味があります。「竹」の"bamboo"と似ている単語がれっきとして存在するのは笑えますね(笑)
これは8話の主なパロディ元である「仁義なき戦い」の物語の根幹に関わってきます。
仁義なき戦いのストーリー
「仁義なき戦い」は、広島の暴力団抗争を描いたノンフィクション小説を基に作られた映画です。美能幸三が獄中で書いた手記を基にされています。いわゆる「任侠もの」のような義理人情に厚いヤクザという描き方はされず、社会悪としての実在のヤクザを描いた当時としては画期的な作品です。暴力や裏切り、金に汚い描写など、殺伐としたシーンが続きます。
「騙し、欺く」ことでしか暴力団員として生きていけない。最初は仁義があったが、そのような卑劣な手段が横行した結果、次第に仁義はなくなっていった。そんな悲しさも感じられる作品でした。
ポプテピピック8話の隠しネタ要素としても、騙す、欺く、ものが至る所で見つかりました。今回は前回の誌面には収まらなかったそれらをベースにして、9話以降の展開も予想してみたいと思います。
1「騙す」を暗示させるネタ
騙す、欺くを想起させるパロディ元があるネタが隠されていました。
声優の3人が諸葛孔明:孔明の罠
小野坂昌也さんは三国無双シリーズ
浪川大輔さんはFate Grand Orderの諸葛孔明(エルメロイⅡ世)
諸葛孔明〔エルメロイⅡ世〕 - TYPE-MOON Wiki
小西克幸さんは三国志大戦
なぜ諸葛孔明だと「騙す」なのか?史実において敵を欺き戦を勝利に導いていることからは自然と思われるが、ネット上で「孔明」と言えば「孔明の罠」であり、このせいである。
特にアクションゲームの動画などで「初見殺し」と呼ばれるような、隠されていたり予測しないと回避不可能であったりする罠など、理不尽なトラップに対して「孔明の罠」というワードが半ば作り手への賛辞の意味も込めて飛び交う。全編通じて孔明の罠ばかりのゲームは以下の動画が有名である。
カイジ:ざわ…ざわざわ…
ポプの葬式でピピが登場するシーンで組長らが「ざわ…」と言っていたのは賭博漫画「カイジ」シリーズの擬音語が元ネタ。
2:誤認、錯誤に基づく騙し
パロディ元があると言うよりは、相手方の認識に齟齬を生じさせるような行為が行われていました。
声優すら騙す?ポプテピピック制作陣
エイッサイー、ハラマスコイーをやりたくて、めちゃくちゃ練習していったのに、俺じゃ無かったんです。スタジオで、一人でやってました。
— NEW YOUNG(小野坂昌也) (@masayangest) 2018年2月24日
Aパートの五十嵐裕美さん、松嵜麗さんもエンディングで「何で私たちアニメに出てないの?」と言ってるように、声優すら騙していた(と思われる)ポプテピピック制作陣。敵を騙すにはまず味方から。まるで諸葛孔明ですね。
エンドレスエイトではなかった
アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」において8話連続で同じ場面を扱いながら微妙に異なる描写がされていたシーンのパロディだが、結局放送内容は変わらなかった。これに騙されて1時から5時までずっとポプテピをつけっぱなしだった者も多いだろう。
枯れ木に小麦粉、ポプ生き返る、など
花さかじいさんの原作では臼を燃やした灰を木に散りばめるのですが、小麦粉で騙していました。ポプも死んでいるのに生き返って葬式に集まった人を騙した形になりました。
3:複数の可能性を想定させて騙す
選択肢が多いと誤った結論を出してしまう可能性があります。
宮っこ、自由の女神
「宮っこ」は原作者大川ぶくぶ先生の地元である兵庫県西宮市の地域情報誌であることは前回示しましたが、もともとの意味は地域名に「宮」がつくところの住民である。大宮や宇都宮という選択肢はぶくぶ先生の出身県で対象から外れるとしても、三宮町や五色町都志大宮(ごしきちょうつしおおみや)、別宮(べっくう)など複数の候補が残っていた。
自由の女神も世界中にある。元はフランスに始まりアメリカ、日本にも複数存在する。日本国内においても東京お台場が有名だが横浜の鶴見や兵庫県の太陽公園内にも自由の女神がある。宮っこという事からここの自由の女神かと思われた。しかし、消防ヘリコプターの型式である「ドーファンⅡ」が神奈川県内の消防航空隊や兵庫県消防での配備が確認できないことからフェイクである。
