TwitterのDappiとワンズクエストの関係の疑惑について。
- 小西洋之議員の名誉毀損訴訟とDappi騒動
- Dappiの行動と会社運営疑惑と政党関係疑惑
- BuzzfeedがIT法人ワンズクエストの情報を記述するも…
- Buzzfeedが修正した「関係者向け国会資料を事前公開」
- 「自民党による工作」ストーリーは正しい?
- Dappiが特別視されている謎:匿名が悪いのか?
- Dappiアカウントがよく取り上げていたのは日本維新の会の足立康史議員
小西洋之議員の名誉毀損訴訟とDappi騒動
「Dappi騒動」とでも言える言説が広がっています。
ツイッターの有名右派アカウントは「自民党」取引企業? 立民・小西議員が名誉毀損で提訴 - 弁護士ドットコム
「Dappiのツイートは名誉毀損」立憲議員がウェブ関連会社提訴:朝日新聞デジタル
発端は立憲民主党の小西ひろゆき議員が、Twitter上のDappiというアカウントの小西議員に関する投稿が名誉毀損だとしてプロバイダー社が訴えられ、発信者情報開示決定がなされたことに始まります。
従前からDappiに関する疑惑があり、それが今回クローズアップされたという形。
※追記:発信者情報開示請求が係属中の段階では、小西議員のTwitter投稿から問題視された可能性のある投稿の一つとして国会質疑を取り上げたものではないかと書きましたが、上掲朝日の記事で法人に対して訴訟提起されたのは10月25日の投稿であると判明しています。
令和2年(2020年)10月25日の産経新聞に掲載された門田隆将氏のコラム中「また東京では翌6日、民進党の杉尾秀哉、小西洋之両氏が財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺はその翌日の7日だった」という部分を縮めて「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」と書いたことが問題視されていたようです。
なお、当時の赤木さんは休職中であり、近畿財務局に勤めていた彼と、東京の財務省に乗り込んだ2議員が吊るしあげたとされる職員が同一であるとは思えないが…
Dappiの行動と会社運営疑惑と政党関係疑惑
Dappiアカウントには凍結された前アカウントの時代から「会社が運営している」「政党関係者がやっている」という疑惑がありました。
その理由として「土日を含まない9時5時での活動時間」や、さらには投稿内容も野党側やマスコミを批判し、与党側を賞賛する内容である点が挙げられていました。
もっとも、投稿時間については現在は夜もあり、土日が完全に無いかというとそうでもありません。
また、後述しますが、「Dappiの投稿は与党側を賞賛する内容」と言い切ることはできないものがあります。
BuzzfeedがIT法人ワンズクエストの情報を記述するも…
Buzzfeed 2021年10月11日 野党批判を繰り返すアカウント「Dappi」の運営法人?自民党支部や国会議員が取引、政治資金収支報告書などで明らかに 籏智 広太
「Dappi」に関わっている可能性があるのは、東京都内に本社を置くWEB制作会社。
法人登記によると、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。
民間の信用調査機関によると社員は15名。得意先には「自由民主党」の名があがっており、取引先銀行には大手銀行の衆議院支店の名前もあった。
BuzzFeed Newsが政治資金収支報告書などを調べたところ、同社との取引が確認できたのは、小渕優子・元経産相(衆院群馬5区、党組織運動本部長)と、同党東京都参議院比例区第18支部。
小渕議員の資金管理団体である「未来産業研究会」の政治資金収支報告書には、少なくとも2011年と2017〜19年に同社に対し、ホームページ関連の支払いがあることが記されていた。
4年間の支払い額は計193万7400円。この間、小渕氏は自民党幹事長代理や党組織運動本部長代理、政務調査会長代理などを務めている。
2019年:ホームページメンテナンス計26万1600円、Webサイト制作83万1600円
2018年:ホームページメンテナンス計25万9200円
2017年:ホームページメンテナンス計27万円
2011年:サイトメンテナンス計18万9000円、ホームページ作成12万6000円
さらに2017年の官報には、自民党の「東京都参議院比例区第18支部」の政党交付金使途等報告書に、宣伝事業費として、ホームページ運用管理費計18万9000円を同社に支払った旨が記載されている。
