CISTECが韓国向け輸出管理の運用見直しを受けて、関連制度の誤解を正すパワーポイント資料を公開していました。英語版もあります。
メディアに対する怒りがこもっている内容だと思います。
CISTECが怒りのパワポ解説
解説資料は全部で3つあります。
①パワーポイントで概要、②文章で詳細説明、③改正の概要、という内容です。
これらの資料を見ると、日本メディアが騒ぎ韓国側が発狂して誤解している内容を掴んで、それに対してクリティカルに反論していることが分かります。
私もメディアの記事を引用してこの問題を取り上げてきましたが、振り返ってみるとかなりの間違いが引用記事の中にありましたし、私自身の記述にも相当危うい表現がありました(自分で気づいた点は修正)。
リスト規制品3品目(フッ化水素・フッ化ポリイミド・レジスト)に関するものだけでも以下のような誤解があったようです。
- スペック問わず3品目に該当すれば個別許可?⇒限定されたものだけ
- 出荷ごと?⇒契約ごと
- 審査に90日かかる?⇒それは標準処理期間に過ぎず、大抵早く許可が下りる
- 第三国の現地工場に供給できる?⇒基本は韓国内に限り、第三国への供給が前提でなら別個の許可が必要
「安全保障輸出管理関係者にとっては一般常識。かかる誤解はあり得ない」
という文言に込められた強いメッセージを感じます。
ホワイト国、リスト規制、キャッチオール規制の誤解
ホワイト国を除外されると全件が個別許可になるという誤解、キャッチオール規制は多くが個別許可になるという誤解があるが、それらは間違いということです。
ホワイト国は「一般包括許可」が可能だったが、そこから外れてグループBになるとそれが使えなくなるものの、「特別一般包括許可」は使えるということです。
これはここで「解説」なんてできないので、CISTECの解説資料を読んで欲しいと思います。
NHKが間違った報道をしています。
— 細川昌彦 (@mHosokawa) August 7, 2019
個別許可の対象が広がるわけではありません。特別一般包括制度があって、企業の多くはこれを活用して、これまで通りの輸出ができます。
このことは私の寄稿で詳しく説明している通りです。
どうして正しく報道されないのでしょうか。https://t.co/lmmCsOU0Iw
特にキャッチオール制度の根本的誤解について
「キャッチオール」という言葉の響きから、全ての品目が個別審査になる印象を持つ人が居たのでしょう。
あくまで個別の輸出案件について、個別具体的な懸念情報がある場合に許可が必要、ということが強調されています。
これは経産省の以下資料でも読み取れますが、メディア等での説明が不足していたと思います。私も反省です。
解説の例を一つ示します。
韓国向け輸出管理の運用の見直しに関連する日本の制度運用についての基礎的解説
(5)キャッチオール規制は、リスト規制対象でなくても、個別取引ごとに懸念が実際にあることが判れば許可対象になるものであり、懸念がないものまで一律に許可申請対象となるわけでは全くない。
○キャッチオール規制は、リスト規制と並ぶ安全保障輸出管理制度の基本。
○リスト規制以外の品目の個別の輸出の際に、①それが大量破壊兵器や通常兵器の開発等に使われる恐れがあることを輸出者が実際に知った場合、及び、②経産省当局から許可申請すべき旨のインフォームがあった場合に、許可対象となるもの。○そのような懸念がある場合は限定的であり、食料品や木材等を除く全品目の輸出が一律に許可申請対象となるわけでは全くない。実際に個別許可を取得しなければならない案件はほとんどないと思われる。
まとめ
ホワイト国からの韓国除外で
— 細川昌彦 (@mHosokawa) August 7, 2019
「包括許可」品目 変わらず
読売新聞は正しい報道をしています。 pic.twitter.com/fuS0mmpwK9
この一か月、テレビで細川さんらが解説を頑張っていましたが、相変わらず不正確な報道があるようです。
私も報道を読んでいて思うのが、日韓のメディア双方が日韓の対立をエンタメのように扱って消費している構造があり、煽るような報道が常態化しているということです。
日本メディアの不正確な報道をそのまま韓国メディアが報道し、韓国の政府側の人間はその風潮をベースに理解するという流れがあったと思います。
そして、日本に対して偏見を持っている英語メディアの中の人が、誤解をそのまま世界に発信しているという構図がありました。
それに対して日本政府側、政治家も官僚も、メディアのつくりだす空気に乗っからず、公式HPやSNS等で発信し続けたのは救いだと思います。
以上