訂正後も事実誤認。
- 朝日新聞板垣麻衣子がJKローリングの事実誤認を訂正
- 朝日新聞「『女性』を『生理がある人』とツイートし、炎上」
- ハリポタ作者JKローリングの「炎上」事件の背景
- 事実を不特定のまま評価だけが独り歩きしてそれに相当する事実があるかのように扱う
- 「JKローリングはトランス女性を女性と認めないラジカルフェミニストたるTERF」とレッテル貼りする朝日新聞
- 「炎上」は正しい?殺害予告、犯行予告の被害に遭ったJKローリングは加害者?
朝日新聞板垣麻衣子がJKローリングの事実誤認を訂正
こちらの記事で「J・K・ローリングが数年前、『女性』のことをあえて『生理がある人』とツイートし、炎上したこともある」としていましたが、「『生理がある人』を『女性』と明言しなかった記事を揶揄するツイートで炎上したこともある」の誤りでした。お詫びして訂正します。
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2021年12月11日
朝日新聞の板垣麻衣子署名の当該記事ですが…
- 前:『女性』を『生理がある人』とツイートし、炎上
- 後:『生理がある人』を『女性』と明言しない記事を揶揄するツイートで炎上
しかし、当初シェアのツイートは現在もそのままになっています。
生理がないのに女?ジョークが炎上 居直った私の好きなコメディアン https://t.co/XBkh940fSD
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2021年12月11日
しかも、無料部分に記述のあるものであるにもかかわらず、その部分には訂正された旨の表示は見当たりません。
ここまで意味が変わる訂正ならば、その旨は書くべきでしょう。
朝日新聞「『女性』を『生理がある人』とツイートし、炎上」
生理がないのに女?ジョークが炎上 居直った私の好きなコメディアン 有料会員記事 板垣麻衣子2021年12月11日 15時00分(訂正前魚拓)
生理の有無で「本物の女性かどうか」を問うのはTERFの特徴で、「ハリー・ポッター」シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングが数年前、「女性」のことをあえて「生理がある人」とツイートし、炎上したこともある。
「訂正」部分ですが、元々は上記の記述が以下の記述に変わりました。
生理の有無にこだわるのはTERFの特徴で、「ハリー・ポッター」シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングが数年前、「生理がある人」を「女性」と明言しなかった記事を揶揄するツイートで炎上したこともある。
さて、「数年前」というのは、いったいどのツイートだろうか?
ハリポタ作者JKローリングの「炎上」事件の背景
Dress however you please.
— J.K. Rowling (@jk_rowling) 2019年12月19日
Call yourself whatever you like.
Sleep with any consenting adult who’ll have you.
Live your best life in peace and security.
But force women out of their jobs for stating that sex is real? #IStandWithMaya #ThisIsNotADrill
「好きな服を着よう。自分を好きな名称で呼ぼう。あなたを受け容れてくれる人ならば、同意ある大人と寝ればいい。平和で安全な環境で素晴らしい人生を過ごして。でも、性別は存在していると発言したことで女性から仕事を奪うことはしないで。」
「ハリポタ作者死亡」匂わせるハッシュタグがトレンド入りの理由とは?【#RIPJKRowling】 - フロントロウ -海外セレブ&海外カルチャー情報を発信
『ハリー・ポッター』J.K.ローリング、「一件のツイート」が大きな非難を浴びた背景 - フロントロウ -海外セレブ&海外カルチャー情報を発信
イギリスの研究員マヤ・フォーステーターが、ある裁判で敗訴したことに言及したツイート。マヤは不平等問題に取り組むシンクタンクで働いていたが、「生物学的性別は2つしかない」、「性別は生まれつきでなく性の自認で決まるという考えの“セルフID”を中心に性別変更を可能にすると、女性の権利が守られなくなる」と主張し、解雇された。これを受け、マヤは失職が不当として訴えていたが、18日に敗訴した。
マヤが発言によって職を失うことになったのは、彼女の表現がトランスジェンダー(※)を排除していると判断されたから。マヤは、トランスジェンダーの人々が差別を受けるべきではないという考えを示す一方で、自認による性別変更を可能にすると、これまで女性専用とされてきたホステル、刑務所、病院、更衣室などの場所が危険にさらされるかもしれないと主張。しかし、これがトランスジェンダーの排除を肯定しているとみなされ、判決では他者の尊厳と安全とを侵害する考えと判断され、解雇が決まった。
【性別の扱い】に関して「JKローリングの炎上ツイート」と言えるものの発端は、上掲の2019年のツイートであり、その経緯については既にいろんな媒体が伝えている。
しかし、このツイートもそうだが、その前後のツイートを見ても、『「生理がある人」を「女性」と明言しなかった記事を揶揄する』ものではありません。
そのように理解できるものは、以下のもの。
‘People who menstruate.’ I’m sure there used to be a word for those people. Someone help me out. Wumben? Wimpund? Woomud?
— J.K. Rowling (@jk_rowling) 2020年6月6日
Opinion: Creating a more equal post-COVID-19 world for people who menstruate https://t.co/cVpZxG7gaA
"people who menstruate"=月経をする人、という表現をgirls,womenと別個並列に使用しているこの記事に対する揶揄・皮肉のツイートは、確かに存在しています。
しかし、これは2020年5月28日の記事に対する同年6月6日のツイートであり「数年前」ではなく僅か1年6ヵ月前。
※なお、当該記事は別に修正されたわけでもない。当該記事は、COVID19の流行による「月経」に関する衛生環境の不安を論じている内容であるから、タイトルに「月経をする人」という語をあてること自体は不自然ではないと思われる。文中の扱いの問題。
朝日新聞記事は、いったいどのツイート(記事)のことを言っているのだろうか?