また、支部の政治資金収支報告書には、少なくとも2014年に、この会社に「レンタルサーバー・Webサーバー保守費」として計34万4268円の支払いがあったことが記されていた。
支部の代表は、当時参議院議員だった堀内恒夫氏。読売ジャイアンツの元監督だ。同氏は13年7月の参院選比例区に立候補。落選したが欠員により繰り上げ当選した。16年の参院選では再度落選。支部も同年で解散している。
法人名は伏せているものの、ここまで具体的に書いている中では法人を特定することができてしまう。なぜなら政治資金収支報告書は公開情報だから。
2018年にホームページメンテナンス計25万9200円の支払いは以下で確認できる。
総務省|政治資金収支報告書|令和元年11月29日公表(平成30年分 定期公表)|国会議員関係政治団体(政党の支部を除く。)|「ミ」から名称が始まる団体
未来産業研究会⇒https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20191129/1052000033.pdf
ほかの報告書の記述も「株式会社ワンズクエスト」と一致しているのが明らか。
9月3日にDappiの発信者情報が開示された後、10月6日に「中の法人」に対して訴訟提起されたため、それ以降は閲覧制限の申立てが為されてなければ訴訟記録は公開。裁判は公開が原則なので、法人名が判明するのは自明の理、そこは問題ない。
ただ、法人名を出す(法人名に繋がる情報を出す)なら、その扱いは慎重になるべきでしょう。
Buzzfeedが修正した「関係者向け国会資料を事前公開」
10月11日魚拓⇒https://archive.is/TxNNU
実はBuzzfeedの当該記事は修正されている箇所がある。
「関係者向けの国会資料を事前に公開」⇒「関係者向けの国会資料を投稿」
話題の某右派アカウントについて、「一般人は入手不能な議員向け資料を投稿していた」という言説がありますがこれは誤りで、当該投稿より前に議員本人が公開しているためこれを転載したものと思われます。https://t.co/BGzGfbE5mchttps://t.co/IxJ3OVISkE
— ネット上の情報検証まとめ (@jishin_dema) 2021年10月10日
明日(1月29日)13:31から14:08の予定で、参議院予算委員会でカジノ問題や自衛隊中東派遣問題について、安倍総理に対して質問します。タイムテーブル(予定)をご参照ください。
— 福島みずほ (@mizuhofukushima) 2020年1月28日
NHK総合テレビまたは参議院インターネット審議中継https://t.co/eREgN1TZdd
で是非ご覧ください! pic.twitter.com/KIftDnP0yE
【明日の野党質問者一覧】
— Dappi (@dappi2019) 2020年1月28日
蓮舫(二重国籍問題)
徳永エリ(公選法違反で起訴猶予)
石垣のり子(高橋洋一氏をファシストとレッテル貼り)
杉尾秀哉(松本サリンの被害者を犯人扱い)
福島みずほ(猿馬見れんだろ大会)
森裕子(国会で原英史氏を犯罪者扱いし逃亡)
顔ぶれがエグイ…#kokkai pic.twitter.com/wzDSRFCREw
福島みずほ議員⇒午後3:30 · 2020年1月28日
Dappi⇒午後7:41 · 2020年1月28日
画像を比べると印刷時の影の形が一致しているのがわかります。
福島議員の画像の方がsizeが大きくクリアな画質なのに対してDappi氏の画像は縮小されて画質も粗くなっているのが分かりますから、同じ画像についての投稿のタイミングが先後したわけではなく、福島議員の画像をDappi氏が利用した可能性が極めて高い。
この修正については「関連記事はこちら」の下に「おすすめ記事」の上に以下の記述があるだけ。これでは魚拓が残っていない限り・魚拓を確認しない限り、どこが修正されたのか分からない。
UPDATE
2021年10月13日 0:50
一部記載を修正しました。
Buzzfeedは紙面でファクトチェックを度々しているが、そうした媒体が重要な内容の修正の経緯をきちんと書かない、掲載位置がユーザーの目に付かない場所に設置されている、というのは望ましくないでしょう。
単純な表記ミスなどではなく、それにより「Dappiが一般人は入手不能な議員向け資料を投稿していた」という言説が広まっているのですから。
「自民党による工作」ストーリーは正しい?