正信偈は東本願寺のものではない
ポプの葬式シーンで読まれた読経は西本願寺の正信偈であると特定された。
正信偈(草譜) 浄土真宗本願寺派(西本願寺) お経 やや早め 聞き流し用 https://t.co/c36Bmt5u1i
— よしお@宝石の国 (@yoshiorfevre) 2018年2月24日
なお、ポプテピで流れてのこれですねwww 真宗大谷派とは違うんですよw
東本願寺においても正信偈は存在する。しかし、その読み方などで異なるという事が分かる人にはすぐにわかるらしい。
ボブネミミッミの隠しネタにおける騙し
ボブネミミッミでのエイサイハラマスコイ踊りは、背景にランドマークタワーが見えることから、有名な「山下公園」ではないかと思われた。実際に騙されたツイッターユーザーも確認できたが、赤レンガ公園であった。
ポプテピピック8話考察
— なかのひと (@yukkuriNANAYON) 2018年2月25日
①現在の車両は菱形パンタグラフに戻ってるけど、ポプテ側はシングルアーム
②ホーム中央の白い横向き看板には本来「銚子電鉄ホーム」と記載があるが、ポプテ側は無く位置も違う
③同ホームに現在LED街灯があるが、ポプテ側には無し#ポプテピピック #銚子電鉄 pic.twitter.com/DeJdRuItsn
また、逃げる際に使用した電車は「電鉄」とあることから、神奈川県の電鉄と言えば「江ノ島電鉄」を考えるのが当然であるところ、事実は千葉県の「銚子電鉄」であった。しかも色は実在していることが確認できない。
姫路-小豆島(福田港)フェリー時刻表/運賃料金 | 小豆島WEBマガジン
さらに、フェリーも山下公園のものかと思われたが、四国フェリー福田港の「第八おりいぶ丸」であった。
視聴者への攻撃と壮大な欺きの可能性
ポプテピピック8話の位置づけ
以上みてきたように、ポプテピピックは視聴者に対しても欺く攻撃を加えてきた。
竹生会を"bamboozle gang"と訳したのも、欺くという隠しテーマを意識してのものと考えざるを得ない。既に前回考察にて、ポプ仮釈放のときに「十月吉日」というテロップがOctober=8の月という隠しネタを見ている。よって、ポプテピピックはこのような意味づけをしかねない。
さて、ここで今回の騙しは第8話のみの話なのだろうか?という疑問がよぎる。その根拠は、AbemaTVにて8コマ連続放送という暴挙を行ったことである。これは表向き「エンドレスエイト」を想起させるものであるが、もっと身近に意味深な表現がある。
それがOPの主題歌「POP TEAM EPIC」の歌詞に含まれている。
POP TEAM EPICの歌詞とプロモーションムービー
歌:上坂すみれ。楽曲・歌詞:吟(BUSTEDROSE)
POP TEAM EPIC 【初回限定盤】CD+DVD
歌詞のサビ部分を抜粋する
繰り返し
思い描くスピログラフ
破壊と創造の幾何学模様
打ち切りの先でまた会えるよ
パラレルワールド旅して
散りばめる願いに気付いて
世界をリメイク
これまで世の中に存在しているアニメの展開を知っている者の中には、ここからポプテピピックは「ループ物」 であるという考察をする例も見られる。『今回のエンドレスエイトはポプテピピックは「ループ物」であることを暗示している』と。実際、ギャグ漫画なのに最後はシリアス展開で終わった作品や、最終話でメタ発言連発してループした「ヘボット!」というアニメも存在する。
そもそもエンドレスエイトは8を横にしたら「無限∞」を意味するというところから来ている。
キングレコードの公式アカウントが設置している上掲のプロモーションビデオでもハムスターの回し車が一瞬だけ意味深に写っている。したがって、制作陣は、視聴者が「ポプテピピックはループものではないか?」と考察するところまでは余裕で見越していると考えられる。パロディもののアニメが放送された際、検証・考察する存在がネットで登場したことも、当然にして制作陣は把握しているであろう。
