事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

知念実希人の「外国人差別」と李琴峰の「政治活動」についてまとめて突っ込み

知念さん、何してくれてんの?

知念実希人の李琴峰への「差別」ツイート

知念実希人の「外国人差別」と李琴峰の政治活動

知念実希人(ペンネーム)氏と李琴峰(ペンネーム)氏とのいざこざについて。

本件については李琴峰氏がまとめています。

【解決済み】知念実希人さんによる国籍差別発言に関連して|李琴峰|note

ここでは「安倍さんの難病を揶揄」の点は捨象し、両人の発信の問題点を整理します。

李琴峰のツイートは「政治活動」なのか?

政治活動=政治運動」の法的な定義はありません。

公職選挙法上の「選挙運動」(一般に選挙活動と言われることも)との関係で「政治活動」との違いが語られることはあるのですが、同法では両者の扱いを分けているものの定義は書かれていません。

ただ、政治活動とは「政治上の目的をもって行われるすべての行為から選挙運動に該当する行為を除いた一切の行為」と一般的に解釈されています。

参考:https://www.kokuseijoho.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/12/seijikatudou-dai4ji.pdf

選挙運動は判例によって以下定義されています。

  1. 特定の選挙において
  2. 特定の候補者の当選を目的として
  3. 投票を得または得させるために、直接・間接を問わず選挙人にはたらきかける行為

李琴峰氏のツイートは選挙運動に当たらない事は明らかです。

では「政治活動ではない」のか?

ぶっちゃけ「政治と関係ある事柄」は非常に多いことに気づきます。

外国人の生活環境がどうの…という呟きも、それを関係各所に改善させようとする効果があるので政治であると言えますし。観光名所に英語の案内標識を増やしてほしいとかいう話も、政治的な効果はあるでしょう。選挙とは関係しないだけで。

「入管収容施設での外国人の処遇を良くしろ」というのは典型的な政治活動でしょう。

李琴峰氏の場合、たびたび日本国の統治機構や日本人の投票行動に関わる話をしています。以下でまとめていますが、李琴峰氏自身が、「政治の領域」に関わる内容のツイートを何度も繰り返しています。

その上で、今回の李琴峰氏のツイートは「思い切り野党に任せてみてはどうか」と言っているので、日本人の投票行動に変化をもたらす言動をしているため「政治活動」と言われても何ら文句は言えません。

政治活動と日本国憲法:マクリーン判決と在留許可更新

では、外国人は「政治活動」をしてはダメなのでしょうか?

そんなことはなくて、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き」外国人にも憲法上の保障が及ぶものと解するということが最高裁判例のマクリーン事件判決で書かれています。

この事件では①出入国管理法案粉砕ハンガーストライキを支援するため、その目的等を印刷したビラを通行人に配布、②各反戦活動、③米国要人来日反対活動が問題になりましたが、憲法上の保障を受けるとされました。

ただし、憲法の保障を受ける行為(この場合は政治活動だとして)をしたことが在留許可更新の際に消極的な事情として斟酌されないまでの保障が与えられているわけではない、とされました。

したがって、李琴峰氏の何らかの発信内容を問題視して在留許可更新をしない、という判断が為される可能性は常にあるということです。

また、判例は「(外国人による)憲法の保障が及ばない政治活動」というものもあり得るということが予定されていますが(ただちに違法だということではない)、「選挙権・被選挙権の行使・国民発案・国民表決・国民罷免」はその典型でしょう。

では、「選挙運動」はどうだろうか?

選挙運動と外国人の憲法上の権利保障

改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドラインのQ&Aでも外国人による選挙運動は禁止されていないと書いてます。

外国人からの献金などが禁止されているにとどまります。

ただ、選挙運動は、違法であるとして禁止されてるわけではないというだけで、それが憲法上の保障を受けるかはよく分かりません。

私は「外国人の選挙運動」には憲法上の保障を及ぼすべきではないと考えます。

選挙権・被選挙権等が国民固有の権利であることから、その権利行使の意思決定に外国人が強い影響を与えることは、主権国家の存立基盤を脅かすことになるからです。

なお、「外国人の選挙運動は禁止するべき」とまで言っているのが高市早苗議員です。

さて、李琴峰氏のツイートは「野党に」と特定の政党を名指ししたわけでもないですから、明らかに選挙運動には当たりません。

また、「ヘイト」でもありませんから、この点で知念氏のツイートは不当なものと言えるでしょう。

ただし、「自己の権利とは無関係なところで日本人の投票行動に変化をもたらす・期待する言動」として、「選挙運動ではないが憲法上の保障を受けない政治活動」に分類される余地もあるのではないかと思います。

このような意味で知念氏が主張するなら支持するのですが…

知念実希人医師のツイートは「外国人差別」なのか?

既述の通り、一連の李琴峰氏の発信からは「政治活動」と見られても仕方のないのであり、その点の知念氏の指摘は何ら問題ない。

ただ、知念氏の主観的には「外国人の政治活動=禁止されているもの」という認識であり、ツイートを見た者もそう受け止める余地のある内容だったと言えるでしょう。

知念実希人の「外国人差別」と李琴峰の政治活動

しかし、知念氏のツイートは「外国人差別」なんだろうか?

人種差別撤廃条約の締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別

あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の1条2項には以下書かれています。

2 この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。

ここで言う「市民」とは「自国民」の意味です。

外務省の「人種差別撤廃条約Q&A」では以下解説されています。

Q4 「国籍」による区別は、この条約の対象となるのですか。

A4 この条約上、「人種差別」とは、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」差別と定義されていることより、「国籍」による区別は対象としていないと解されます。この点については、第1条2において、締約国が市民としての法的地位に基づいて行う区別等については、本条約の適用外であるとの趣旨の規定が置かれたことにより、締約国が行う「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いはこの条約の対象とはならないことが明確にされています。
 ただし、「国籍」の有無による異なる取扱いが認められるかは、例えば、参政権が公権力の行使又は国家の意思の形成に参画する行為という合理的な根拠を持っているように、このような取扱いに合理的な根拠のある場合に限られ、例えば、賃貸住宅における入居差別のように、むしろ人種、民族的、種族的出身等に基づく差別とみなすべきものは、この条約の対象となると考えられます。

「不合理な別異取扱い」が憲法14条違反となる差別です。

冒頭の知念氏ツイートが引用している李琴峰氏のツイートのような「選挙運動ではないが憲法上の保障を受けない政治活動(私見)」(※法的に禁止されているわけではない)をしている外国人に対して「日本でそういう言動をあまりしてくれるなよ」と言うことまでもが「外国人差別」になるんでしょうか?

私の見解では、これは「外国人差別」には当たらないと考えます。

したがって、知念氏は他の発信も相まって謝罪が妥当であるにしても、以下のツイートのように「差別的・差別意識が肥大」であると表明するのは、日本人にとっていい迷惑です

まとめ:知念実希人医師の本当の問題は別のところにある

ルールブック通りでした。

そんな趣旨で発言したのではない。

この人、新型コロナに関する情報発信で得た拡散力(フォロワー数)を利用して、何らかの流れに乗っかって評論家気取りのことをしているのですが、オリンピック・パラリンピックに関して腐すようなことをしていました。

その点については改めないようです。

以上:はてなブックマークをして頂けると助かります。