事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

あいちトリエンナーレへの寄付金は政治活動が除外されているのか?

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愛知県の寄付金やあいちトリエンナーレの一部事業について、政治活動規制があることが分かりました。

愛知県文化振興基金

あいちトリエンナーレ及び文化芸術振興事業への寄附金を募集しています(文化振興基金) - 愛知県

文化活動事業費補助金(文化芸術すそ野づくり事業)

 県内に活動の本拠を置く文化活動団体の行う自発的な文化活動のうち、特に地域貢献の高い事業に対して助成を行います。

あいちトリエンナーレ開催経費

 3年ごとに開催する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の開催経費の財源となります。

愛知県文化振興基金は上記2つの用途が明示されています。

ただ、文化振興基金条例を見ても、政治目的などの場合に対象外にするような規定は見当たりません。

上記のうち、文化活動事業費補助金の対象制限を見てみます。

愛知文化活動事業費補助金は政治目的が禁止

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愛知県文化活動事業費補助金 募集案内を見ると「政治的又は宗教的意図を有する事業」については補助対象事業から除外されています。

過去の補助対象事業を見ると、トリエンナーレに参加する団体の一つに対して交付されている事例が見つかりますが、トリエンナーレ全体に対して交付されるようなものではありません

また、この制度は団体が申請して審査を経ないといけないのですが、今回の表現の不自由展は、この制度に申請していないと思われます。

あいちトリエンナーレのパートナーシップ事業

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あいちトリエンナーレの連携事業のうち、パートナーシップ事業のページを見てみると、「宗教活動や政治活動を目的とする事業でないこと。」という制限があります。

パートナーシップ事業はトリエンナーレ本体とは別個の展示やパフォーマンス等なので、表現の不自由展はこの除外ルールとは直接的には関係ありません。

しかし、パートナーシップ事業一覧を見ると、津田大介の講演会があります。

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8月28日に予定されている講演会で表現の不自由展の内容について触れたとすれば、上記のパートナーシップ事業対象要件に抵触すると言えるでしょう。

トリエンナーレ本体に政治活動目的を排するルールは無かったのか?

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トリエンナーレ本体について何らかの運営規則のようなものが無いか探したのですが、いくら探してもみつかりません。

トリエンナーレ2016の事業報告書には、あいちトリエンナーレ実行委員会規約がありましたが、そこにはトリエンナーレ実行委員会の設置根拠や対象事業・作品を絞り込む規定は書いてありませんでした。

8月2日に私が実際にトリエンナーレ事務局や愛知県美術館に電話して聞いた話では、展示作品を選ぶ基準は公安衛生法規に抵触していないものであればOKで、選考は芸術監督の津田大介の一任している、と言っていました。それ以外に審査基準は無いのかをたずねても上記回答でした。

表現の不自由展への寄付金420万円はどこから?

表現の不自由展の費用420万円分については民間からの寄附の申出によってまかなうことに決定されたそうですが、これはおそらく上記の寄付金とは別枠の任意のものでしょう。

申請を経て審査を受けたりする類のものではありません。

この辺りは混同しそうなので、注意が必要でしょう。

まとめ:なぜ本体は政治活動が除外されていないのか?

しかし、あらためてまとめてみると、トリエンナーレのパートナーシップ事業には政治活動規制があるにもかかわらず、本体のプログラムにはそのような規制が無いというのは不思議な感じがします。

また、同一の枠組みの寄付金から、一方では政治活動規制があるにもかかわらず、他方では政治活動規制が無いというのも、なんだかしっくりきません。こういう形のルール構造は、果たして適切なのでしょうか。

それから、「表現内容で作品を展示するしないを決めるのは表現の自由の侵害だ」と言ってる人たちは、政治的表現等で絞り込みをかけている寄付金交付や団体参加の条件についてはどう思っているのでしょうか?

既に表現内容で寄付金交付や団体参加に絞りをかけている官製イベントであるにもかかわらず、なぜ表現の不自由展だけ表現内容での取扱いが表現の自由の侵害になるのか、首を傾げてもげそうになります。

以上