【Google翻訳で同じフレーズが真逆の意味で翻訳されました】
な、なにをいってるかわからねーと思うがry
まぁ見ていってください。
Google自動翻訳の2つの仕様
きっかけはバーナンキさんの講演の聴き取りをしていた方のツイート。
エキサイト翻訳とgoogle翻訳で意味合いが逆さまになる不思議。
— akima@財政お花畑 (@akima9936) March 18, 2019
dragの訳しかたのせいだろうけども。
日本語版を見たら「逆風」だった。 https://t.co/ehGUcawAyS
私も"drag on growth"という訳語が気になったので調べてみました。
その結果、「成長の足かせ」という意味が出てきたのですが…
違う設定で翻訳すると以下のようになりました。
なぜなのか。
最初のパターンは「言語検出」モードであり、2つ目のパターンは手動で英語と設定したという違いがあるので、それが原因だということは分かっています。
翻訳の設定次第で真逆の訳語になる場合もあるということ。
これがまずは認識しないといけないなということです。
では、「成長を牽引する」などという訳語になり得るのでしょうか?
結論から言うと、"drag"の原義的にも、文脈的にもそうは解されません。
英英辞典がある意味
"drag"の動詞の意味をGoogleで調べると"pull (someone or something) along forcefully, roughly, or with difficulty."というのが出てきます。
また、Cambridge Dictionary では、"to move something by pulling it along a surface, usually the ground" "to make someone go somewhere they do not want to go:"とあります。
Merriam-Websterでは、"to bring by or as if by force or compulsion"などと説明されています。
これらを俯瞰すると、どうやら"drag"には「強制的に」とか「嫌がっている相手を」みたいなニュアンスが含まれているというのが分かります。「引きずる」という用法が典型例としてあるのもそういうことでしょう。
この感じでは「引っ張り上げる」とか「上方に導く」といったような用法がなされているとは到底思えません。
このように、ある程度英語が読めるようでないと「その言葉の原義から意味を推し量る」という作業ができなくなってしまうということが言えると思います。
文脈からの解釈と実際の日本語訳
実はこの演説には英文と日本語訳の文書があります。
少し長いですが文脈が重要なため多く引用します。
Indeed, as is often pointed out, on a per capita basis Japan’s growth has not been that much worse than that of the United States in recent years. The Japanese labor market appears tight, with unemployment near recent lows, and the employment-population ratio for prime-age workers, recently at 73.3 percent, is higher than that of the United States (68.7 percent). This performance has beenachieved despite some extraordinary headwinds, including the global financial crisis of 2008, the earthquake and tsunami of 2011 (which was followed by a shutdown of nuclear power generation), and the ripple effects of Chinese efforts to make the transition to a more inward-looking, services-oriented growth model. Consumption tax increases in 2014 were an additional drag on growth.
実際、よく指摘されることであるが、近年における日本の 1 人当たり GDP 成長率は米国と比べてそれほど低いわけではない。日本では、失業率が近年における既往最低水準にあるなど、労働市場の需給が逼迫しており、働き盛り世代(prime-age workers)の雇用者数=総人口比率(employment-population ratio)は 73.3%と米国(68.7%)よりも高い5。この成果は、2008 年の世界金融危機、2011 年の東日本大震災と津波(そしてその後の原子力発電所の停止)、そして中国が国内需要中心でサービス指向の成長モデルへの転換を模索するようになったことの波及効果などの桁違いの逆風の中で達成されたものである。もちろん、2014 年の消費税増税も成長に対するさらなる逆風であった。
日本経済がリーマンショックや東日本大震災、中国市場の成長などの影響が日本にとってマイナスであるという文脈の中で、消費増税も"additional drag on growth"の状態だったというわけですから、マイナスの意味合いになります。
直前の「逆風」は英語版では言葉の通り"headwings"となっているあたり、一連の文章としてすんなり読めるようにという配慮だと思います。
ということで「成長を牽引する」はありえませんね。
最近、スマホアプリで翻訳とかできちゃいますが、もしかしたらこの例のように真逆の訳語をあてちゃって失敗したっていうことが世の中で起きてないだろうか?と思ってしまいます。
日本語補正力か英語文脈読解力か
スタバで目の前の女子高生が英語の宿題やってるんだけど、文章をグーグル翻訳に訳させて日本語的に変な部分を直すという作業を淡々とやっている。「猫が綺麗な目を持っている、て変やな。ここ調整するわ。」とか言ってる。すげぇ。求められるのは英語力ではなく日本語補正力。すげぇ。
— 林 舞輝 (@Hayashi_BFC) March 9, 2019
そこで思い出したのがこのツイート。
たしかにスマホアプリで翻訳は容易に可能ですから、 こういう使い方をする人が出てくるのは当然でしょう。日本語補正力が重要になっているという指摘もその通りだと思います。
さきほどまでに行った理解も、なんだかんだで日本語補正力を使ってるよなと。
ただ、たとえば長文の場合はうまく訳せない場合もあります。
その場合、文章をバらして翻訳にぶち込んだりするんですが、問題は「どの単語・フレーズをひとくくりにして翻訳にぶち込むべきか」というのが分からないといけない、或いは見当がつけられるようでなければいけない、ということです。
その場合は、その言語における「お約束」がわかってないと厳しいでしょう。
単語、単語の翻訳や、フレーズ、フレーズの翻訳の継ぎはぎだけで構成された和訳文の全体を読んでみると、わかったようなわからないような文章になってたということはありませんか?私はあります。
日本語として自然なように補正するにしても、その訳はその文章の文脈が規定する面があるのであって、決して日本語補正力が先に来るという関係ではないと思うのです。
林舞輝氏が間違ってるとかそういうことを言いたいのではないです。念のため。
まとめ:結局は語学力が大事ですよねって話
「自動翻訳の時代が来るから外国語は勉強しなくても大丈夫!」という度胸のある方には何も申し上げるつもりはありません。
私は自分で翻訳できた方がいろいろと楽しいですし、何より時間の節約になりますし、発見もあります。
自動翻訳は便利ですが、正確さを重視して慎重になろうと心に誓った一幕でした。
以上