実はこのプロモ、最後まで流れず中途半端に終わる。プロモの内容に「ネタバレ」が含まれているのではないか?と思わせる運用である。他にPOP TEAM EPICで検索してもプロモーションムービーがある動画がヒットしないのは、キングレコードが本気で消しにかかっているという事だろう。それは考察の答えを最後まで特定させない工作のように思える。
意味深な表現:マンダラ、ミラーシステム、無限
画面上部中央に注目。
格闘ゲームにおいて、この位置には制限時間が記述されているのが通常である。
しかし、今回は「無限∞」である。
そして、ポプ子にHITしたコンボの数は8ではなくなぜか「9」となっている。ここまで数多の「八」に関する描写をしてきたことに比較すると、奇妙である。これは、ここでは【「∞」は単なる「八」の隠しネタではない】という事を示唆するものと言えるだろう。
歌詞で言えば、「繰り返す」などに相当する。
こちらのシーン、背景にあるのは単純な構造ながら「スピログラフ」を思わせる幾何学模様である。そして、最終的には複数の顔が一面に集まる姿は、「曼荼羅(マンダラ)」のようである。そのための仏教描写。葬式ではフラワーアレンジメントが施されていた。
ポプが仮釈放されたとき、「娑婆(しゃば)の空気はいいねぇ」と言ったことも、歌詞の後半にある
バイバイ ララバイ バイバイ シャバイ ミライ
マイカイ ブレナイ バイバイ シャバイ パラダイス
というところに同じ表現が出ている。
こちらはピピに「ミラーシステム」(ミラーニューロンシステムとも)が発動している場面である。ミラーシステムとは、「他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように"鏡"のような反応をすること」である。
鏡はmirrorだが、millerは粉屋である。小麦粉が桜を咲かせたのは…
ミラーニューロン - Wikipedia
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/18/2/18_2_343/_pdf
そして、刑務所と言えば常に行動が管理されるディストピアの要素がある場所である。
ディストピアとは (ディストピアとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
歌詞の単語が散りばめられた8話
上記に挙げた他にも、ポプ子とピピ美が前髪を切ったのは「デザインを変えた」とも言える。ポプが生き返る時に引き金を引いた拳銃は薬室(Chamber=チェンバー)が外部から見える回転式拳銃である。最大で5~6発の弾を込められるのに、なぜか3発しか入っておらず、空の状態で引き金を引いて薬室が回る様子まで細かく描写されていた。
薬室 - Wikipedia
もうお分かりの通り、POP TEAM EPICの歌詞にある重要単語が、ポプテピピック第8話に散りばめられているのである。制作陣が8話をエンドレスエイトするのは、第8話が重要な回である、という考察は、的を射ていると言えよう。
これは私が確証バイアスにかかっているだけなのだろうか?
ポプテピピック9話以降の展開
さて、いろいろと指摘をしてきたが、上記の要素に視聴者が気づくのも
「お釈迦様の掌の上」であろう。
ポプテピピック制作陣は、そのように考察する視聴者を「騙し、欺いている」。8話の仁義なき戦いに通底するテーマからは、そう言えないだろうか?
9話以降、ループ物をほのめかす描写が度々出てくると思われるが、エンドレスエイトからループ物を想起する我々視聴者に対して
「あ、だぁ~まさぁ~れた~。これただのクソアニメだっつ~のぉ~」
などと、ほくそ笑むに違いない。
#ポプテピピック考察班 っていうタグがあるけど、ループ物の予想が話題になっているらしい。でも、私はPPTP制作陣はこの考察を読んでいて、考察が当たっているか外れているか議論が勃発するような終わり方をすると思っている。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年2月27日
【明確な答えは示さない】
これがPPTPの表現方針ですからね。
もしかしたらヒントはDVDのメイキング等でほのめかされるのかもしれませんね。