事実を不特定のまま評価だけが独り歩きしてそれに相当する事実があるかのように扱う
このように、言及する対象となる「事実」を不特定のまま、何となく個人がとある「評価」をなされている発言をしたのだ、という印象だけで話が進むというのは、非常におそろしいことです。
最近では「呉座勇一氏に関するオープンレター」等において、エビデンスを重視するはずの研究者らが、呉座氏の問題発言とされる文言を特定せず、何となくそのように評価されている発言があったものとして扱ったことで大きな非難を浴びていますが、それと同根の話でしょう。
「JKローリングはトランス女性を女性と認めないラジカルフェミニストたるTERF」とレッテル貼りする朝日新聞
生理がないのに女?ジョークが炎上 居直った私の好きなコメディアン 有料会員記事 板垣麻衣子2021年12月11日 15時00分(訂正前魚拓)
いつものように不敵な笑みを浮かべながらステージに立つシャペル。自分は「TERF」(trans-exclusionary radical feminist)の一員だと宣言する。
TERFは、「トランス女性を女性と認めないラジカルフェミニスト」という立場をとる人のことで、実体としては「トランス嫌悪的」な態度表明とされる。
シャペルは、トランス女性の有名人ケイトリン・ジェンナーについて「女になって1年目に『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』を受賞した。生理も経験したことないのに!」と言い放つ。
生理の有無にこだわるのはTERFの特徴で、「ハリー・ポッター」シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングが数年前、「生理がある人」を「女性」と明言しなかった記事を揶揄するツイートで炎上したこともある。
「JKローリングはトランス女性を女性と認めないラジカルフェミニストたるTERF」とレッテル貼りする朝日新聞。
この問題に疎い方にご説明しますと、TERF(ターフ)とはトランスを排除するラディカルフェミニスト(Trans-Exclusionary Radical Feminist)という意味で、「トランス女性は女性です(だから男体のままでも女子トイレや女湯を使用してOK)」という主張に抵抗する女性達に貼られる差別的レッテルです。 https://t.co/E2t1ESrHxF
— 森奈津子🌸🌹 (@MORI_Natsuko) 2020年10月11日
TERFという言葉の出自としては、「トランス女性は女性です(だから男体のままでも女子トイレや女湯を使用してOK)」というような主張があり、その主張に反対する主張をしている(主に)女性達を揶揄する言葉です。
「パヨク」「ネトウヨ」みたいなものです。
それを「くおりてぃぺぇぱぁ」が立派な用語であるかのように使う事には違和感があります。コメディアンであるChapelleが皮肉を込めて言っている発言を(シャペルは男性なのでそこも「笑い」の要素だろう)、まるで「自称しているのだから使ってもいいだろう」と捉えているのは、あまりに異常。
「日本は海外みたいにはならないから。大丈夫だから」と何回フェミニストに言われただろう。
— ぽんたcafe (@ekodayuki) 2021年12月12日
NHKの週末女装の方の女子トイレ報道も、朝日新聞のj.kローリングとシャペルにかこつけた「TERF」批判も(まさかこんな文字を新聞社が書くとは)、一線を越えたよね。
まだそう思っているのか聞いてみたい。
それにしてもシャペルの元の発言が不明なんですが、ここでも「言及する対象となる「事実」を不特定」という状況があります。
次に「生理の有無にこだわるのがTERFの特徴」というのは確定事項なんでしょうか?
少なくともJKローリングの当該ツイートは、引用記事内での生物学的女性に関する呼称について論じており、「生理の無い生物学的男性が女性を名乗ることへの不満を示している」と理解できるものではない。
この点でも、朝日新聞の板垣麻衣子の参照方法は不適切。
そして、現実には"TERF"という言葉は濫用されており機能していません。
- TERFという言葉の定義について議論しようとしたらTERFと呼ばれた
- 道の端っこで強姦被害者センターのための募金活動をしていたら、 私はTERFと言われ、突き飛ばされた
こうした事例を告発する人が多く存在しています。それをまとめているのが以下。
「炎上」は正しい?殺害予告、犯行予告の被害に遭ったJKローリングは加害者?
さらに言えば、「炎上」という表現だけして、その後の展開が無視されているのも気になります。
確かに炎上はした。
だが、ツイートに関してJKローリングは殺害・レイプ等の犯行予告を受けています。
それが、なぜか彼女が一方的に加害的な言動をしたのだという取り上げられ方をしているのは、トランス女性に関する言論空間の全体像を伝えるには十分ではないでしょう。
追記:その後、全文無料にして末尾に以下お詫び・訂正文が存在することが確認されました⇒全文公開後の魚拓
〈訂正しておわびします〉
「『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングが数年前、『女性』をわざわざ『生理がある人』とツイートして炎上したこともある」とあった部分は、「『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングが昨年、『生理がある人』を『女性』と明言しなかった記事を揶揄するツイートで炎上したこともある」に訂正しました。
また、ツイートは2020年6月でしたので、「数年前」は「昨年」と改めました。
以上:はてなブックマーク・ブログ・note等でご紹介頂けると嬉しいです。