事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

弁護士258人が皇位継承問題アンケート回答「いま結論を出すべき」が56.6%:弁護士ドットコム調査

合意事項は何か?

弁護士258人が皇位継承問題アンケート回答:弁護士ドットコム調査

弁護士258人が皇位継承問題アンケートに回答したと弁護士ドットコムが報じました。

約4万4700人の弁護士登録数に対して回答率は0.5%。

弁護士ドットコムが信用されていないのかもしれません。そのなかでも回答してくる者はどういう者かの予測には様々ありそうですが、そこには触れません。

天皇の存在の根拠は国民の支持であり、それは現在の国民だけでなく過去と未来の国民も含めたものであって、有権者意識調査みたいなもので推し量れるものではない、という前提をまず示すとして、一定の参考にはなるでしょう。

「いま結論を出すべき」が56.6%、76%は文句が無いことに

議論のタイミングについて問うた項目では「いま結論を出すべき」が56.6%であり、「もはや手遅れ」が20.2%でした。

そのため、76%はいま「結論」を出すことについて文句が無いことに。

これは合意がとれている事項と扱ってよいでしょう。

ここでの「結論」とは、「皇室のあり方をめぐる議論」と質問項目にはありますが、弁護士ドットコムがどう考えているのかはよくわかりません。

一般には、退位特例法附帯決議を受けた令和の有識者会議の報告書にある…

  1. 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
  2. 皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること
  3. 皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること 

これらの論点を議論対象にしていると考えることでしょう。

それを「どこまで論じるか?」については、細かい論点もすべて、ということではなく、一定の結論を出すことまでであると言えます。

弁護士ドットコムの用語法は不明:定義の無い「女性宮家」

このアンケートでの弁護士ドットコムの「女性宮家」の用語法は、おそらくぼかされています。以下の2つの設問がそれぞれ独立して存在しているので。

  • 女性宮家の設立、「賛成」「どちらかといえば賛成」が過半数
  • 「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」案、賛成が26.4%

「女性宮家」は俗称であり定義はありません。

政府も定義が無いのでその語は使わないとしています。

ただ、「女性皇族が当主となる宮家」が公約数的理解であり、婚姻しないで女性皇族が桂宮の宮号を継承した例として淑子(すみこ)内親王の例があります。*1*2

そのため、この淑子内親王の例を女性宮家の先例と捉える論者も最近では増えてきたように感じます。

では、弁護士ドットコムは、この淑子内親王の先例を念頭に婚姻の無いパターンを考えているのか?というと、よくわかりません。なぜなら、「女性宮家」に関する設問に対する回答では「配偶者問題で皇室の権威が損なわれる」といったように婚姻を予定しているものが本記事で取り上げられています。

ちなみに、過去の有識者会議でも「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」案を女性宮家案であるとして考えている識者らが居ました。

他方で、「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する」案の回答では「女性天皇を認めるのであれば認めざるを得ないから」というものがあり、皇位継承資格があると考えている者の回答を弁護士ドットコムが掲載しています。

結局、両設問の状況にはどういう違いがあるのか?は、「女性宮家」という言葉がそもそも定義が無いので不明であり、出題者も回答者も認識を一致させていないと思われます。

まとめ:言葉の「殻」に振り回されないで実体を見た評価を

前項を書いたのは、「女性宮家」という用語を中心として、その意味内容の受け取り方が各者で異なるために、政権や政党、個人に対する評価がズレていると思われるケースが皇位継承に関する報道への反応で散見されたからです。

それは伝えられるべきことが伝わらない状況の温床となってしまっていると言えます。

言葉の意味をブレさせて破壊して人々の認識を扇動するというのは古今東西で行われてきたことですから、政府が「女性宮家」という用語を使わないとしていることは賢明だと感じます。

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*1:元々婚姻を予定していたが婚約者の閑院宮愛仁親王が薨去してしまい、桂宮号を継承していた異母弟の節仁親王も夭折してしまい他に子女が居なかったために桂宮を継いだという経緯があり、宮号を継承した後も独身でした。

*2:現行皇室典範には「独立の生計を営む内親王」の項があるが、これは皇族男子の桂宮宜仁親王殿下のように、皇族女子が結婚しないで独立されるケースと思われ、するとその子孫が得られないため1代限りで終わってしまうので、単なるそれとは異なる制度であるものとして議論がされている