事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

足立康史議員質疑:日本学術会議は推薦理由の資料を提出していない

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10月7日の衆院内閣委における足立康史議員の質疑で日本学術会議の推薦理由の書類が提出されていないことが分かりました。

足立康史議員質疑:日本学術会議は推薦理由の資料を提出していない

足立 焦点になっているもう一つの論点。総合的俯瞰的ということでありますが、これは単なる人事では無くて、まさに独立性の高い公の組織の任命行為なんです。そうれであれば、推薦側であれ任命側であれ、理由を国民に開示していく。民主的統制というのはまさに国民に説明できるからこそ民主的統制なんだから。この国会の場でもいいですよ。理由はやっぱり日本維新の会ははっきりしていったほうがいいんじゃないかなと、こう思っているわけですが、内閣は理由は言わないと言っている。内閣府側或いは学術会議側は推薦理由は公にしてるんですか

福井局長 日本学術会議の会員の任命につきましては、8月31日、日本学術会議から会員候補推薦書が内閣総理大臣へ提出され、10月1日付で任命が行われたものでございます。日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣の推薦手続を定める内閣府令に基づきまして、任命を要する期日の30日前までに当該候補者の氏名及を記載した書類を提出する、これによって行うものとされております。この推薦書類につきまして内閣総理大臣推薦手続の中において推薦理由の書類は添付されておりません

足立 そもそも推薦側が理由を開示していないんだよね、これはおかしいよね。

日本学術会議は推薦理由の資料を提出していないことが判明しました。

日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令

日本学術会議法

第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

この「内閣府令」が以下のものです。

平成十七年内閣府令第九十三号
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令

日本学術会議法(昭和二十三年法律第百二十一号)第十七条の規定に基づき、日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦手続を定める内閣府令を次のように定める。
日本学術会議会員候補者の内閣総理大臣への推薦は、任命を要する期日の三十日前までに、当該候補者の氏名及び当該候補者が補欠の会員候補者である場合にはその任期を記載した書類を提出することにより行うものとする。

この法律、本文に書いてあるのはこれだけです。

「氏名と任期を記載した書類」を提出することにより行うとしか書かれてません。

なんというか、ある意味では当然というか自明の理というか。。。

内閣府令に手続として推薦理由を書いた書類の提出が書かれていないのがそもそも問題であるということは言えると思いますが、では、推薦理由を問われた際にどう説明するのでしょうか?

それは想定しておくべき話なのでしょうか?

日本学士院と日本学術会議の会員の選考手続について

日本学士院会員選定規則

(候補者の推薦)
第三条 省略

6 推薦者は、次の事項を記載した推薦書を、日本学士院長に提出しなければならない。
一 被推薦者の氏名、本籍(都道府県名のみ記す。)及び住所
二 所属すべき分科
三 履歴(概要でよい。)
四 主要な学術上の業績(その大要を記載する。)
五 主要な著書及び論文の目録(簡単な解説を附する。)
7 推薦書は、別記の書式により、推薦者(学術団体の場合にはその代表者とし、その代表者の団体における地位、役名等を記す。)の署名を必要とする。

中略

(被推薦者)
第四条 推薦される候補者は、学術上功績顕著な科学者でなければならない。その資格の判定は選考委員会の審査による。

中略

第十五条 選考委員会は選考に際し、次の基準に従うよう注意しなければならない。
一 候補者の選考には、専ら学術上の功績に重点をおき、学術行政上の功績の有無にかかわらないこと。
二 学識経験及び人格を充分に考慮すること。
三 候補者は、これを学界の各方面に物色し、一方に偏しないよう留意すること。
四 候補者の選考は慎重を期し、必ずしも直ちに補充するを必要としないこと。

日本学術会議ではなく、日本学士院の方は(同じく国家公務員だが文科省の特別の機関)、推薦・選考手続について一定の基準が明示されています。「人格」も考慮するとあるので、研究業績などの成果物に限られず、各所での発言内容も考慮対象となると言えます。ただ、書類に推薦理由を記載する旨は書かれていません。

日本学術会議の方は、この点が法17条の「規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者」しかありません。

「規則」には以下書かれています。

日本学術会議会則

(会員及び連携会員の選考の手続)
第八条 会員及び連携会員(前条第一項に基づき任命された連携会員を除く。以下この項、次項及び第四項において同じ。)は、幹事会が定めるところにより、会員及び連携会員の候補者を、別に総会が定める委員会に推薦することができる。
2 前項の委員会は、前項の推薦その他の情報に基づき、会員及び連携会員の候補者の名簿を作成し、幹事会に提出する。
3 幹事会は、前項の会員の候補者の名簿に基づき、総会の承認を得て、会員の候補者を内閣総理大臣に推薦することを会長に求めるものとする。
4 幹事会は、第二項の連携会員の候補者の名簿に基づき、連携会員の候補者を決定し、その任命を会長に求めるものとする。
5 幹事会は、前条第一項に基づき任命される連携会員の候補者を決定し、その任命を会長に求めるものとする。
6 その他選考の手続に関し必要な事項は、幹事会が定める。

この中での「推薦」において推薦理由が書かれた書類の提出はあるのでしょうか?

「幹事会が定めるところ」 については日本学術会議のHP上では見つけることができません。選考委員会において決定するようですが、選考委員会の運営要綱はあるものの、具体的な中身については書かれていません。

日本学術会議は推薦理由の情報開示をするべきでは

学術会議に情報開示求める 京都大学長「一種の政府機関」 | 共同通信

京大学長の湊長博氏は学術会議側に「推薦した理由」を求めています。

税金を使って運営する組織の国家公務員を任命するにあたってはその理由を説明すべきと言える余地がある一方、「税金が使われることのない、任命を拒否された者」についてはその要請が働く余地は少ないと言えます。

もっとも、公務員だからと言って人事の理由を公にするべきか否かは一つの考え方でしょう。現時点での菅内閣はこの態度です。

しかし、少なくとも「任命拒否の理由を言え」と言うのであれば「推薦した理由を言え」と国民の側が言うことには妥当性があるでしょう。

この話は「任命拒否の理由を言え」と言ってきたから始まったのだから。

以上