現在振りまかれているストーリーは【自民党(関係者)からDappiアカウントに対して対価を支払うことでTwitter上で情報を歪めて拡散する工作をしている】というもの。
注意すべきは自民党(議員の政治団体等)からワンズクエストへの支払いがあったからといって、Dappiアカウントの運用とイコールであることを意味しないということ。
- 党or党内の誰かからTwitterの発信に対して報酬を払っていた実態
- 単に自民(+α)の一部議員のシンパである社関係者の単独犯
Twitterの発信との対価関係が証明できなければ、①のストーリーは成立しない。
自民党(関係議員・政治団体)からIT関連の仕事を受注して対価を得ている、というだけなら、そんな会社はいくらでも存在します。
小西議員からDappi投稿時の回線を契約していた法人に対する名誉毀損訴訟において、Twitterの発信との対価関係が明らかになるとは思えない。
②の可能性も残っています。Dappi氏の投稿頻度は1日あたり3.6回で5日稼働に直しても1日あたり5回の投稿。国会動画を編集したり画像を拾って投稿するだけなら、デスクワークの片手間(隙間時間)でも可能でしょう。
Dappiが特別視されている謎:匿名が悪いのか?
疑問のもう1つは、ここまで法人情報を詳細に挙げてまで取り上げるのはなぜか?というもの。
最初に言うが、「名誉毀損訴訟がまだ係属中で違法とは決まっていないのに」という声があるが、それは関係ない。既にDappiアカウントが国会質疑を切り取りしていた例があることは明らかで、その観点からの追及はあり得るから。
しかし、同様のアカウントなんてたくさんありますよね?
「支持政党名や所属を隠して」+「情報を歪めて伝える」のうち問題なのは後者では?
所属や支持政党を隠しているのがまずい?ならば野党系の「異邦人」とか「Dr.ナイフ」とかはどうするんでしょうか?特に後者は朝日新聞に寄稿までしている。
Dappiの場合はそこにさらに「政党関係者から対価を受けて発信している疑惑」点がクローズアップされていますが、仮にそうだとしてそれって何が悪いんでしょうか?
「情報を歪めて伝えることを目的に運用されている」のではなく、情報が歪めて伝えられた場合があれば単にそれが悪い行為だという話でしょう。
「支持政党は不明だが、明らかに反政権の思想を持ち、実名を公表して政党関係者(野党)からお金をもらって情報を歪めて伝えていたアカウント」
これってモリカケ問題で居ましたよね?実名が出ているかどうかの違いなだけで。
というか、公党やその所属議員そのものが情報を歪めて伝えていますよね?
これは公党から依頼を受けて活動してる中で情報がゆがめられる例があった、ということよりも、遥かに問題でしょう。なぜなら匿名であるがゆえにその言説の信憑性は低く見積もられ、国民の認識への影響力は低くなる一方、公党から発せられることで海外メディアまでもが取り上げる場合もあるからです。
どちらがより「民主主義を歪める」のだろうか?
Dappiの投稿は画像か動画が添付されており「検証可能性」が残されています。
ネットでは「税金で工作…」という印象操作もありますが、チャイナ共産党と異なり、自民党が政府会計で運営されているわけではない。それを言うなら政党交付金を受け取っている全ての党が問題になるはずです。
Dappiアカウントがよく取り上げていたのは日本維新の会の足立康史議員
「Dappiの投稿は与党側を賞賛する内容」と言い切ることはできない。
こう書きましたが、与党側に関して自身の思想信条と異なると思われる立場に対してはこのように批判的な投稿もしていました(その内容が妥当かは措いておく)。
Buzzfeed記事では小渕議員の資金管理団体である「未来産業研究会」からワンズクエストへの支払いの事実が指摘されていたが、茂木敏充議員は小渕議員が所属する竹下派の会長代行職であり、小渕議員の意向が働いているかは未知数(必ずしも否定されるとは限らないだろう)。
対して、日本維新の会の足立康史議員に対しては概ね好意的な取り上げ方です。
from:dappi2019 維新 - Twitter Search(魚拓)
そのため、日本維新の会と近い関係にある菅義偉議員との関係があるのではないか?という噂までありました。これは公然に論じられていた話なので今更でしょう。
それは現時点では陰謀論に過ぎないのですが、少なくとも「Dappiは専ら野党を批判し、自民党を持ち上げて情報を歪めていた・それを会社ぐるみでやっていた」というストーリーに対して、一定の歯止めをかける事実でしょう。
具体的な法人名を出すなら、こうした事実関係を落として一つのストーリーを語るのは止めたらどうか?
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